AfDは本当に「ナチ」なのか──43.8%という数字と、外国人が少ない地域ほど強いという逆説

こんにちは。金子吉友です。

2026年9月6日、ドイツのザクセン=アンハルト州議会選挙で、AfD(ドイツのための選択肢)が大勝しました。

日本のメディアは「ドイツ極右ショック」という見出しをつけています。

ですが、考えてみてください。 本当に「極右政党」が、有権者の44%近くから票を集められるものでしょうか。

そしてもしそうだとしたら、その州の有権者の44%は「ナチ」なのでしょうか。

今日は3つのことをお話しします。

  • なぜ44%近い有権者がAfDを選んだのか
  • 欧州の右派政党の躍進を、私が諸手を上げて喜べない理由
  • そして日本は、この現象をどう受け止めるべきなのか

先に申し上げておくと、この話は「ドイツにナチが復活した」という一言で終わらせられるような、単純な話ではありません。

その前に、日本の報道について一つだけ申し上げます。

「極右」という訳語は、アメリカのメディアが使う「far-right」をそのまま置き換えたものです。 その言葉が現地でどういう政治的な機能を果たしているのか、誰がどんな意図で使っているのか。そこを検証せずに、レッテルだけを輸入して見出しにしている。

世界情勢を追っている人間からすると、これは相当に雑な仕事です。 そして厄介なのは、この一語で読者の思考が止まってしまうことなんです。「極右が勝った」と聞いた瞬間に、なぜ勝ったのかを考えなくなる。 今日はそこを、一つずつ解いていきます。

今日の見取り図
目次

ザクセン=アンハルト州で何が起きたのか

ザクセン=アンハルト州選挙でAfDが43.8%を獲得

舞台は旧東ドイツに位置する、人口約210万人のザクセン=アンハルト州です。

  • AfDの得票率は43.8%。83議席のうち39議席を獲得
  • 単独過半数は42議席なので、あと3議席というところまで来ました
  • 前回2021年の選挙では、AfDの得票率は20.8%。5年でほぼ倍になった
  • 一方、これまで州政治の中心にいたCDU(キリスト教民主同盟)は、37%台から17.2%へ大暴落しました

44%が、突然ナチになったのでしょうか

郵便投票との大きな差について

ここで一つ、触れておかなければならない点があります。

今回の結果を、投票所に直接足を運んだ票と、郵便投票とで分けて見ると、かなりの差が出ているんです。

  • 投票所での投票では、AfDの得票率が50%を超えた。投票に行った人の2人に1人以上がAfDに入れた計算です
  • ところが郵便投票になると、得票率は一気に20%台まで落ちる

この差を見て、X上では「これは不正ではないか」「AfDを落とすための不正選挙だ」という声が上がっています。 正直に言えば、そう言われてもおかしくないギャップではあります。

ただし、私はこの点を追いません。

AfDは支持者に対して「郵便投票ではなく、直接投票所へ行け」とずっと言い続けてきた政党です。 ですから郵便投票での比率が下がること自体は、ある程度は説明がつきます。

そしてこれ以上は、いくら言っても根拠がありません。証拠のない話を積み上げても意味がないので、ここはスルーします。

44%が突然ナチになったのかという問い

そして注目すべきは投票率です。

約78%。日本では考えられない数字です。そこに住んでいる人のおよそ5人に4人が投票所に行っている。

これが何を意味するか。

一部の過激な支持者だけが投票所に押し寄せて起きた異常な数値ではない、ということです。

有権者が広く参加したうえで、43.8%という結果が出ている。 ならば問うべきは「彼らはナチなのか」ではなく、「なぜ4割を超える有権者がこの政党を選んだのか」のはずです。

これは一部の過激派の数字ではない

一部の過激派の数字ではないことを示す図解

今回の選挙を戦ったのが、ウルリッヒ・ジークムント氏。35歳の州首相候補です。TikTokなどSNSを非常にうまく使う政治家です。

この結果を受けて、AfD共同党首のアリス・ヴァイデル氏は「歴史的だ」「センセーショナルな結果だ」と述べ、明確な政権担当の委任を受けたという形で語っています。

これは誇張ではなく、戦後ドイツ政治にとって極めて大きな地殻変動です。

35歳の州首相候補ジークムントと党首ヴァイデルの宣言

Brandmauer(防火壁)が問われ始めた

Brandmauer防火壁が問われ始めた構図

なぜ地殻変動なのか。ドイツには「Brandmauer(ブラントマウアー/防火壁)」と呼ばれる暗黙の合意があるからです。

AfDとは連立を組まない。協力もしない。 CDUも、SPDも、緑の党も、「AfDだけは絶対に組まない」という一線を守ってきました。

この仕組みの下では、得票率が30%だろうが35%だろうが、連立相手がいなければ政権は取れません。それがドイツ政治の常識でした。

ところが今回、州レベルとはいえ43.8%、39議席。ほぼ過半数です。

防火壁が、機能しなくなり始めている。

イーロン・マスクまで参戦

イーロン・マスクの投稿と論争への参戦

この選挙結果には、イーロン・マスク氏も反応しました。

選挙当夜、ヴァイデル氏がジークムント氏の勝利を祝う投稿をすると、マスク氏はドイツ語で「Gut gemacht!(よくやった)」と返信しています。

マスク氏は以前からAfDを支持しており、8月にも「AfD is the only hope for Germany(AfDこそドイツ唯一の希望だ)」と投稿していました。

さらに興味深いのが、ウォール・ストリート・ジャーナルへの噛みつきです。 同紙が今回の結果を「第二次世界大戦後のドイツで初めての極右政権になる」という趣旨で報じたのに対し、マスク氏はこう返しました。

「They’re not far right, you knuckleheads!(彼らは極右なんかじゃない、このま抜けども)」

この点については、まともな指摘だと私は思います。

これは「言葉をめぐる戦争」だ

これは言葉をめぐる戦争だという図解

いま起きているのは、選挙戦だけではありません。 言葉をめぐる戦争です。

  • メディア側は、AfDを「極右」と呼ぶ
  • ドイツの情報機関も、ザクセン=アンハルト州のAfD組織を「確実に右翼過激派」と評価しています
  • 一方AfD側は、自分たちは普通の保守であり、常識的な政策を言っているだけだと主張する。むしろ今までのドイツのほうが過激なのだ、と

では、どちらが正しいのか。

私は、「極右」というラベルからいったん離れて、AfDが実際に何を主張しているのかを見る必要があると思います。

AfDの移民政策は、実際どうなっているのか

AfDの移民政策の実際の中身

AfDの2025年連邦議会選挙の綱領には、「庇護・移民政策の転換」という項目があります。具体的な内容はこうです。

  • 国境の管理を強化する
  • 違法入国者を国境で拒否する
  • 滞在資格のない外国人を送還する
  • 犯罪者、危険人物、過激派について送還を優先する
  • 庇護申請はドイツ国外の施設で処理する
  • EUの移民政策や、国連の移住グローバル・コンパクトから距離を置く
  • 帰化制度を厳格化する

率直に申し上げて、移民問題についてはまともな政策ばかりです。これのどこが極右なのでしょうか。

Remigration(リマイグレーション)をめぐる論争

Remigrationをめぐる論争と定義の区別

ただし、AfDが重要な言葉として使っているものがあります。「Remigration(リマイグレーション/再移住・帰還送還)」です。

AfD中央執行部は2024年に正式な文書を出して、こう定義しています。

「出国義務のある外国人を、法治国家の原則と法律に従って本国へ戻す措置」

追い出すという話ではない。移民の排斥でもない。法律に従う、と言っているわけです。

ところが、この言葉自体がマルティン・ゼルナー氏ら欧州のアイデンティタリアン運動が使ってきた概念と重なっているため、批判する側は強い警戒を示しています。

対象が将来的に、合法的に暮らしている移民、場合によってはドイツ国籍を取得した元移民の住民にまで広がるのではないか、と。

ここは厳密に区別しなければなりません。

AfDの公式文書で確認できる政策と、批判者が懸念している将来的な構想は、まったく別のものです。「Remigrationは合法移民やドイツ国籍者まで追い出す政策だ」というのは、AfDの公式の定義ではありません。

もう「極右だけの政策」ではない

もう極右だけの政策ではないことを示す図解

そして、ここが決定的です。

国境管理、犯罪外国人の送還、庇護制度の厳格化。 これは現在、AfDだけが言っている政策ではありません。

つい先日お伝えしたとおり、9月4日にコペンハーゲンで、ドイツ、オーストリア、デンマーク、オランダ、ギリシャの5か国が集まりました。 議題はReturn Hub——庇護申請を拒否されたのに母国へ送還できない外国人などを、EU域外の第三国へ移送するための拠点です。

この5か国は共通のモデルについて合意し、2027年中にも最初の移送を始めたいとしています。

重要なのは、これを言っているのがAfDではないということです。ドイツ政府を含むEU加盟国の政府が、実際にReturn Hubを作ろうとしている。

数年前なら「極右の政策だ」と切り捨てられていた考え方が、ヨーロッパの主流政府の政策になり始めている。

つまり極右が動いたのではなく、ヨーロッパ政治の中心線そのものが移動している。これは私の整理です。 だとすれば、線引きはどこで済んだのでしょうか。

外国人が少ない地域ほど、AfDが強い

外国人が少ない地域ほどAfDが強いという逆説

私はもともと、AfDが支持されているのは移民問題が理由だろうと考えていました。ところが調べていくと、そんな単純な話ではなかったんです。

非常に興味深い現象があります。

ドイツ東部は、西部に比べて外国人比率が非常に低い。 ところがAfD支持は、西部より東部のほうが圧倒的に高いんです。

ドイツ経済研究所(DIW Berlin)が2026年7月に出した分析では、2025年連邦議会選挙の東部について、外国人比率が低い地域ほど、むしろAfDの得票率が高いという傾向が確認されています。

つまり「町に移民が大量に増えたからAfDに投票した」という話ではない。 むしろ自分たちの国がこれ以上変わってほしくないという文化的な不安、あるいは予防的な反応が存在している可能性がある、ということです。

なお、この分析は相関であって、個々の有権者の因果関係を証明するものではありません。そこは正確に。

Same Seeds, More Fertile Ground

Same Seeds More Fertile Groundの研究結果

そして2026年7月、学術誌『German Politics』に非常に興味深い研究が掲載されました。

シュテフェン・カイリッツ氏とズザンネ・リップル氏の研究で、タイトルが『Same Seeds, More Fertile Ground(同じ種、より肥沃な土壌)』。ドイツ東部でAfDが強い理由を、3つの角度から分析しています。

  • 経済的な不利益
  • 政治的な疎外
  • 文化的な反発

では、この中で何がいちばん強かったか。

単純な所得の低さではありませんでした。もっとも強い説明力を持っていたのは「政治的な疎外感」です。

ドイツの政治家は我々の声を聞いていない。いまの民主主義は自分たちを代表していない——そういう感覚が強い。

そこに移民などをめぐる文化的な反発が重なる。 この二つが、純粋な経済的不満よりも強い説得力を持っていたということです。

統一から36年、消えない「二級市民」意識

統一から36年たっても残る二級市民意識

さらに東部特有の感覚があります。自分たちは二級市民として扱われている、という意識です。

東西ドイツの統一は1990年。36年が経ちました。 しかし政治的な意味では、統一はまだ終わっていないというところでしょう。

  • 旧東ドイツでは統一後、国営企業が次々と民営化され、大量の失業が発生した
  • 多くの若者が西部へ移動し、地域によっては人口が減少した
  • 企業の本社、金融、メディア、大学、政治、文化。重要なポストは依然として西部出身者が多い

「統一したというけれど、結局、西ドイツの制度に東ドイツが吸収されただけではないか」——その感覚を、いまも持っている。

だからAfDへの支持は、単に生活が苦しいからというだけではありません。 自分たちの人生や歴史を西側のエリートから否定されてきた、という集団的な記憶とつながっている。

そして——ベルリンのメディアから「AfDに投票する人間は民主主義を理解していない」と言われれば言われるほど、また西側から説教されているという反発が強くなり、疎外感が強まる。

ロシアとウクライナ──東西の断絶

ロシアとウクライナをめぐる東西の断絶

もう一つ、対ロシア政策があります。

旧東ドイツは、冷戦時代はソ連側の陣営でした。ですからロシアに対する歴史的な感覚が、西ドイツとはまったく違います。

ロイターも今回の選挙前に、ドイツ東部ではロシアを西部ほど単純な敵と見なしていない人が多いこと、そしてAfDの「ロシアとの経済・文化関係を再開する」「ウクライナ支援をやめる」という主張が支持される背景を報じています。

共同党首のヴァイデル氏は、こう述べています。

  • ウクライナ戦争はドイツの国益にならない
  • ドイツの国益はロシアとウクライナの和平である
  • 兵も武器も送らない
  • 第二次世界大戦後、再びドイツの戦車がロシアへ向かうことは恥である

歴史に訴えるこの言い方が、東部ではかなりの共感を生みます。

さらにエネルギー問題です。 AfDはノルドストリームの修復、ロシアとの経済関係の正常化、原子力政策の復活、CO2税と現在のエネルギー転換の見直しを訴えています。

すべては、一つの問題につながっている

すべてが一つの問題につながっている構図

移民、エネルギー、ロシア、ウクライナ、EU。

これらは別々の争点ではありません。

AfDの支持者から見れば、すべては「ベルリンとブリュッセルのエリートたちが、自分たちの生活を無視して決めている」という一つの感覚につながっているんです。

BSWとの数合わせと、ジークムントの拒否

BSWとの数合わせとジークムントの拒否

今回の選挙で、興味深い動きがありました。

BSW(ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟)という左派政党があります。 リベラル系でありながら、移民については厳格な制限を主張し、ウクライナへの武器供与に反対し、ロシアとの外交交渉を重視する。エネルギー政策でもAfDと重なる部分があります。

そのBSWが今回5議席を獲得しました。

AfDの39議席と合わせれば44議席。過半数の42を超えます。 BSW側からもAfDと個別政策で協力する意思があるという趣旨の発言が出ています。

ところが——州首相候補のジークムント氏は、これを拒みました。

「Gewurschtel(ごちゃごちゃした政治)」になってしまう、と。連立は組まない。単独で行く。権力ゲームのために自分たちの価値や政策を曲げるつもりはない、というわけです。

さらに「単独で取れないなら、もう一度選挙をやればいい。その時はAfDが50%、55%を取る」とまで言っています。相当な自信です。

ただしAfD内部にも温度差があり、ヴァイデル氏やティノ・クルパラ氏ら連邦指導部には、BSWとの協力に前向きな発言をしている人もいます。

これから何が生まれるかは、まだ分かりません。 ただ一つ確実なのは、防火壁によってAfDを永遠に政治から排除するというモデルが、43.8%という数字によって半分なくなりつつあるということです。

これはドイツだけの現象ではない

ドイツだけの現象ではないことを示す欧州全体の図

視野をヨーロッパ全体に広げます。

右派政党の伸長は、ドイツだけではありません。

  • イギリスのリフォームUK
  • フランスの国民連合
  • オランダのヘルト・ウィルダース氏の自由党(PVV)
  • オーストリアの自由党(FPÖ)
  • ハンガリーのフィデス
  • スペインのVox
  • そして欧州議会の右派会派「Patriots for Europe(欧州のための愛国者)」

国によって政策は違いますから一括りにはできません。ですが共通するものがあります。

移民問題、イスラム主義への警戒、国家主権、EU中央集権への反発、グリーン政策への反発、自国文化とアイデンティティの回復。

つまり、反グローバリズムあるいは主権回復の政治です。

私は今回の43.8%という得票率を、この流れが「抗議票」という段階を超えつつあるサインだと受け止めています。実際に政権を取ることが現実の選択肢になる段階に入った。これは私の見方です。

そしてこの伸長そのものは、私は自然な成り行きだと思っています。

大量の移民によって、ヨーロッパは文化的にかなり深いところまで変わってしまった。行き過ぎたグリーン政策で産業が痛めつけられた。ウクライナ紛争でロシアと敵対し、エネルギー価格が高騰した。 生活が壊れた側が、既成政党から離れていく。これは当たり前の話です。

問題は、その当たり前の反発が向かった先で、何が起きているかです。

ただし、イスラエルとの接近が気になります

イスラエルと欧州右派の接近

ここで、この数回にわたってお伝えしてきた話とつながります。

ネタニヤフ政権は、ここ数年で欧州の右派・ナショナリスト政党との関係を急速に強めています。

2026年1月には象徴的な出来事がありました。 オーストリア自由党(FPÖ)のハラルト・ヴィリムスキー氏がエルサレムを訪れ、ネタニヤフ首相と約45分間、公式に会談したのです。 FPÖ自身が「党史上初めてイスラエル政府と首相から公式に迎えられた」と発表しています。

FPÖは党の歴史的ルーツをめぐって、長年イスラエル側が距離を置いてきた政党でした。 それを事実上、解禁したということです。

背景にある共通項は、急進イスラム過激派への警戒、そしてリベラル左派・国際機関・人権団体への不信です。

  • イスラエルからすれば、欧州右派が政権を取ればEUでイスラエルに批判的な決定を止めてくれる可能性がある
  • 欧州右派からすれば、イスラエルとの関係は「反ユダヤ主義」「ネオナチ」「ファシスト」というレッテルへの政治的な防御になる

双方の利害が一致しているわけです。

AfDは、まだ「解禁」されていない

AfDはまだイスラエルに解禁されていない

ただしAfDについては、少し特殊です。

現時点で、イスラエル政府はAfDをまだ正式には解禁していません。

  • 駐独イスラエル大使のロン・プロソール氏は、AfDには「ユダヤ国家が対話できない要素が存在する」という趣旨の発言をしています
  • 2025年のイスラエル政府主催の反ユダヤ主義会議には、国民連合など欧州右派の政治家が招かれました。しかしAfDは招かれませんでした
  • ディアスポラ問題担当大臣のアミハイ・チクリ氏は、ヴァイデル氏本人については「反ユダヤ主義的な発言を聞いたことはない」という趣旨で比較的肯定的に評価しています
  • 一方で、ビョルン・ヘッケ氏やマクシミリアン・クラー氏など党内の別の人物については、強い警戒を示している

つまりイスラエル側も、AfDを一枚岩として見ていないということです。

「もう手を組んだ」と言うのは早い

もう手を組んだと言うのは早いという留保

ヴァイデル氏自身は、かなりイスラエル支持を強調する政治家です。 特に「ドイツでユダヤ人を脅かしているのは、イスラム系移民が持ち込む反ユダヤ主義だ」という論法を使っています。

ですから将来、イスラム主義への対抗、西洋文明の防衛という共通テーマによって、イスラエル政府とAfDの距離が縮まる可能性は十分にあります。

しかし——現時点で「イスラエルとAfDはもう手を組んだ」と言うのは早い。ここははっきり区別しておきます。

私が言いたいのは、FPÖという前例ができたということ。そしてAfD側にも接近を可能にする条件があるということです。

私は、反グローバリズム政党が伸びたからといって、その政党の外交政策まで全部正しいとは思いません。ここは一つ一つ見なければいけない。

欧州は引き返し、日本は進もうとしている

欧州は引き返し日本は進もうとしている構図

そして最後に、日本です。

いまヨーロッパでは、大量移民を経験した国々が次々と政策を修正しています。 デンマーク、ドイツ、オーストリア、オランダ、ギリシャ。EU域外にReturn Hubを作って、送還対象者を国外へ移す仕組みまで作ろうとしている。

そしてドイツでは、移民政策を最も激しく批判するAfDが、一つの州とはいえ43.8%を取った。

一方、日本はどうでしょうか。

政府は人手不足を理由に外国人材の受け入れを拡大し、地方自治体まで海外へ行って獲得する時代になり始めています

誤解のないように申し上げます。 私は、外国人そのものが悪いなどと言っているわけではありません。問題はそこではない。政策の順番です。

順番が、逆ではないか

順番が逆ではないかという問い

ヨーロッパはこの問題を、少なくとも10年、20年、先に経験しました。

移民受け入れによる経済的メリットも経験した。同時に、統合、住宅、教育、社会保障、治安、宗教、文化摩擦、並行社会、政治的分断。これらの問題も経験した。そしていま、政策を修正し始めている。

だったら日本は、ヨーロッパの失敗も成功も全部研究して——

  • どういう人数なら統合できるのか
  • 誰を受け入れるのか
  • 家族帯同をどうするのか
  • 帰化をどうするのか
  • 社会保障をどうするのか
  • 文化・言語への適応をどう求めるのか
  • 違法滞在者をどう送還するのか

ここまで制度を作ってから、受け入れを拡大するのが普通でしょう。

ところが日本は、まず「人が足りない」「外国人材に来てもらおう」というところから始めている。

これ、順番が逆ではないですか。

まとめ──ラベルを貼っても、政治は理解できない

ラベルを貼っても政治は理解できないというまとめ

最後に、公平な事実認識から始めます。

AfDの中に、問題のある発言をする政治家が存在することは事実です。 ドイツの情報機関が、ザクセン=アンハルト州の党組織を「確実に右翼過激派」と評価していることも事実です。

ですから私は、「AfDは何も問題のない普通の保守政党だ」とも言いません。

しかし一方で——有権者の43.8%が、なぜこの政党に投票したのか。

そこを見ずに「極右」「ファシスト」「ナチ」というラベルだけを貼っても、政治は理解できません。

私は今回の結果を見て、「ドイツにナチが復活した」という一言で終わらせる気にはなりません。そんな単純な話ではないからです。

表層ではなく、構造を見てください。そして、誰が得をするのかで見てください。

今回の選挙から見えてくるのは、大量移民への反発、EUへの不信、ウクライナ戦争への反発、エネルギー政策への不満。 そして何より——「自分たちの声を、既成政治が聞いてくれない」という巨大な政治的疎外です。

だからこそ、AfDは43.8%まで来た。

私は、国家主権や国境、文化的アイデンティティをもう一度見直そうという動きについては、基本的に非常に重要な流れだと思っています。 ただし、だからといって欧州右派がどの国と組むのか、どんな外交政策を取るのかまで、無条件に支持することはできません。

そして私たち日本は、どうすべきか。

ヨーロッパがいま必死になって引き返そうとしている道を、なぜ日本はこれから進もうとしているのか。私にはこれが本当に理解できません。

他国が20年かけて払った授業料を、日本がもう一度、最初から払い直す必要なんてないでしょう。 ヨーロッパの「いま」を見れば、日本の10年後、20年後を考える材料はいくらでもあります。

そして忘れてはいけないのは、ドイツで起きたことの本質が「移民が増えたから反発が起きた」ではなかったということです。 もっとも強かったのは「自分たちの声を、既成政治が聞いてくれない」という疎外感でした。

その感覚に、日本はまったく無縁でしょうか。 移民政策の転換も、制度の設計も、国民的な議論を経ないまま進んでいる。そこで積み上がるものは、ドイツで積み上がったものと、そう変わらないのではないかと思います。

真の独立とは、真の主権とは、何か。 今回のドイツの選挙結果を、単なる遠い外国の地方選挙としてではなく、これから日本がどんな国になるのかを考える警告として見るべきだと、私は思います。

ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。

今回の内容をさらに詳しく解説した動画は、私のYouTubeチャンネルで公開しています。ぜひご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. AfDは「ナチ」なのですか?

「ドイツにナチが復活した」という単純な話ではありません。 ただしAfDの中に問題のある発言をする政治家が存在することも、ドイツの情報機関がザクセン=アンハルト州の党組織を「確実に右翼過激派」と評価していることも、事実です。 「何も問題のない普通の保守政党」とも言えません。重要なのは、ラベルではなく実際の政策と、43.8%という支持の理由を見ることです。

Q2. Remigration(リマイグレーション)とはどんな政策ですか?

AfD中央執行部が2024年の公式文書で「出国義務のある外国人を、法治国家の原則と法律に従って本国へ戻す措置」と定義したものです。 ただしこの言葉がアイデンティタリアン運動の概念と重なるため、批判側は対象が合法移民やドイツ国籍取得者にまで広がることを警戒しています。 AfDの公式定義と、批判者が懸念する将来的な構想は、別のものとして区別する必要があります。

Q3. なぜ外国人が少ない東部のほうがAfDが強いのですか?

ドイツ経済研究所の2026年7月の分析では、東部では外国人比率が低い地域ほどAfDの得票率が高い傾向が確認されています。 『German Politics』誌の研究では、経済的不利益・政治的疎外・文化的反発のうち、もっとも強い説明力を持ったのは「政治的疎外」でした。 統一から36年経ってなお残る「二級市民」意識が、その疎外感を強めています。

Q4. イスラエルとAfDは手を組んだのですか?

いいえ。現時点でイスラエル政府はAfDを解禁していません。 駐独イスラエル大使は「ユダヤ国家が対話できない要素が存在する」と述べ、2025年の反ユダヤ主義会議にもAfDは招かれませんでした。 ただしオーストリア自由党のヴィリムスキー氏が2026年1月にネタニヤフ首相と公式会談したという前例ができており、AfD側にも接近を可能にする条件はあります。

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

反DS歴史研究者、調査ジャーナリスト。YouTube『あつまれニュースの森』(登録者10万人)にて反グローバリズムの視点で世界情勢・国内政治を解説。

本業だったコンサルタントから徐々に歴史研究にシフトしていく。日々リサーチする中、メディアや歴史が嘘だらけであり、この世界が一部の権力機構によって支配されてきたことに強烈な違和感と憤りを覚えるようになる。

グローバリズムの根源と実態を徹底的に研究。その歴史を旧約聖書まで遡り、現在のいわゆるディープステートのルーツがユダヤ系とアングロサクソン系の2系統にあることを突き止める。

2021年、YouTubeを開始し、グローバリストのルーツを徹底解剖するオンラインサービス『金子ゼミ』を立ち上げる。

グローバリストにより”修正”された歴史を”修復”する「歴史復元主義」を根本理念とする。

情報発信者としての信条は「左も右もない反グローバリズム・国益第一主義」「不偏不党」。

目次