「西洋500年」の終焉 BRICS首脳会議で確定する 「米ドル覇権」の瓦解と西洋の没落

こんにちは。金子吉友です。

ドルを倒す必要はない。迂回すればいい。

これが、2026年9月12日にインドのニューデリーで採択された「ニューデリー宣言2026」の本質です。

多くの報道は「BRICSが脱ドルへ」「ドルは終わるのか」という見出しで、この会議を伝えました。ですが、その議論だけで終わらせてしまうと、いちばん重要な部分を見失います。

なぜなら、BRICSは今回、共通通貨を作るとは一言も言っていないからです。

やろうとしているのは、もっと地味で、もっと確実なことです。元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏は、これを「配管(plumbing)」と表現しました。新しい世界通貨を作る話ではない。水道管のような、金融の配管を敷き直す話なのだ、と。

そして、この配管が敷かれ終わったとき、大航海時代から約500年続いた「世界の重心が西洋にある」という基本構造そのものが動きます。

今日は、この話をします。

ニューデリーで何が決まったのか
目次

ニューデリーで何が決まったのか

まず、事実関係から整理します。

  • 2026年9月12日、インドのニューデリーでBRICS首脳会議が開かれました
  • 採択されたのが「ニューデリー宣言2026」です
  • BRICSは、より公正で多極的な国際秩序の構築に向けて協力を強化することを確認しました

宣言の主なポイントは、3つです。

  • ① 自国通貨による貿易決済の拡大――BRICS各国は、自国通貨を用いた貿易決済と投資をさらに推進する
  • ② 決済・メッセージングシステムの相互運用性――各国の決済システムやメッセージングシステムをつなぎ、越境決済をより速く・低コストで・安全にする方針を確認
  • ③ より公正で多極的な国際秩序――一方的な制裁への批判も盛り込み、グローバル・サウスの発言力強化を目指す

実務面では、BRICS決済タスクフォース(BPTF)が、決済・メッセージング経路の国境を越えた相互運用性を検討してきました。宣言は、このタスクフォースに対し、速く・低コストで・アクセスしやすく・効率的で・透明で・安全な決済の仕組みについて、現実的な解決策の検討を続けるよう促しています。

ここは、誤解しないでいただきたいところです。

BRICS共通通貨が誕生したわけではありません。

BRICS Payが、今日から世界で動き始めたわけでもありません。

今回の宣言は、今後の具体化に向けた「方向性」を示すものです。

ですが、方向性が定まったことの意味は小さくない。なぜなら、これまで曖昧だった「脱ドル」の話が、共通通貨という非現実的な目標から、決済インフラの相互接続という現実的な工程へと、はっきり切り替わったからです。

※参照:[Sustainable Japan] https://sustainablejapan.jp/2026/09/14/brics-2026-declaration/130529

BRICSの決済網 各国システムの相互接続へ

BRICS Payとは何か──各国の決済システムをつなぐ

では、具体的に何をつなぐのか。

BRICS各国には、すでにそれぞれの国内決済システムが存在します。

  • インド:UPI(統一決済インターフェース)
  • 中国:CIPS(人民元決済システム)
  • ロシア:SPFS(独自の金融メッセージング)
  • ブラジル:Pix(即時決済システム)
  • イラン:SEPAM(国内決済システム)
  • UAE:AANI(即時決済プラットフォーム)
  • 南アフリカ:決済システム

BRICS Payとは、これらをゼロから作り直すのではなく、既存のシステムを「つなぐ」構想です。

相互運用性(interoperability)という言葉が、この構想の核です。

つまり――インドの企業がロシアの企業に支払うとき、ドルにも、SWIFTにも、西側の銀行にも触れずに、ルピーとルーブルのまま決済が完結する経路をつくる。

それぞれの通貨で、つながる世界へ。

これが、スライドに書かれた一文です。

ここで大事なのは、「新しい通貨を作らない」という設計思想です。

新しい通貨を作れば、誰がその発行権を握るのかという権力闘争が必ず起きます。中国は人民元を推したい。ロシアは別の計算がある。インドはどちらにも主導権を渡したくない。共通通貨は、BRICSの内部対立を最も激化させる論点なのです。

だから、通貨を作らない。配管だけをつなぐ。

それぞれの国が、それぞれの通貨のまま参加できる。この設計だからこそ、11か国もの利害がバラバラな国々が、全会一致で合意できたわけです。

ドルを倒す必要はない 迂回すればいい

ドルを倒す必要はない。迂回すればいい

ここが、今日いちばんお伝えしたい部分です。

これまでの国際取引は、こうでした。

輸出国(資源・製品)→ ドル決済 → SWIFT(国際送金網)→ 西洋の銀行(米欧)→ 輸入国

ドルとSWIFTが国際決済のハブとなり、米欧の金融システムが世界の資金の流れを掌握してきた。

これが、世界経済の標準だったわけです。

ところが、これを迂回する別の配管ができたら、どうなるか。

  • ドルの覇権を、いちいち正面から倒す必要がなくなる
  • 人民元を新しい基軸通貨にする必要すらない
  • それぞれの自国通貨で決済できる経路を、増やしていけばいい

ドル覇権を正面から倒す必要はない。迂回すればいい。

これが、BRICS Payの本質です。

道路で言えば、バイパスです。渋滞している幹線道路を撤去する必要はない。横に別の道を1本通せば、その道を使う車が増えていく。そして気づいたときには、幹線道路を通らなくても目的地に着けるようになっている。

重要なのは、ドルを倒すことではない。ドルに依存しなくても取引できる世界をつくることだ。

この違いは、決定的です。

「ドルを倒す」なら、アメリカは全力で反撃できます。しかし「ドルを使わない選択肢を増やす」だけなら、何を攻撃すればいいのでしょうか。攻撃対象が、どこにも存在しないのです。

※参照:[larrycjohnson.substack.com] https://larrycjohnson.substack.com/p/day-one-in-new-delhi-brics-steps

西洋の500年 世界を支配した時代

「西洋の500年」とは何だったのか

ここで、少し時間軸を広げます。

このニュースを「ドルがいよいよ終わるのか」という議論だけで終わらせてしまうと、本質を見失います。

15世紀から16世紀の大航海時代に始まり、西洋諸国は世界中へ影響力を拡大していきました。

  • 19世紀――ヨーロッパの大帝国の時代
  • 20世紀――アメリカの時代
  • 1945年以降――ドル、IMF、世界銀行、国際金融市場、そして軍事同盟
  • 1991年のソ連崩壊――ある意味で、西洋の絶頂

中心となる国家は変わっても、「世界の重心が西洋にある」という基本構造は、約500年間ずっと不動だったのです。

その構造そのものが、いま動き始めている。

これは、大統領が誰になるかという話ではありません。どの政党が政権を取るかという話でもない。500年続いた構造の話です。

だからこそ、今回のBRICS首脳会議は、単なる一国際会議のニュースとして流してはいけないのです。

数字で見る西洋の翳りとBRICSの規模

数字で見る、西洋の翳りとBRICSの規模

では、どこまで動いているのか。数字で見ていきます。

BRICSは現在、正式加盟が11か国です。

  • 人口――世界人口のおよそ半分(インド政府発表。統計上はおよそ48.5%)
  • GDP――購買力平価(PPP)ベースで世界の約40%
  • 貿易――世界貿易の約26%

そして、変化の速度を示すのがこの数字です。

UNCTAD(国連貿易開発会議)の集計では、購買力平価で見たBRICSの世界GDP比率は、2003年の24%から、2024年には39%まで上昇しています。

21年で、15ポイントの上昇です。

一方、西洋側がまだ圧倒的に強い分野も、正確に押さえておきます。

  • 名目GDP
  • 金融市場の厚み
  • 軍事力
  • 先端技術
  • 大学・研究機関
  • 基軸通貨としてのドル

これらを含めれば、西洋はいまも巨大なパワーを持っています。これは否めません。

ですが、重要なのは「現時点の大小」ではないのです。

西洋が世界全体に占める相対的な比重が、どんどん小さくなっている。変化しているのは、量ではなく方向です。

BRICS側には圧倒的な資源・市場・人口がある

BRICS側には、圧倒的な「資源・市場・人口」がある

BRICSの強さは、GDPの数字だけではありません。

現実の、物理的な力を持っています。

  • 中国とインド――巨大な消費市場
  • ロシアと中東――巨大なエネルギー供給地域
  • ブラジル――資源・食料大国
  • インドネシア――東南アジア最大級の人口大国

そして資源です。

  • 世界の原油生産の4割以上(統計上はおよそ43.6%)
  • 天然ガス生産の3分の1以上
  • レアアース(希土類)埋蔵量の約7割(統計上はおよそ72%)

レアアースの7割、という数字を軽く見ないでください。

半導体、電気自動車のモーター、風力発電のタービン、そして精密誘導兵器。現代の先端産業と軍事技術は、ここを押さえられた瞬間に止まります。

BRICSはもはや、単なる政治的な枠組みではありません。エネルギー、資源、食料、人口という、現実の力を持ったブロックです。

世界の重心が西洋から非西洋へ

世界の重心が、西洋から非西洋へ

ここまでを一言でまとめます。

非西洋のグループが、ただ大きくなってきたという話では済まなくなりました。

世界の重心そのものが、西洋から非西洋へ移動し始めているのです。

そして、これは一時的な変化ではありません。

理由は単純です。非西洋諸国が、自分たちで市場を持ち、自分たちで技術を持ち、そして自分たちで金融インフラまで作れるようになってきたからです。

市場・技術・金融。この3つが揃うと、もう外部に依存する理由がなくなります。

これまでは、どれか1つが欠けていました。市場はあっても技術がない。技術はあっても金融がない。だから最後は西側の仕組みに戻ってくるしかなかった。

その最後の1ピースが、いま埋まろうとしている。それが、BRICS Payという話なのです。

BRICSの拡大を象徴するのがインドである

拡大を象徴するのが、インドである

この変化を最も象徴しているのが、インドです。

インドは、グローバルサウスの中核として、従来の枠組みを超えた新たな国際連携を進めています。

そして今回のBRICS首脳会議で、インドは議長国として、実に絶妙なポジションを維持しました。

一体、何が起こっているのか。

インドが半年のあいだに取った行動を、順番に並べてみます。これが、驚くほど示唆的なのです。

インドは半年で二つの場で異なる役割を果たした

インドは半年で、二つの場で異なる役割を果たした

2026年2月26日──モディ首相、イスラエル国会で演説

インドのナレンドラ・モディ首相は、イスラエルの国会クネセトで演説しました。

  • インドの首相として、初めてのクネセト演説です
  • さらに外国の首脳として初めて、「クネセト議長メダル」を授与されました
  • モディ首相は「テロとの戦いにおいて、インドは確固として、全面的な確信をもってイスラエルとともにある」と述べています

イスラエルとインドの戦略的パートナーシップは、安全保障・技術・サイバーの分野で、新しい段階へ進んだと報じられました。

非常に密接な関係です。

※ただし、一点だけ付け加えておきます。このメダルについては、中東メディアのMiddle East Eyeが「そのような賞はそれまで誰も聞いたことがなく、授与の瞬間まで実物を見た者もいなかった」と報じ、ネタニヤフ首相が賞そのものを新設したのではないかという指摘も出ています。これは指摘の段階であり、断定はしません。

2026年9月1日──上海協力機構の首脳会議で、イラン攻撃を非難

ところが、その半年後です。

キルギスのビシュケクで開かれた上海協力機構(SCO)の第26回首脳理事会で、インドを含む加盟国が「ビシュケク宣言」に署名しました。

その中身は、こうです。

  • イラン領内への軍事攻撃を非難
  • こうした行為は国際法および国連憲章の原則と規範に違反し、国際の平和と安全に深刻なリスクをもたらす
  • イランの平和的核利用の権利を支持
  • 国連やWTOのルールに反する一方的な経済制裁に反対

モディ首相も、この宣言に署名しています。

※ここは正確に言います。ビシュケク宣言は、アメリカとイスラエルを名指ししていません。「イラン領内への軍事攻撃」という表現にとどめています。実質的に誰を指しているかは明白ですが、文書上は名指しを避けた。ここを混同すると、話が不正確になります。

2026年9月12日──議長国として、ニューデリー宣言をまとめる

そしてその11日後、インド自身が議長国となったBRICS首脳会議で、ロシア、中国、イランなどとともにニューデリー宣言をまとめているのです。

イスラエルにとっての敵国であるイランと、同じ宣言に名を連ねている。

半年で、これだけのことをやっているわけです。

※参照:[Al Jazeera] https://www.aljazeera.com/news/2026/9/1/sco-slams-attacks-sanctions-on-iran-key-takeaways-from-bishkek-summit

インド外交の全方位戦略 すべての国と付き合う

インド外交の全方位戦略──すべての国と付き合う

では、インドは西洋側を捨てたのでしょうか。

そうはなりません。インドは、どちらかについたという考え方をしない国です。

インドのスタンスは、こうです。

「どうして一方につかなければならないのか」

自国の国益になると思えば、どちらとも付き合う。どちらか一方に加担するということは、やらない。

だから、こうなります。

  • アメリカとも付き合う――クアッド(日米豪印)のメンバーである
  • イスラエルとも付き合う――戦略的パートナーシップを結んでいる
  • ロシアとも付き合う――BRICSと上海協力機構で同じテーブルにつく
  • 中国とも付き合う――国境紛争を抱えながら、必要なところでは協力する
  • イランとも付き合う――同じ宣言に署名する

BRICSにいて、上海協力機構にいて、そしてクアッドにもいる。

これが、インドの立ち位置です。

この立ち位置こそ、日本が見習うべきものではないでしょうか。

日本はいま、その正反対を行っています。アメリカの側に完全に軸足を置き、ロシアや中国との関係を、わざわざ悪化させるようなことをやっている。

インドは、対立する国とも、必要なところでは協力する。日本は、対立していない国とまで、わざわざ対立を作りにいく。

どちらが国益にかなうのか。答えははっきりしていると、私は思います。

制裁の逆コース 制裁が生んだ脱ドルの流れ

制裁の逆コース──制裁が生んだ「脱ドル」の流れ

ここからが、非常に興味深いところです。

アメリカは、西側に組みしないロシア、中国、イランといった国々を、これまで制裁してきました。

ところが――

制裁をすればするほど、制裁されている側が「アメリカを必要としない仕組み」「ドルを必要としない仕組み」を作っていったのです。

これを、制裁の逆コースと言います。

構造を整理すると、こうです。

アメリカはドルが強いから、制裁という武器を使える。しかし制裁を使えば使うほど、相手はドルを使わなくても済む配管を作る。そして配管ができた分だけ、次の制裁は効かなくなる。

自分の武器で、自分の武器を無力化しているわけです。

ドルという通貨の強さは、「みんなが使っているから強い」という性質のものです。軍事力のように、使っても減らないタイプの力ではありません。むしろ制裁という形で使うたびに、「これは自分にも向けられうる武器だ」と各国に思い知らせてしまう。

そして各国は、静かにバイパスを引き始める。

イランにとっての代替決済 生存戦略

イランにとっての代替決済は、「生存戦略」である

ラリー・ジョンソン氏が特に注目しているのが、イランです。

同じ「自国通貨決済」でも、国によって意味合いがまったく違うからです。

  • インドやブラジルにとって――選択肢が増えるという意味合いが強い。ドルを使ってもいいし、使わなくてもいい。便利さの話です
  • イランとロシアにとって――これは特別な意味を持ちます

イランとロシアは、すでに西側の金融システムからアクセスを制限されています。厳しい制裁下にある。

だから代替決済は、彼らにとって「便利さ」ではありません。生き残るために必要なものです。

この温度差は、非常に重要です。

ニューデリーの会議で、イランがもっとも強く「脱ドル」を推したと報じられているのも、この理由です。同じテーブルについていても、この配管に賭けているものの大きさが、国ごとにまるで違うのです。

そしてこれは、BRICSの弱点にもなります。次の話につながります。

アメリカの4つの対抗策

アメリカは、どう対抗してくるのか──4つの対抗策

では、アメリカは今後どのような対抗策を出してくると考えられるか。4つ見ていきます。

① 二次制裁の強化

当然、考えられる手です。

ですが、これをやりすぎると、今度は「ドルに依存するのは危険だ」と相手側に思わせてしまいます。

つまり、制裁の逆コースを、自分で加速させることになる。

② 関税

関税を高めることは、その国への強い圧力になります。

アメリカという巨大な市場へのアクセスが難しくなるからです。

ですが、これにも限界があります。非西洋の国同士が貿易を加速させていけば、アメリカ市場への依存度そのものが下がっていくからです。

圧力の効き目は、相手が自分を必要としている度合いに比例します。その度合いが下がっていく以上、関税の威力も逓減していきます。

BRICSを一枚岩にさせないこと

③ BRICSを一枚岩にさせないこと

これが、アメリカにとって最も現実的な手段です。

BRICSの加盟国同士には、緊張状態や対立関係が実際に存在します。そこを利用する。

  • 中国とインド――いまだに国境をめぐる紛争を抱えている
  • イランとUAE――今回の戦争でも明らかになった溝がある
  • その他にも、国家利益が異なる国々が存在する

BRICSは11か国です。利害がバラバラだからこそ「共通通貨を作らない」という設計にせざるを得なかった。

つまり、この枠組みの柔軟さは、そのまま脆さでもあるのです。

各国の利害の違いを活用し、分断を促す。これは、十分に考えられる手です。

デジタル・ドル圏を構築する

④ 次世代の「デジタル・ドル圏」を構築する

そして4つ目。いまアメリカが最も力を入れているところです。

具体的には、ドルのステーブルコインです。

理屈はこうです。

BRICSがドルを通らない新しい回路を作るのなら、アメリカはドルそのものをデジタル高速道路にする。

ステーブルコインの裏付け資産として米国債が購入されれば、米国債の需要も支えられます。つまり、デジタル時代のドル覇権を取りにいくという発想です。

トランプ政権が非常に力を入れている分野でもあります。

ですが、私は率直に疑問を持っています。

果たしてこれで、本当に米国債の需要が上がっていくのでしょうか。ここまで落ちてしまったドルの信用を、回復させることができるのでしょうか。

ここは、まだまだ不透明だと思います。

西洋500年の転換 世界の重心はどこへ向かうのか

西洋500年の転換──世界の重心はどこへ向かうのか

それでも、アメリカがこの流れを完全に止めることは、非常に難しい。

世界の重心が西洋から非西洋へ移っていく流れは、もはや誰にも止められないところまで来ていると、私は見ています。

ここは、冷静に押さえておきます。

  • ドル自体が、すぐに消えることはありません
  • 基軸通貨としてのドルが、一夜にしてなくなることもありえません

ですが――

「ドルを使わなければ世界経済に参加できない」ということは、もうなくなったのです。

この一文が、すべてです。

覇権とは、「他に選択肢がない」という状態のことです。選択肢が生まれた瞬間、それは覇権ではなく、単なる「有力な選択肢の一つ」に格下げされます。

大航海時代以降、約500年にわたって続いた「世界の重心が西洋にある」という基本構造。それが、ここに来て動き始めた。

私たちは、その転換点に立ち会っています。

西洋 対 イスラム+中国・ロシア・イラン

西洋 対 イスラム+中国・ロシア・イラン

世界は多極化していると言われます。

ですが私は、いま起きているのは、もう少しくっきりした二極構造だと見ています。

西洋と非西洋の対立です。そして西洋が、非西洋のグループと最後の戦いをしようとしている。

この対立は、これからますます深まっていくでしょう。

イラン戦争が、その典型的なパターンです。

西洋のグループのなかでイスラエルが台風の目になり、アメリカがイスラエルの代わりに、代理としてイランと戦わされている。

イスラエルとイランの代理戦争を、アメリカが引き受けている構図です。

そして、中東の再編が起きています。

  • 2026年8月7日、トルコ、サウジアラビア、パキスタンの3か国が「メッカ共同防衛協定」に署名しました
  • これは、2025年9月17日に結ばれたパキスタン・サウジアラビア間の相互防衛協定を、トルコを加える形で拡大したものです
  • 中身は「1か国への攻撃を、3か国全体への攻撃とみなす」という相互防衛の原則です。トルコのフィダン外相は、NATO条約第5条に相当する仕組みだと説明しています
  • ここにエジプトが加わるのではないかという見方もあります
  • そして、この枠組みにイランが入ってくる可能性も出てきました。少なくともトルコのエルドアン大統領は、イランの参加を歓迎すると述べています

※ただし正確に言えば、イランの参加は報じられている段階であり、イラン外務省も3か国も公式には確認していません。断定はできません。

それでも、注目すべきは「宗派を超えて」という点です。

スンニ派の国々とシーア派のイランが、同じ防衛の枠組みに入る可能性が語られている。そこまで、イスラエルという存在が共通の脅威になっているということです。

そして上海協力機構、BRICSという枠組みのなかで、中国、ロシア、そしてインドも非西洋のグループに加わってきている。

この両陣営の戦いは、さらに熾烈になっていくでしょう。西洋は、没落しないように、自分たちの生命をかけて挑んでくるはずです。

それでも、西洋側の没落は避けられないと私は見ています。

実際、西洋側の内部は、すでに軋み始めています。

  • アメリカ――ペトロダラー体制にひびが入っている。サウジアラビアとの関係も微妙になってきた
  • 欧州――リベラルが行きすぎ、ウクライナ紛争に多額の資金を投じ、電気代・エネルギー代が高騰。そこに大量の移民が入り、国体や文化が壊れつつある
  • イギリス――解体の危機すら出てきました。2026年7月20日にアンディ・バーナム氏が首相に就任しましたが、国民からの信頼は厚いとは言えません。スコットランドとウェールズの独立、北アイルランドとアイルランドの統合という動きが強まり、スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの首脳がカーディフで、自決権と住民投票の実施を求める共同宣言に署名する見通しです

欧州も、完全に没落フェーズに入っています。

※参照:[Al Jazeera] https://www.aljazeera.com/news/2026/8/7/turkiye-saudi-arabi-pakistan-sign-joint-defence-agreement-whats-in-it

日本はどうするのか 大きく変わる世界の中で

まとめ──日本はどうするのか

ここまでを整理します。

BRICSは共通通貨を作りませんでした。作らなかったからこそ、11か国が合意できた。

そして、ドルを倒すのではなく、ドルを使わなくても取引できる道を増やす。その配管づくりが、構想の段階から、運用に向けた工程の段階へ入り始めた。

これが、ニューデリー宣言2026の意味です。

西洋の没落は、また一歩加速しました。

では、日本はどうするのか。

アメリカか、BRICSか。そういう二者択一では、決してありません。

インドを見てください。アメリカとも、イスラエルとも、ロシアとも、中国とも、イランとも付き合っている。クアッドにいながら、BRICSの議長国も務めている。

「どうして一方につかなければならないのか」――これがインドの姿勢です。

ところが日本は、この西洋のグループにどっぷり浸かり、アメリカに依存しきっています。

そのアメリカ自体が、いまお伝えしたように凋落しつつある。

にもかかわらず日本は、中国との対立を深め、ロシアとの関係をわざわざ悪化させるようなことをやっている。

日本もまた、この非西洋グループといずれ戦っていく道を、ひたすらに歩んでしまっている。

率直に申し上げて、高市政権は愚かな選択をしていると、私には思えてなりません。

ですが、まだ間に合わないわけではありません。

どちらとも付き合っていける、そういう緻密な外交をしていただきたい。これは、思想の問題ではなく、国益の計算の問題です。

メディアは、この会議を「脱ドル」「ドルは終わるのか」という見出しで片付けます。ですが、その奥にあるのは、はるかに大きな構造です。

大航海時代から約500年。中心となる国家は変わっても動かなかった「世界の重心が西洋にある」という前提が、いま初めて動き始めている。

表層ではなく、構造を見てください。

そして私たち日本は、その構造の、どちら側に立つのか。いや、そもそも「どちらか側に立つ」という発想自体を、そろそろ捨てるべきではないのか。

真の独立とは、真の主権とは、何か。

それは、どの陣営に属するかを選ぶ自由ではなく、どの陣営とも付き合える自由のことではないでしょうか。

ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。

今回の内容をさらに詳しく解説した動画は、私のYouTubeチャンネルで公開しています。ぜひご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. BRICSは共通通貨を作ることに決めたのですか?

いいえ。今回のニューデリー宣言2026で、BRICS共通通貨の創設は決まっていません。決まったのは、自国通貨による貿易決済の拡大と、各国の決済・メッセージングシステムの相互運用性を進める方針です。BRICS決済タスクフォース(BPTF)が、現実的な解決策の検討を続けることになりました。共通通貨は、加盟国間の利害対立が最も激しくなる論点であり、あえて避けられたと見るのが妥当です。

Q2. BRICS Payは、もう使えるのですか?

いいえ。今日から世界で動き始めたわけではありません。今回の宣言は、今後の具体化に向けた方向性を示すものです。構想としては、インドのUPI、中国のCIPS、ロシアのSPFS、ブラジルのPix、イランのSEPAM、UAEのAANIといった既存の各国決済システムをつなぐ相互運用レイヤーを目指しています。実際の運用にはまだ時間がかかります。

Q3. ドルはもう終わるのですか?

終わりません。ドル自体がすぐに消えることも、基軸通貨としての地位が一夜にしてなくなることもありえません。名目GDP、金融市場の厚み、軍事力、先端技術において、西洋側はいまも巨大なパワーを持っています。ただし、「ドルを使わなければ世界経済に参加できない」という状態ではなくなった――これが今回の本質です。覇権とは「他に選択肢がない」状態のことであり、選択肢が生まれた時点で、その性質は変わります。

Q4. インドは西側を離れて、BRICS側についたということですか?

違います。インドはどちらか一方につくという発想を取りません。2026年2月26日にはモディ首相がイスラエル国会クネセトで演説し、9月1日には上海協力機構のビシュケク宣言でイラン領内への軍事攻撃を非難する文書に署名し、9月12日にはBRICS議長国としてニューデリー宣言をまとめています。クアッドのメンバーでありながら、BRICSと上海協力機構にもいる。「自国の国益になると思えば、どちらとも付き合う」――これが全方位外交であり、日本が学ぶべき姿勢だと私は考えています。

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

反DS歴史研究者、調査ジャーナリスト。YouTube『あつまれニュースの森』(登録者10万人)にて反グローバリズムの視点で世界情勢・国内政治を解説。

本業だったコンサルタントから徐々に歴史研究にシフトしていく。日々リサーチする中、メディアや歴史が嘘だらけであり、この世界が一部の権力機構によって支配されてきたことに強烈な違和感と憤りを覚えるようになる。

グローバリズムの根源と実態を徹底的に研究。その歴史を旧約聖書まで遡り、現在のいわゆるディープステートのルーツがユダヤ系とアングロサクソン系の2系統にあることを突き止める。

2021年、YouTubeを開始し、グローバリストのルーツを徹底解剖するオンラインサービス『金子ゼミ』を立ち上げる。

グローバリストにより”修正”された歴史を”修復”する「歴史復元主義」を根本理念とする。

情報発信者としての信条は「左も右もない反グローバリズム・国益第一主義」「不偏不党」。

目次