こんにちは。金子吉友です。
「移民を受け入れた瞬間、地獄が始まった」
スウェーデンから日本へ逃げてきたという女性の証言が、Xで250万回を超えて拡散しています。犬を連れた高齢女性が殴られる。役所で刃物を見せて金を要求される。金髪で青い目の若い女性が付きまとわれる。クリスマスを祝うことすら怖くなった——。
読んでいて、背筋が寒くなる話です。
しかし、私はこの投稿をそのまま「事実だ」として扱うつもりはありません。これは現地報道でも警察発表でもなく、通訳を介して聞き取った話を投稿者が文章にまとめた二次情報だからです。町の名前も、日付も、警察記録もありません。
では、デマとして切り捨てればいいのか。私はそうも思いません。
なぜなら——彼女の恐怖と重なる数字が、スウェーデン政府自身の公的資料から、次々と出てくるからです。警察庁が公表する「脆弱地域」。統計庁の犯罪容疑者データ。そして先日の総選挙の投票行動。感情ではなく数字を並べたとき、この国で何が起きたのかが、かなり具体的に見えてきます。
そしてその先に、日本の話が待っています。2027年4月から始まる育成就労制度。上限123万人と説明されているこの制度には、閉まらない蓋があります。
今日は、①証言をどう扱うか、②公的データが示すスウェーデンの実像、③街の変化がどうやって選挙を変えたのか、④そして日本が何を見落としているのか——この順番で見ていきます。

250万回拡散した証言を、どう扱うか
これは二次情報である
まず、出どころをはっきりさせておきます。
話の出どころは、Xに投稿された一連のスレッドです。投稿者は、最近スウェーデンから日本へ「逃げてきた」という女性と、通訳を介して話をしたと説明しています。
つまりこれは、現地報道でも警察発表でもありません。スウェーデン人女性の話を通訳が訳し、それを投稿者が書いた二次情報です。ここを最初にはっきりさせておかないと、この先の話が全部あやしくなります。

女性が語った内容
そのうえで、彼女が語った内容を要点だけ見ておきます。以下はすべて「本人の説明」であり、事実として確認されたものではありません。
- 四人家族の長女で、両親と妹がいる。妹はいまデンマークの友人宅に身を寄せ、場合によっては日本へ移ることも考えている
- 家族が暮らしていたのは、首都から車でおよそ30分の町。職業はIT関係
- 町が変わり始めたのはおよそ2年前。最初にアフリカ系の人々が入り、半年ほどすると流入が一気に増えた
- 空き家に3人、4人と住むようになったものの、働いている様子はなかった
- 役所へ行けば、大声で金を要求する。刃物を見せて職員を脅す人までいた。それでも警察はなだめるばかりだった
- その後、ムスリム系の住民も増え、街の空気がさらに変わった
とりわけ印象的なのが、散歩すらできなくなったという話です。
- 犬を連れた高齢女性が罵声を浴びせられ、殴られる
- あるときは若い男性二人が女性に暴行し、犬を蹴って死なせ、止めに入った近所の男性にも暴行した
- 若い女性、とくに金髪で青い目の女性が付きまとわれ、娘のいる家庭では引っ越しの話ばかりになる
- 教会の撤去を求める声が出て、クリスマスを祝うことすら怖くなった。家や衣類を奪われた高齢者もいる
そして投稿者は、この話をこうまとめています。「ムスリムやアフリカ系を受け入れれば、日本でも同じことが起きる」と。
ただし、この投稿の最後には、集団全体を人間扱いしないほど極端な表現も出てきます。私はそこには同意しません。起きている問題を直視することと、ある集団をまるごと敵として描くことは、まったく別のことです。

確認できること、確認できないこと
正直に申し上げます。
犬の事件も、住宅を奪われたという事件も、私には確認できません。町の名前も、日付も、警察記録もない。ですから、この投稿だけで「スウェーデン全土がこうなった」と断定するのは無理です。
ただし——「確認できない。だから全部作り話だ」で終わらせていいのか。私はそうは思いません。
なぜなら、背景にある治安悪化と社会の分断は、スウェーデン政府自身の数字に、かなり具体的に出ているからです。
ここからは感情ではなく、数字で見ます。

数字で見るスウェーデン——脆弱地域、銃撃、犯罪統計
警察がいう「脆弱地域」とは何か
まず、スウェーデン警察庁(Swedish Police Authority)が公表している「脆弱地域(utsatta områden)」に関する報告です。
ここで誤解してはいけないのは、脆弱地域=移民が多い地域、ではないということです。定義はこうです。
低い社会経済状況に加えて、犯罪者が地域社会へ強い影響を及ぼしている地区。
具体的には、住民が報復を恐れて被害を届けない。証言しない。警察が通常どおり活動できない。そういう地域を指します。
そして、そのうち最も深刻な「特に脆弱な地域」の定義には、ここまで含まれます。
- 並行社会(parallel society)
- 宗教的原理主義による自由の制限
- 証人への組織的な脅迫
- 警察活動の著しい困難
「並行社会」とは何か。ひとつの国のなかに、主流社会とほとんど交わらず、独自の規範・言語・制度・生活感を持つ集団が形成されている状態を指す言葉です。分かりやすく言えば、その地域に同化しないコミュニティができあがり、ひとつの国の中に二つの社会が同時に存在しているということです。
これが警察の公式文書に定義として書かれている。この一点だけでも、事態の性格が分かります。

全国65か所。ただし、公平に見る必要があります
最新報告によれば、該当地区は全国で65か所。前回は59か所でした。
ここは公平に言っておく必要があります。
警察自身が説明しているように、これは純粋に6地区悪化したという意味ではありません。ひとつの地区を複数に分けたことによる「技術的な増加」も含まれています。しかも全体の傾向は、わずかながら改善です。通常の脆弱地域47か所のうち、12か所が改善、4か所が悪化、31か所は横ばいでした。
しかし、だから問題が小さいというわけではありません。
65か所も、犯罪者の影響が地域社会に及ぶ地区が残っている。改善傾向にあるという事実と、65か所存在するという事実は、両立します。片方だけを取って「悪化の一途だ」と言うのも、「改善しているから問題ない」と言うのも、どちらも不正確です。

銃撃は、国土のごく一部に集中している
次に銃撃です。
2022年から2024年の3年間に、スウェーデンで確認された銃撃事件は1,056件。
- うち21パーセントが、脆弱地域の中で起きています
- さらに4パーセントが、その境界から200メートル以内で起きています
面積で考えれば、これはかなり異常な集中です。国土のごく一部に、銃撃の4件に1件ほどが集まっている。
場所だけではありません。警察は、地域で犯罪に影響を与える人物を独自に把握していますが、その対象者が、2022年から2024年の銃撃事件の4割以上に、容疑者か被害者として関わっていました。地区の外で起きた銃撃にも、こうした地域と結びつく人物が関与しているわけです。
爆発事件もあります。2023年と2024年の2年間で、およそ290件。
もちろん、すべてが移民による犯罪だという話ではありません。しかし、銃撃と爆発がここまで日常的に集計される国になった。この現実は軽く見られません。

出生背景で、犯罪容疑者率に差がある
次に、犯罪統計そのものです。
スウェーデン犯罪防止評議会(Brå/Swedish National Council for Crime Prevention)の統計です。調査対象期間の最終年で、犯罪容疑者として登録された人の割合を見ます。
- 両親とも国内生まれの国内出生者:1.4パーセント
- 外国生まれの人:3.6パーセント
- 両親とも外国生まれの国内出生者:4.7パーセント
単純比較すると、外国生まれは2.5倍、移民二世にあたる層は3倍を超えます。

ただし、調整すると差は縮む
ここも丁寧に見る必要があります。
これを人種や宗教だけで説明するのは乱暴です。Brå自身が、年齢、性別、所得、教育、自治体の違いを調整すると差はかなり縮まるとしています。若い男性が多い、貧困がある、教育や就職で不利になる。そうした条件も大きいのです。
ただし重要なのは、調整しても差が完全には消えないことです。Brå自身が「相当な部分が残る」と書いています。
ですから「犯罪との関係は全部デマだ」も違うし、「移民なら全員危険だ」も違う。実態はその間にあります。
ここまでを整理すると、こうなります。
- 最初の女性が語った個々の事件は、確認できない
- しかし、住民が警察に協力できない地域、並行社会、銃撃の集中、背景別の犯罪容疑率の差は、公的資料で確認できる
ここまで来ると、彼女の恐怖を単なる妄想として片づけることもできません。

※参照:Swedish Police Authority「Utsatta områden」報告/Brå(Swedish National Council for Crime Prevention)統計
街が変われば、選挙が変わる
そして、3議席差の総選挙
この社会の変化は、治安だけでは終わりません。次に政治を変えます。
先日お伝えした2026年のスウェーデン総選挙を振り返ります。
結果は、左派ブロック176議席、右派ブロック173議席。たった3議席差で左派が勝ちました。
政党別に見ると、
- 社会民主労働党(Socialdemokraterna):28.05パーセントで第1党
- 穏健党(Moderaterna):19.85パーセント
- スウェーデン民主党(Sverigedemokraterna):17.48パーセント
ここで押さえておきたいのは、欧州全体では右派政党が伸びているということです。ドイツのAfD、イギリスのReform UK、フランスの国民連合。ところがスウェーデンでは、左派が右派を抑えて3議席差で勝った。
なぜか。

有権者の背景で、投票がはっきり割れた
スウェーデン統計局(SCB/Statistics Sweden)の政党支持調査を見ます。
スウェーデン背景の有権者では——
- 赤緑系(左派)44.9パーセント/右派系46.3パーセント。ほぼ互角です
ところが外国背景の有権者では——
- 赤緑系65.1パーセント/右派系28.4パーセント
- 36.7ポイントもの差が開いています
さらにSVTの出口調査VALUでは、非欧州背景の有権者のおよそ7割が左派へ投票したと分析されています。
ここは混同してはいけません。これは「ムスリム票」の統計ではなく、外国背景、あるいは非欧州背景の統計です。これだけで、ムスリムが左派を勝たせたとは断定できません。
ただ——スウェーデン背景の有権者だけなら左右はほぼ互角で、実際の選挙はわずか3議席差でした。そこへ左派へ大きく偏る移民系有権者の票が加わった。選挙結果に強い影響を与えたことは、かなり明白です。
人口が変わる。街が変わる。有権者が変わる。そして政党の政策まで変わる。
移民問題は、受け入れた人数だけの話ではありません。その国の政治そのものを変える話なのです。

政党と宗教団体の関係は、1990年代から
では、これは政治参加なのか、それとも組織的な政治浸透なのか。
まず前提として、国籍を得た移民が投票すること自体は、政治侵略でも何でもありません。国民が一票を投じる。当たり前の権利です。
問題はここです。
- 既存政党が、特定の宗教団体や民族コミュニティを、まとまった票田として扱い始めること
- そして団体側も、票と引き換えに候補者や政策、補助金へ影響力を持とうとすること
この問題は最近始まったものではありません。
1990年代、社会民主党系のキリスト教社会民主主義運動(Broderskapsrörelsen、現在の社会民主党信仰連帯)と、スウェーデン・ムスリム評議会(Sveriges muslimska råd)の間で、政治協力が進められました。
1999年の報告書では、その前年の選挙について、ムスリム評議会の積極的な貢献でムスリムの投票率が上がり、多くが社会民主党へ投票した可能性があると評価され、さらに協力を進める余地があると記されていたと報じられています。
政党側は票が欲しい。団体側は政治への影響力が欲しい。かなり分かりやすい持ちつ持たれつの関係です。これを普通の政治参加と見るか、宗教共同体の組織票化と見るか。ここが大きな論点です。

指摘と、反論の両方がある
さらに問題になっているのが、ムスリム同胞団系ネットワークです。
指摘されていること——
- 2017年、当時のスウェーデン民間緊急事態庁(MSB)の委託研究は、同胞団に近いとされる組織が、スウェーデン社会と競合する並行的な社会構造を長期的に築いていると警告しました
- 2025年、フランス内務省が公表した報告書は、スウェーデンには規模は小さくても、欧州の同胞団系組織に影響力を持つ活発なネットワークがあると記しました
- その背景として、カタールからの資金、多文化主義政策の寛容さ、そして社会民主労働党との良好な関係を挙げています
これは匿名のSNS投稿ではありません。フランス内務省の公式報告です。
反論・留保も押さえます。
- 2017年の研究には「組織の関連づけが広すぎる」「根拠が弱い」という批判もあります
- ですから、名前の出た団体がすべてムスリム同胞団の指揮下にある、とまでは言えません
- 社会民主党側は、過激主義組織との関係を否定し、フランスの報告書は具体的な関係を十分に示していないと反論しています
政府の動きとしては、スウェーデン政府側がイスラム主義者による浸透を調べる専門家グループの設置を表明し、外国から宗教団体などへ流れる資金を規制する議論も進めました。
ですから、線はここに引きます。
「ムスリム同胞団がスウェーデンを完全支配している」とまで言えば言いすぎです。まして、一般のムスリムと、宗教を使って政治権力を広げようとするイスラム主義運動を一緒にしてはいけません。
しかし、イスラム主義系と指摘されるネットワークが、市民団体、教育、宗教施設、補助金、政党との関係を通じて、長期的に政治的影響力を広げようとしてきた。これは陰謀論ではなく、いま政府が調査に動いている政治問題です。

「説明覚書」は、どこまで言えるのか
ここで、しばしば語られるムスリム同胞団の「浸透計画」文書について、私なりに確認した結果を書いておきます。
確認できること——
- 1991年5月22日付の文書「北米における組織の全体戦略目標に関する説明覚書(An Explanatory Memorandum)」は実在します
- 筆者はモハメド・アクラム
- 2004年、FBI(米連邦捜査局)がバージニア州アナンデールの民家を捜索した際に押収されました。地下に隠された空間から、80箱を超える同胞団関連の文書が見つかっています
- 2007年のホーリーランド財団裁判で、証拠として法廷に提出されました
- 文書には「定着(settlement)のプロセスは、言葉のあらゆる意味で『文明ジハードのプロセス』である」という一節があります
確認できないこと——
- この文書が、ムスリム同胞団によって正式に採択された計画である、とは確認できません。1991年の同胞団評議会で公式に取り上げられた形跡はない、とされています
- 2009年、この裁判を担当した判事は、この覚書を資金洗浄の共謀を裏づける証拠とは認めませんでした
- そして——この文書には、段階を五つに整理した浸透計画は書かれていません
文書は実在します。押収も、法廷提出も事実です。しかし「同胞団の公式な五段階計画」として語ると、それは文書が言っていないことを言ったことになります。ここは正確に置いておきたいと思います。

アメリカでも、同じことが起きている
そして、これは欧州だけの話ではありません。
2026年8月4日、ミシガン州の民主党上院予備選で、アブドゥル・エルサイード氏が48.5パーセントを得て勝利しました。
- 対立候補は現職下院議員のヘイリー・スティーブンス氏
- AIPAC(米国イスラエル公共問題委員会)は、スティーブンス氏の支援に3,000万ドル超(1ドル150円換算で約45億円)を投じました
- エルサイード氏は、主に親イスラエル団体による6,000万ドル超(約90億円)の対抗支出を覆して勝ちました
- 本選は11月。共和党のマイク・ロジャース氏と対決します
ニューヨークでは、すでにゾフラン・マムダニ氏が市長になっています。
私の見立てを申し上げます。アメリカでいま起きているのは、「赤い勢力」と「緑の勢力」の連携です。社会主義系の運動と、ムスリム系の候補が手を組み、イスラエルロビーに対抗する構図が、都市部や移民が集中する地域で生まれつつある。
ただし、これは私の見立てであって、統計で裏づけたものではありません。エルサイード氏に社会主義団体の公式な推薦があったかどうかについても、私は確認できませんでした。確認できたのは、AIPACが巨額を投じた候補が、移民背景の候補に敗れたという事実のほうです。

※参照:The Washington Post/Al Jazeera(2026年8月4〜5日 ミシガン州上院予備選) ※参照:Bridge Initiative, Georgetown University「Civilization Jihad: Debunking the Conspiracy Theory」
そして日本——育成就労制度の「閉まらない蓋」
政策が人口を変え、人口が次の政策を決める
最初の女性の話に戻ります。
彼女は、街に人が入り、日常が変わり、警察が十分に機能せず、自分たちが逃げるしかなくなったと語りました。その個別の話をすべて事実とは言えません。
しかしスウェーデン全体では、この流れが数字と公文書に残っています。
大規模な移民受け入れ/統合の遅れ/居住地域の分離/並行社会/犯罪ネットワーク/移民系有権者の増加/政党による票田化。
最初から政治が変わるわけではありません。順番があります。
- まず人口が変わる
- 次に街が変わる
- コミュニティができ、まとまった票が生まれる
- そして既存政党が、その票を失えなくなる
そこまで進めば、移民政策は単なる人手不足対策ではありません。新しく形成された有権者層が、さらに移民を受け入れる政策を支持する。政策が人口を変え、変わった人口が次の政策を決める。自己増殖する政治構造ができます。

123万人という数字には、蓋がない
では日本はどうか。
2027年4月1日、育成就労制度が施行されます。技能実習制度に代わる新しい制度です。そして受入れ上限について、こう説明されています。
- 育成就労:2027年度からの2年間で42万6,200人
- 特定技能(19分野):80万5,700人
- 両制度合計の上限:2029年3月末までで123万1,900人
自民党内では150万人という案もあったものの、高市首相が123万人に絞ったと説明されています。
しかし、ここには重要なからくりがあります。
この123万1,900人という上限は、育成就労と特定技能1号を合わせた数です。
そして——
- 特定技能1号:通算5年が上限。家族帯同は不可
- 特定技能2号:在留期間の更新に回数制限がない。実質的に上限なし。しかも家族の帯同が可能
つまり、特定技能2号へ進んだ人は、123万人という枠の外に出るのです。
育成就労で3年働き、特定技能1号に移り、真面目に働いていれば2号へ進む。2号へ進めば枠が空き、その空いた分をまた新しい人で補充できる。
お風呂の栓が抜けたまま、蛇口から水を入れ続けているようなものです。123万人は総数の蓋ではありません。そして2号になれば本国から家族を呼び寄せられる。一人が二人、二人が五人になっていく。
欧州が直面している問題は、まさにこの「家族呼び寄せ」の積み重ねによって膨らみました。
AIによってこれから大量の失業が生まれると言われている、まさにそのときに、大量の労働力を受け入れる。私にはナンセンスとしか思えません。

誰が、日本の外国人政策を動かしているのか
そしてもうひとつ、押さえておきたいことがあります。
2026年9月17日に発足した第2次高市改造内閣には、自民党のなかで外国人政策の実務をずっと担ってきた人物が入りました。
- 山下貴司氏——法務大臣(再入閣)
- 笹川博義氏——環境大臣(初入閣)。自民党「外国人労働者等特別委員会」の事務局長
環境大臣というポスト自体は外国人政策の直接の所管ではありません。しかし、外国人政策の事務方を長く務めてきた人物が入閣したという事実のほうが重いと私は考えています(この系譜については前回の記事で詳しく書きました)。
一方、提言する側にはこういう場があります。
日本国際交流センター(JCIE)の「外国人材の受入れに関する円卓会議」です。2018年度から続いており、座長は大河原昭夫氏(JCIE理事長)、事務局長は毛受敏浩氏(JCIE執行理事)。毛受氏は『移民1000万人時代 2040年の日本の姿』(朝日新書、2026年)の著者で、今後十数年で日本の外国人人口が1,000万人規模に達する可能性を指摘し、それに合わせて社会をつくり替える必要があると主張している方です。
そして私が実際に参加者リスト(2022年度第2回会合)を確認したところ、そこにはこういう顔ぶれが並んでいました。
- JICA(国際協力機構)理事長特別補佐
- NAGOMi(外国人材共生支援全国協会)副会長
- 新経済連盟 代表理事事務局長(三木谷浩史氏の代理出席)
- 生団連(国民生活産業・消費者団体連合会)事務局長
- 自民党・立憲民主党の現職衆議院議員
提言する側と、それを受け取る側。政府、経済界、政府系機関、業界団体が、同じ円卓に並んでいます。
なお、笹川博義氏がこの円卓会議のメンバーであるという点については、私が確認できた参加者リストには名前がありませんでした。別の年度の会合に出席している可能性はありますが、現時点では確認できていません。ここも線を引いておきます。

まとめ——移民政策とは、未来の有権者を決める政策である
日本では、外国人労働者を何人入れるかという数字ばかりが議論されます。
でも、本当に考えるべきなのはその先です。
問うべきは、この四つだと私は考えています。
- どの速度で受け入れるのか
- 日本語、教育、就労、法の順守をどう確保するのか
- 特定地域への集中をどう防ぐのか
- 宗教団体や民族団体と政党の関係を、どう透明化するのか
もちろん、スウェーデンと日本は違います。歴史も制度も移民人口も違う。だから、日本が必ず同じ結末になるとは言えません。
しかし——「善意で受け入れれば、あとは自然に社会へ溶け込んでくれる」と考えるなら、あまりにも無防備です。スウェーデンが払った代償から、何も学んでいないことになります。
表層ではなく、構造を見てください。
メディアはこの問題を「人手不足」「労働力確保」として報じます。数字の話、経済の話として片付ける。しかし今日見てきたのは、そういう話ではありませんでした。
人口が変わり、街が変わり、コミュニティができ、票が生まれ、政党がその票を失えなくなる。そこまで進んだとき、移民政策はもう労働政策ではなくなっています。
Xに投稿された一人の女性の証言を、すべて事実だと断定することはできません。
しかし、街が変わり、有権者が変わり、そして政治が変わった。その流れは、数字と公文書に残っています。
そして私たち日本は、その入口に立っています。育成就労制度の「閉まらない蓋」を、どれだけの人が知っているでしょうか。帰化の条件が緩いままでよいのか、宗教団体や民族団体と政党の関係をどう透明化するのか——この議論は、まだほとんど始まっていません。
移民政策とは、労働力を何人入れるかだけの政策ではありません。その国の未来の有権者を決める政策です。

ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。
今回の内容をさらに詳しく解説した動画は、私のYouTubeチャンネルで公開しています。ぜひご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. スウェーデンから逃げてきた女性の証言は、事実なのですか?
個々の事件は確認できません。この話はXに投稿されたもので、投稿者が通訳を介して聞き取った内容をまとめた二次情報です。町の名前も日付も警察記録もなく、犬の事件も住宅を奪われたという事件も裏づけが取れません。ですからこの投稿だけで「スウェーデン全土がこうなった」と断定するのは無理です。ただし、住民が警察に協力できない地域の存在、並行社会、銃撃の集中、出生背景別の犯罪容疑率の差は、スウェーデン政府自身の公的資料で確認できます。「全部作り話」でも「全部その通り」でもなく、実態はその間にあります。
Q2. 「脆弱地域」というのは、移民が多い地域という意味ですか?
違います。スウェーデン警察庁の定義では、低い社会経済状況に加えて、犯罪者が地域社会へ強い影響を及ぼしている地区を指します。住民が報復を恐れて被害を届けず、証言もせず、警察が通常どおり活動できない地域です。最も深刻な「特に脆弱な地域」の定義には、並行社会、宗教的原理主義による自由の制限、証人への組織的な脅迫、警察活動の著しい困難が含まれます。最新報告では全国65か所(前回59か所)ですが、この増加には一つの地区を複数に分けた「技術的な増加」も含まれ、全体傾向はわずかながら改善である点も、公平に押さえておく必要があります。
Q3. ムスリム同胞団の「五段階の浸透計画」という文書は実在するのですか?
文書は実在しますが、「五段階の計画」という中身ではありません。しばしば引用されるのは1991年5月22日付の「説明覚書(An Explanatory Memorandum)」で、筆者はモハメド・アクラム。2004年にFBIがバージニア州の民家で押収し、2007年のホーリーランド財団裁判で証拠として提出されました。ただし、この文書がムスリム同胞団によって正式に採択された計画だとは確認できず、2009年に担当判事は共謀を裏づける証拠とは認めませんでした。そして文書自体に、段階を五つに整理した浸透計画は書かれていません。文書の存在は事実、公式方針だったという評価は確認できない——ここを分けて扱う必要があります。
Q4. 育成就労制度の「上限123万人」があれば、際限なく増えることはないのでは?
その123万人は、総数の蓋ではありません。内訳は育成就労42万6,200人+特定技能(19分野)80万5,700人=123万1,900人(2029年3月末まで)で、これは育成就労と特定技能1号を合わせた数です。特定技能1号は通算5年が上限で家族帯同は不可ですが、特定技能2号は在留期間の更新に回数制限がなく、家族の帯同も可能です。つまり2号へ進んだ人はこの上限の外に出て、空いた枠は新たな受け入れで埋められます。さらに2号になれば本国から家族を呼び寄せられる。欧州が直面している問題は、この家族呼び寄せの積み重ねによって膨らみました。

