こんにちは。金子吉友です。
「我々は、許可を求めたのではない。我々はこうするのだ、と伝えた」──他国の首相が、世界最強国の大統領に向かって、そう言い放った。しかもそれを、本人が誇らしげにポッドキャストで語っている。これが、いま進行しているイラン戦争の“始まり”の姿です。
アメリカ政府は、次の作戦に言及しました。標的は、まだ無傷で残る最後の山「ピックアックス・マウンテン」です。ところが、その攻撃の根拠となっている情報は、イスラエルの情報機関モサドの「評価」だけ。トランプ大統領自身が「公式記録としては確認できていない」と認めているのです。それでも彼は「近いうちに激しく叩く」と予告しました。
今日は、ネタニヤフ首相が自ら明かした「7枚のスライド」の話から始めて、次の標的の正体、モサド新長官の異様な経歴、そして2026年7月23日というたった一日に同時進行した5つの出来事までを追いかけます。そこから浮かび上がるのは、たった一つの問いです。アメリカは、いったい誰に仕えているのか。
ネタニヤフが自ら明かした「7枚のスライド」──アメリカはこうして動かされた

まず、この戦争がどう始まったのか。当事者本人の口から、驚くべき告白が飛び出しました。
ネタニヤフ首相が、イスラエルのポッドキャスト番組に出演し、こんな裏話を語ったのです。トランプ大統領が当選した直後、自分はトランプに会いに行った。その時、7枚の大きなスライドを持っていったといいます。
そして、こう伝えたというのです。「我々はこうする」と。ネタニヤフは、ここではっきりとこう述べています。
「我々が、許可を求めたのではない。我々はこうするのだ、と(トランプに)伝えた」
そして最後のスライドで、こう提案したと語っています。「これが私の提案だ。君たちアメリカはB2を持っている。あの巨大な爆撃機だ。(イランには)フォルドゥという核施設がある。必要なら我々も自分たちで攻撃する。だが、君たちが来て重い爆弾を落とす方が、ずっと効果的だ」
トランプは、その話を聞いた。そして最終的に、アメリカはこのイスラエルの提案に乗った。 ネタニヤフは最後を、こう締めくくっています。「私はとても嬉しかった。アメリカが乗ってくれて、本当に嬉しかった」
この映像は、いまXで拡散されています。つまり、アメリカはイスラエルの口車に乗ってイランを攻めた、ということを、ネタニヤフ自身が語っているのです。「陰謀論」でも「憶測」でもありません。当事者の自慢話として、公に語られた事実です。
※参照:ネタニヤフ首相のイスラエル・ポッドキャスト番組出演インタビュー(Xで拡散)/金子吉友『あつまれニュースの森』2026年7月24日配信「イラン戦争最新!! 次の作戦も、イスラエルの策謀」
次の標的「ピックアックス・マウンテン」とは何か──地下137mの”最後の山”

さて、ネタニヤフが語ったフォルドゥは、あくまで当初の話です。いま、次の標的として名前が挙がっているのは、まったく別の場所です。ここで、イランの核施設を整理しておきましょう。
- ① フォルドゥ:コム近郊にある、山の地下に掘られた濃縮施設。2025年、アメリカが大型バンカーバスターで攻撃し、大きな被害を出しました。
- ② ナタンズ:イスファハン州にある、イラン最大の濃縮拠点。地上施設と地下施設があり、2025年の攻撃で地上部分が大きく破壊され、地下も深刻な被害を受けたとされています。
- ③ ピックアックス・マウンテン:正式には「コー・エ・コランガズラー」と呼ばれる山。ナタンズにほど近い場所にあります。これが、アメリカの次の作戦で名前が出ている標的です。
なぜ「通常兵器では破壊できない」のか

このピックアックス・マウンテンが、なぜ特別なのか。理由はその深さにあります。
この山は、2020年頃から掘られている超深層の地下施設です。岩盤の下、およそ90メートルから137メートルにかけて内部が作られているとされます。つまり、バンカーバスターでは届かない深さにあるのです。
フォルドゥよりも深く、しかも硬い花崗岩が天然の盾になっています。入り口にはコンクリートの構造物を足し、その上にさらに岩や土を積み上げる補強が続けられてきました。専門家は、通常の兵器では破壊が極めて困難だと指摘しています。
フォルドゥを叩き、ナタンズを叩き、次にこの“最後の山”を叩く──アメリカはいま、そう言っているわけです。しかし、そもそも通常兵器では壊せない標的を、どうやって叩くのか。ここに、この作戦の危うさが凝縮されています。
根拠はモサドの「評価」だけ──トランプ自身が「確認できていない」と認めている

では、なぜいまピックアックス・マウンテンが標的として浮上したのか。その根拠となった報道を見ていきましょう。
2026年7月21日、ウォールストリート・ジャーナルが報じました。見出しは、「イスラエルは、イランが核遠心分離機をピックアックス・マウンテンに移送したと考えている」というものです。
記事によれば、イスラエルの情報機関(=モサド)が、イランが数千機のウラン濃縮用遠心分離機を、この山の地下トンネルに移送したと「評価」し、その情報をアメリカと共有したといいます。移送の時期は2025年の秋とされています。
記事自身が付けている、重大な「留保」
ここが決定的に重要なのですが、この記事自身が、慎重な前置きをしています。
- これはあくまで「移送された」という段階であり、そこでウランが濃縮されていることは、まだ確認されていない
- 遠心分離機は保管や保護のために置かれている可能性も、将来の設置である可能性もある
- イラン自身は、この施設を「遠心分離機の組み立て施設」だと説明してきている
- そして、IAEA(国際原子力機関)の査察は、まだ一度も入っていない
つまり、この場所は完全なブラックボックスであり、何が事実なのか、誰にも分かっていないのです。遠心分離機があっても、濃縮されていない可能性は十分にあります。
トランプの、あまりにも矛盾した二つの発言
そして、ここからが本題です。報道が出た7月21日、トランプ大統領はこう述べました。
「かなり近いうちに、あの地域を非常に激しく叩くことになるだろう」
ところが、まったく同じ日に、遠心分離機の移送について問われた大統領は、こう答えているのです。
「イランは(遠心分離機を)移したかもしれない。しかし我々は、公式記録としてはそれを確認できていない。核物質がなければ、何の意味もない。我々は物質を追っているのだ。そこにこそ本質がある」
確認できていない、と自分で認めながら、近いうちに激しく叩く、と予告している。これほど矛盾した話があるでしょうか。アメリカ政府自身が、遠心分離機の移送を確認できていない。あくまでイスラエルのモサドからの情報にすぎない。核物質があるかどうかも分からない。それでも叩くというのです。
しかも、これは初めてではありません。以前この番組で取り上げた「トランプ暗殺計画」の情報も、元をたどればイスラエルのモサド発でした。つまり、当てにならないのです。トランプ大統領は、何度もイスラエルの情報に振り回されてきたにもかかわらず、また乗ってしまったということでしょう。この構図は、トランプ『暗殺計画』の情報源がモサドだった件とまったく同じ形です。
※参照:ウォールストリート・ジャーナル(2026年7月21日付・イスラエルによるピックアックス・マウンテンへの遠心分離機移送評価の報道)
モサド新長官ロマン・ゴフマンとは何者か──17歳の少年を見捨てた男

では、その「当てにならない情報」を出しているイスラエルの情報機関を、いま誰が率いているのか。ここを知ると、話はさらに不気味になります。
ロマン・ゴフマンという人物です。2026年6月2日にモサド長官に就任しました。
驚くべきは、その経歴です。彼は情報機関の叩き上げではありません。機甲部隊一筋の戦闘職なのです。戦車の乗員から始まり、第7機甲旅団長、ゴラン高原を担当する第210師団長を歴任。そして2024年5月に少将に昇進し、ネタニヤフ首相の軍事秘書に就任しました。首相の秘書を約2年務めた後、モサド長官の座に就いた人物です。
就任式で交わされた、露骨な言葉
その就任式で、ネタニヤフはこう述べています。「イラン政権は滅びる運命にある。君が、この任務を担うのだ」
これに対し、ゴフマンはこう応じました。「イラン枢軸に対する戦略的転換は達成したが、任務はまだ終わっていない。モサドの本質は、秘密工作にある」
つまり、対イラン工作そのものが、任務として与えられている人物なのです。「客観的に情報を分析する機関の長」ではなく、最初から結論が決まっている工作の実行者。その人物が出してきた「評価」を根拠に、アメリカは山を叩こうとしているわけです。
17歳の少年を、1年半見捨てた事件
さらに、この人物には看過できない過去があります。
2022年、彼が第210師団長だった時のことです。彼は軍事情報部の正規の承認を得ないまま、部下の情報将校に指示して、民間のSNS運営者を使った影響工作、つまり心理戦・情報操作を行わせました。
そして、その相手が当時17歳の少年だったことで、大問題になったのです。
この少年はその後、機密情報の収集や伝達の容疑で治安機関に逮捕されました。約44日間の隔離尋問を受け、1年半にわたって拘留や自宅軟禁の状態に置かれたといいます。
逮捕の直前、軍の作戦部の准将から「セキュリティ関連のSNSチャンネルとのつながりを知っているか」と問われた際、ゴフマンは「知らない」と否定したと報じられています。この否定を受けて、軍は「この件はIDF(イスラエル国防軍)とのつながりは確認できない」との見解を出しました。その結果として、少年の拘束期間は長期化したのです。
18か月後、弁護側が証拠を入手し、少年が実際には師団の指示で動いていたことが判明しました。少年の起訴は取り下げられ、ゴフマンは戒告のみ。刑事責任は問われませんでした。
少年は今も、こう訴えています。「17歳の少年を見捨てる人間が、外地の工作員を見捨てない保証が、どこにあるのか」
この任命には、諮問委員会の委員長を務めた元最高裁判事が反対意見を表明し、検事総長も反対しました。それでも、この男はモサド長官に任命されたのです。元高官からは、モサドの政治化を懸念する声も上がっています。
7月23日、同時に起きた5つの出来事──サウジ核協定・アルアクサ・8カ国声明・下院決議

さて、ここからが今日の核心です。2026年7月23日という、たった一日。この日に、驚くほど多くのことが、同時に起こりました。そして、そのすべてにイスラエルの動きが絡んでいます。一つずつ見ていきましょう。
① サウジとの原子力協定と、翌日の”後出しジャンケン”

まず前日の7月22日、アメリカのエネルギー省長官クリス・ライトと、サウジアラビアのエネルギー相アブドルアジーズ王子が、民生用の原子力協力協定(二国間保障措置協定)に署名しました。30年間の協定で、アメリカ企業がサウジの民生用原子力インフラを整備するという内容です。しかもIAEAを絡ませず、アメリカが直接管理するブラックボックス的な方式とされます。
ところが翌7月23日、トランプ大統領が自身のSNSでこう投稿したのです。「このサウジアラビアとの原子力協定は承認される。ただしそれは、サウジアラビアがアブラハム合意に参加することを絶対の条件とする」「ウラン濃縮は一切認めない」
ホワイトハウスの報道官も、「(条件を)満たさなければ協定は白紙だ」と認めました。署名の段階では、この条件は提示されていなかったのです。つまり、後出しジャンケンです。
② アブラハム合意という”踏み絵”
ここで言うアブラハム合意とは、2020年にトランプ政権が主導した、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化の枠組みです。特にジャレッド・クシュナー氏が主導したと言われています。
最大の特徴は、パレスチナ問題を前提条件から外したことです。「先にパレスチナ国家、その後に正常化」というアラブ諸国の従来の要求順序を、逆転させたわけです。
参加国は、それぞれ見返りを得ています。モロッコは西サハラの主権承認、スーダンはテロ支援国家リストからの除外。そして今回、サウジアラビアに提示された見返りが、この原子力協定だったということです。
同じ7月23日、イスラエルの首相官邸はこれを歓迎する声明を出しました。「アメリカとイスラエルによるイランへの共同軍事行動と、イランのテロ枢軸の破壊によって、平和の輪を拡大する可能性が生まれた」とし、締めくくりは「力による平和」でした。イスラエルが背後にいることは、確実です。
③ そして、露骨な「二重基準」
ここで、どうしても指摘しておかなければならないことがあります。
イランは、ウラン濃縮を理由に爆撃されています。そしてサウジには「濃縮は一切認めない」と言う。ところが──イスラエル自身は、NPT(核不拡散条約)に署名しておらず、ディモナの核施設はIAEAの査察を一度も受け入れていないのです。
以前この番組で配信したケネディの話を思い出してください。ケネディ大統領は、まさにこのディモナの査察を求めて、最後通牒に近い書簡を送り続けていました。そして彼が凶弾に倒れた後、その圧力は消えた。そして60年経った今も、イスラエルにIAEAの査察は入っていないのです。関連する構図はタッカー・カールソンがJFK暗殺への関与に言及した件でも触れました。
イランには核を持ってはならないと言い、サウジにはその道を開き、自国は査察すら受け入れない。これが二重基準でなくて、何でしょうか。
④ アルアクサで「我々が主人だ」──59年の取り決めが壊された日

同じ7月23日、エルサレムでもう一つの大事件が起きていました。
この日はティシャ・ベアブ、ユダヤ教で神殿の破壊を悼む断食の日でした。数千人のイスラエル人が、神殿の丘(イスラム側の呼称ではアルアクサ複合体)に入場したのです。
人数には大きな開きがあります。パレスチナ当局側は4200人、アルジャジーラなども4000人以上と報じる一方、イスラエル系の報道では2000人と、2倍以上の差があります。正確な人数は確定していませんが、数千人規模だったことは複数のソースで一致しています。パレスチナ側はこれを「襲撃」「侵入」と呼び、イスラエル側は「訪問した」「祈った」と表現しています。
この日、イスラエルの国家安全保障大臣イタマル・ベングビルが、閣僚や議員とともにここを訪れ、祈りを行い、その様子を自ら動画で公開しました。彼はこう述べています。
「ここを見てください。ユダヤ人が祈り、ここを家の主人のように感じている。こんなことは、以前はなかった。そして、どこでもイスラエル国家が主人だと理解されている」
これは、極めて重大な問題です。なぜなら、1967年の第三次中東戦争の直後、当時の国防相モシェ・ダヤンが定めた「ステータス・クオ(現状維持)」という取り決めがあるからです。
その内容は、宗教的な管理はヨルダンのワクフが行う。ユダヤ人は訪問できるが、祈ることはできないというもの。ダヤンは、対立に宗教的な要素を持ち込まないために、ユダヤ教の聖地を事実上イスラム側の管理下に置くという、極めて異例の決定をしたのです。
その取り決めが、いま静かに解体されつつあります。ベングビル就任以降、静かな祈りが始まり、公然とした祈りが日常化。2025年8月には彼自身が閣僚として公然と祈りを主導し、2026年1月には印刷された祈祷文の持ち込みまで警察が公式に許可しました。そして、今回の事件に至ったわけです。
その間ずっと、ネタニヤフ首相はその都度「ステータス・クオに変更はない。今後も変更しない」と公式に否定し続けている。 首相は「変えない」と言い、閣僚は現地で「我々が主人だ」と宣言する。この二重構造こそが、いまのイスラエルです。
⑤ 8カ国の共同声明──サウジは「餌」ではなく「拒絶」で答えた

そして、ここで話が一気につながります。同じ7月23日、8か国の外務大臣が共同声明を出しました。
トルコ、エジプト、インドネシア、ヨルダン、パキスタン、カタール、サウジアラビア、そしてアラブ首長国連邦(UAE)です。
声明は、閣僚が率いた大規模な侵入を「最も強い言葉で非難」し、これが国際法と国連決議、そして歴史的・法的なステータスの重大な違反であると強調しました。そして、こう明記しています。「イスラエルは、占領下のエルサレムにも、そのイスラム教・キリスト教の聖地にも、主権を持たない」「アルアクサ・モスク全体はムスリム専用の礼拝所であり、ヨルダンのワクフが排他的な管理権限を持つ」
注目すべきは、この顔ぶれです。サウジアラビアは、メッカとメディナという二つの聖モスクの守護者を自任する国です。その国に対して、イスラム第三の聖地の取り決めを崩しながら、イスラエルを承認しろと迫っている。
そしてサウジアラビアは、原子力協定という「餌」ではなく、8か国の共同声明で答えたのです。しかもこの声明には、すでにアブラハム合意に参加しているUAEまで名を連ねています。 つまり、合意の加盟国ですら「この事件は容認できない」と意思表示したわけです。
私の見立てを申し上げます。サウジアラビアは、この条件を飲まないでしょう。原子力協定は喉から手が出るほど欲しい。しかしアブラハム合意への参加だけは、断じてできない。今回のサウジを巻き取ろうとするアメリカ・イスラエルの動きは、破談になるだろうと私は見ています。
⑥ 米下院は「撤退せよ」と決議した。しかし上院が止めた

同じ7月23日、ワシントンでも動きがありました。アメリカ下院が、イランとの敵対行為からアメリカ軍を撤退させるよう大統領に指示する決議を、214対208で可決したのです。1973年の戦争権限法に基づき、議会の宣戦や武力行使承認がない以上、撤退せよという内容です。
注目すべきは、民主党に加わった4人の共和党議員です。トーマス・マッシー、ウォーレン・デイビッドソン、ブライアン・フィッツパトリック、トム・バレット。バレット議員は、「議会のみが、イランでの軍事行動を承認する権限を持つ」という、至極当たり前のことを述べています。
しかし、上院では否決されました。より拘束力の強い共同決議を委員会から引き出す動議は、47対49で否決。しかも下院を通った決議も、形式上、大統領の署名を必要とせず、法的な強制力は限定的です。過去の同様の決議も、実際には無視されてきました。
その一方で、戦争の現実はこうです。アメリカ兵の死者は18人(うち4人は直近1週間)、負傷者は430人超。12日連続の攻撃が続いています。ホルムズ海峡では船舶に影響が出て、原油価格はブレント原油で1バレル100ドル(約1万5000円)を超えました。
そして、この決議に賛成した4人の共和党議員の一人、トーマス・マッシー議員。彼の対立候補には、AIPAC系から日本円でおよそ20億円規模の資金が投じられ、結局マッシー議員は落選しました。 戦争を止める側に票を投じる、数少ない共和党議員が、まさに標的にされたのです。
なぜ議会が戦争を止められないのか。その答えが、この一件に如実に表れています。
まとめ──「アメリカは誰に仕えているのか」を浮き彫りにした戦争

ここまで見てきたことを、整理します。7月21日から23日の、わずか数日の出来事です。
もちろん、公平を期して申し上げます。ピックアックス・マウンテンに核物質があるかどうかは、誰にも確認できていません。イランの説明が正しい可能性もあります。アルアクサの入場者数も、報道によって2倍以上の開きがあり、確定していません。サウジがアブラハム合意を拒むという読みも、あくまで私の見立てです。
しかし、それでも残る、動かしがたい事実があります。
- 情報機関が「遠心分離機が移送された」と評価し、トランプは「記録では確認できない」と認めながら、「近く非常に激しく叩く」と予告した
- 標的は、まだ無傷で残る最後の山、ピックアックス・マウンテン
- その情報機関を率いるのは、対イラン工作を任務として与えられた、ネタニヤフの元軍事秘書
- アメリカは原子力協定を人質に、サウジにアブラハム合意を迫った
- イスラエル首相官邸は「イランのテロ枢軸の破壊が平和の輪を広げた」と歓迎した
- 同じ日、イスラエルの閣僚はアルアクサで「我々が主人だ」と宣言した
- 同じ日、サウジとUAEを含む8か国が「イスラエルに主権はない」と拒絶した
- 同じ日、アメリカ下院は「戦争をやめよ」と可決し、上院がそれを止めた
これらすべてに、イスラエルの動きが絡んでいます。
表層ではなく、構造を見てください。
メディアは、この戦争を「核開発を止めるための攻撃」として描くでしょう。しかし、その奥にあるのは、言葉と行動が完全に食い違う、二重構造の連鎖です。トランプは「記録では確認できない」と言いながら爆撃を予告する。モサド長官となる人物は、工作を問われて「知らない」と答えた男。協定は「濃縮は認めない」と言いながら、自国の核施設には査察を入れさせない。イスラエル首相は「ステータス・クオに変更はない」と言いながら、閣僚は「我々が主人だ」と宣言する。議会は「撤退せよ」と決議しながら、攻撃は12日間続いている。
このイラン戦争とは、詰まるところ、「アメリカが、いったい誰に仕えているのか」という構図が浮き彫りになった戦争なのです。 アメリカがイスラエルの支配下に置かれていることを、この戦争ほど雄弁に証明しているものはありません。だからこそ、戦争は短期間では終結しないし、和平の実現も、この短期間では難しいと私は見ています。
そして、これは決して他人事ではありません。 昨日お伝えしたように、NDAA(国防授権法)の219条項によって、アメリカの軍事技術とサプライチェーンはイスラエルに統合されようとしています。 下院はすでに可決し、この条項は争点にすらなっていません。アメリカはイスラエルに飲み込まれ、そして日本は、そのアメリカに飲み込まれている。この入れ子構造については、日本版CIA「国家情報局」の記事で詳しく書きました。
ここまでイスラエルという国が絡んでいることを、多くの日本人は知りません。まずは、そこから知ることではないでしょうか。真の独立とは何か。真の主権とは何か。目の前の「核開発阻止」という表向きの理由に頷くのではなく、その奥で、誰が7枚のスライドを差し出したのかを、静かに見つめ続けなければなりません。
ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。
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今回の内容をさらに詳しく解説した動画は、私のYouTubeチャンネルで公開しています。ぜひご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. ピックアックス・マウンテンとは何ですか? 正式には「コー・エ・コランガズラー」と呼ばれる、ナタンズにほど近いイランの山です。2020年頃から掘られた超深層の地下施設で、岩盤の下およそ90〜137メートルに内部が作られています。フォルドゥより深く硬い花崗岩に守られ、専門家は通常兵器では破壊が極めて困難だと指摘しています。
Q2. なぜアメリカはこの山を攻撃しようとしているのですか? ウォールストリート・ジャーナルが2026年7月21日、イスラエルの情報機関がイランは数千機の遠心分離機をこの山に移送したと評価し、その情報を米国と共有したと報じたためです。ただし濃縮の事実は確認されておらず、IAEAの査察も一度も入っておらず、トランプ大統領自身も「公式記録としては確認できていない」と認めています。
Q3. ネタニヤフの「7枚のスライド」とは何ですか? ネタニヤフ首相がポッドキャストで明かした話で、トランプ当選直後に7枚のスライドを持参し「我々は許可を求めたのではない、我々はこうするのだと伝えた」と語ったものです。最後のスライドでB2爆撃機によるフォルドゥ攻撃を提案し、アメリカがそれに乗ったと本人が述べています。
Q4. アブラハム合意とは何ですか?なぜサウジは拒むのですか? 2020年にトランプ政権が主導した、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化の枠組みで、パレスチナ問題を前提条件から外した点が最大の特徴です。サウジはメッカとメディナの守護者を自任する国であり、アルアクサでの事件直後に8か国共同声明でイスラエルの主権を拒絶しており、原子力協定と引き換えの参加は極めて困難だと金子は見ています。

