こんにちは。金子吉友です。
ネタニヤフ首相が、新しい同盟構想を動かし始めています。
その名を「ヘキサゴン(六角形)」。イスラエルを中心に、六つの方角へ同盟のネットワークを広げるという構想です。
そして今回、その六角形の一辺が——構想ではなく、具体的な兵器体系として形になりました。
さらに面白いのが、ネタニヤフ首相が名前を挙げた国と、あえて伏せた国があることです。
インド。ギリシャ。キプロス。ここまでは名前が出ています。アラブ諸国とアフリカ諸国も、おおよそ見当がつきます。 ところが「アジア諸国」だけは、いまも国名が伏せられたままなんです。
そのアジアの国とは、いったいどこなのか。 今日はそこまで含めて見ていきます。

8月31日、「アキレスの盾」──30億ユーロの防衛契約

まず、直近で起きた大きな動きからです。
2026年8月31日、イスラエルとギリシャが、非常に大きな防衛契約に署名しました。
その名も「アキレス・シールド(アキレスの盾)」。
- 金額は約30億ユーロ。日本円でざっくり換算すると、5,500億円規模です
- イスラエルとギリシャの防衛輸出契約としては史上最大。イスラエルの歴史全体で見ても、最大級の防衛輸出契約です
- 署名したのは、イスラエル側が国防省事務総長のアミール・バラム氏、ギリシャ側が国防投資・軍備総局のイオアニス・ブーラス氏
では、イスラエルは何を売るのか。ここが決定的に重要です。
ギリシャの防空システムを「丸ごと」構築する

これは、単なるミサイルの購入ではありません。
イスラエルが、ギリシャという国家の防空システムそのものを構築するという契約です。
中核となるのは、ダビデ・スリング、SPYDER(スパイダー)、IAI(イスラエル航空宇宙産業)のBARAK MX、そしてMMR多目的レーダー。さらに重要なのが、国家レベルの指揮統制システムまでイスラエルが構築するという点です。
つまり——レーダーで敵を発見し、脅威を分析し、どの迎撃システムを使うかを判断し、実際に迎撃する。この一連の防空アーキテクチャを、イスラエル製のシステムで統合するということです。
ギリシャの防空を、丸ごとイスラエルにアウトソーシングする。そういう話なんです。
イスラエル国防省自身が、こう説明しています。「弾道ミサイル、航空攻撃、無人機など幅広い脅威に対応する完全な防衛アレイ(array)を外国に提供するのは初めてだ」と。
この「アレイ」という言葉が面白いんです。 ヘブライ語の「マアラフ」を英語に置き換えたもので、意味は「一式そろって機能する体系」。部品でもなければ、一つの兵器でもない。体系ごと提供するということです。
そして、これだけではありません。
2026年4月には、すでにPULS多連装ロケットシステムをギリシャへ供給する契約が結ばれています。こちらは約6億5,000万ユーロ。
4月に長距離攻撃能力、8月に国家レベルの防空能力。この二つを合わせて見る必要があります。攻撃と防御の双方で、ギリシャのイスラエル製システムへの依存が深まったということです。
なぜイスラエルとギリシャなのか──東地中海を横断する一本の線

では、なぜギリシャなのか。地図を見てください。
イスラエル、キプロス、ギリシャ。この3か国を線で結ぶと、東地中海を横断する一本のラインができます。
この3か国の協力は、今に始まった話ではありません。 2010年代から、天然ガス、電力、海底ケーブル、安全保障、軍事演習などで協力を深めてきています。
そして、この背景でどうしても無視できない国があります。トルコです。
- ギリシャとトルコの間には、領海やキプロス、海洋権益をめぐる長年の対立があります
- 一方、イスラエルとトルコの関係も、かつては非常に近かった。ところが2009年から2010年頃を境に、大きく悪化していきます
もちろん、イスラエル・ギリシャ・キプロスの側が、この協力を公式に「反トルコ同盟」と呼んでいるわけではありません。
しかし地政学的に見れば、トルコの南側に、イスラエル・キプロス・ギリシャという連携軸がすでに形成されている。 この構図は非常に重要です。
2026年2月22日、閣議で語られた「六角形」

さて、ここで時計を今年の2月に戻します。
2026年2月22日、ネタニヤフ首相は閣議の冒頭で、非常に興味深い構想を明らかにしました。
まず彼は、イスラエルとアメリカの同盟は「歴史的かつ特別である」と強調します。 しかしその上で、こう述べました。
アメリカとの同盟があるからといって、他の同盟を求めないわけではない。むしろ積極的に作っている。
そこで出てきたのが「ヘキサゴン」です。
中東の周辺、あるいは中東内部に、六角形の同盟システムを作るという構想。具体的に挙げたのが、この6つです。
- インド
- アラブ諸国
- アフリカ諸国
- 地中海諸国(ギリシャ・キプロス)
- そして「今は詳しく説明しない」アジア諸国
- 中心に、イスラエル自身
ここで、正確に押さえておくべき点があります。
これは6か国によるNATOのような条約機構では、まったくありません。イスラエルをハブとして、複数の国や地域を結びつけるネットワーク構想だと考えるのが、現時点では正確です。
実際、いまのところヘキサゴンに加盟した国はありません。署名した国もない。ネタニヤフ首相が示した外交・安全保障上の構想です。
ちなみに英語の正式名称は「Hexagon of Alliances」。 私は最初、これはAIの誤訳かと思いました。 語順としては「同盟の六角形」となってしまうので、おかしいのではないかと。
ところが調べてみて分かりました。 ネタニヤフはこの「六角形」を強調しているんです。六角形が主体であって、そこは譲らない。
なぜなら六角形は、イスラエルの象徴だからです。国旗にもある六芒星。「6」という数字は、イスラエルにとって非常に重要なんですね。
そしてネタニヤフ自身は、ヘキサゴンの目的をこう説明しています。
「急進的シーア派枢軸と、急進的スンニ派枢軸に対抗する国々の軸を形成すること」
シーア派枢軸とは、イランやヒズボラ、イエメンのフーシ派などです。 そしてスンニ派枢軸とは、サウジアラビアとパキスタンの防衛協定、そして先日成立したメッカ共同防衛協定、さらにエジプトが加わるSTEP構想を指しています。
つまり、その双方に対抗するための構想だということです。
第一の柱はインド──IMECと重なる地理

この構想の中で、国名が単独で出てくるのがインドです。これは偶然ではありません。
ネタニヤフ首相がヘキサゴン構想を語ったわずか数日後、2026年2月25日から26日にかけて、インドのモディ首相がイスラエルを訪問しています。
イスラエルにとってインドは、もはや単なる武器の輸出先ではありません。
防衛、AI、サイバー、量子技術、重要鉱物、農業、水、貿易、物流。非常に広い領域で関係が深まっています。 しかも約14億人という巨大市場を持ち、地理的にも決定的に重要です。
ここで思い出していただきたいのが、IMEC(インド・中東・欧州経済回廊)です。 インドから中東のUAE、そしてイスラエル、地中海からヨーロッパへ——この巨大物流構想と、ヘキサゴン構想の地理が、きれいに重なってくるんです。
ただし、注意点があります。
インドは「ヘキサゴンに加盟します」と宣言していません。 インド外交は伝統的に戦略的自立性を重視する多方面外交です。イスラエルとも協力する。アメリカとも協力する。しかしロシアとも付き合う。イランとも関係を維持する。そして上海協力機構(SCO)にも加盟している。
これがインドの独自外交です。
アラブ側の本命はUAE──I2U2という既存の枠組み

では、ネタニヤフ首相が言った「アラブ諸国」とはどこか。
もっとも有力なのはUAE(アラブ首長国連邦)です。
2020年のアブラハム合意以降、イスラエルとUAEの関係は急速に緊密になってきました。外交だけでなく、貿易、投資、技術、安全保障。あらゆる面でです。
そしてインドを加えた「I2U2」(インド・イスラエル・UAE・アメリカ)という枠組みが、すでに存在します。 つまりインド、イスラエル、UAEは、別の枠組みでもすでにつながっている。
ですからUAEは、ヘキサゴンのアラブ側としてもっとも自然な候補です。その次がバーレーン。この国もアブラハム合意に参加しています。
ただし——現時点でUAEやバーレーンがヘキサゴンの加盟国として公式に確認されたわけではありません。既存の関係から見た有力候補、というところまでです。
アフリカ側はソマリランド──紅海の入り口を押さえる

そして、非常に面白いのがアフリカです。
2025年12月26日、イスラエルはソマリランドを独立国家として正式に承認しました。 国連加盟国としては、初めての承認です。
ソマリランドは、ソマリアからの分離独立を掲げている地域です。世界でこの国を国家承認した国は、まだ10か国に満たない。そこにイスラエルが真っ先に手を挙げたわけです。
なぜイスラエルが、わざわざここまで踏み込むのか。地図を見ると分かります。
- ソマリランドの北側にはアデン湾があり、その先にバブ・エル・マンデブ海峡があります
- 対岸はイエメン。つまりフーシ派の活動拠点の、真向かいに位置しているんです
- 紅海からスエズへ向かう、世界有数の海上交通路。その入り口にあるのがソマリランドであり、そこにはベルベラ港があります
- このベルベラ港には、UAEの港湾大手DPワールドが以前から巨額の投資を行っています
そしてもう一つ。 DPワールドの会長は、エプスタイン文書に何度も名前が登場した人物で、エプスタイン問題が浮上してから辞任しています。
UAE、ソマリランド、イスラエル、バブ・エル・マンデブ海峡、そしてイエメンのフーシ派。 これらを1枚の地図の上に置くと、まったく違う景色が見えてきます。
ただし、ここは断定してはいけません

重要なので明確にしておきます。
イスラエルは現在、ソマリランドの警察や軍に訓練を提供しています。 ですが、イスラエル軍の基地が建設されたという発表はありません。そういう事実は公表されていない。
むしろ2026年6月の時点で、ソマリランドの国防大臣が「イスラエル軍基地について交渉も計画もない」とロイターに明言しています。
ですから「イスラエルがソマリランドに基地を作った」とは断定できません。 ただし、UAEのDPワールドが巨額投資を行い、軍事要塞化しているという情報はある。そこまでです。
伏せられた「アジアの国」はどこか──候補は2つ

さて、ここからが今日いちばん興味深い点です。
ネタニヤフ首相は、インドの名前を出している。ギリシャ・キプロスも出している。アラブ、アフリカも名指ししている。 ところがアジアの国だけは、国名を伏せているんです。
では、どこなのか。有力な候補が2つあります。
第一候補──カザフスタン

イスラエルとカザフスタンは、実は1992年から国交があります。
そして2025年11月、大きな動きがありました。 カザフスタンが、アブラハム合意への参加を決定したんです。
アブラハム合意というのは、要するに中東諸国がイスラエルを国家承認する代わりに、イスラエル側からさまざまな便宜が得られるという枠組みですね。
さらに2026年4月には、イスラエルのヘルツォグ大統領がカザフスタンを公式訪問し、トカエフ大統領と戦略協力の深化について協議しています。
なぜイスラエルにとってカザフスタンが重要なのか。
- エネルギー──巨大な産油国です
- 重要鉱物──ウラン、チタン、亜鉛、マンガンなどを豊富に持つ。イスラエルの防衛産業を考えると決定的です
- 地理──ロシア、中国、カスピ海、中央アジア。この巨大なユーラシア空間の中心に位置しています
カザフスタンをヘキサゴンの正式な一辺だと断定はできません。ですが「アジアの一辺とアブラハム合意をつなぐユーラシアの結節点」として位置づけることはできる。これは私の見立てです。
しかもカザフスタン自身は、イスラエル陣営に一本化されるつもりはないでしょう。ロシアとも親しく、中国とも付き合い、トルコとも付き合う。いわゆる多ベクトル外交です。
もう一つの国──アゼルバイジャン

そしてもう一か国。アゼルバイジャンです。
こちらはカザフスタン以上に、イスラエルとの軍事・安全保障関係が深い国です。 同じく1992年から国交があります。ですが関係の質が違う。一言で言えば準同盟に近い。
- 石油──アゼルバイジャンはイスラエルにとって重要な原油供給国です
- 武器──長年イスラエル製のドローンやミサイルを大量に導入してきました。2020年のナゴルノ・カラバフ戦争でも、イスラエル製兵器が重要な役割を果たしたと言われています
- 地理──そして決定的なのがこれです。アゼルバイジャンはイランと長い国境を持っている。イスラエルから見れば、イランの北側に位置する極めて重要な戦略拠点です
ただし、ここにも複雑な点があります。
アゼルバイジャンはイスラエルと非常に近い。と同時に、トルコとも極めて近い国なんです。 アリエフ大統領は、トルコとイスラエルの双方を重要な友好国として扱っている。
つまり「イスラエル陣営かトルコ陣営か」という二択では説明できない。これがアゼルバイジャンです。
TRIPP──40数キロが、世界地図を変えるかもしれない

アゼルバイジャンを見る上で、もう一つ重要なものがあります。
TRIPP(Trump Route for International Peace and Prosperity)。 アゼルバイジャン本土と、アルメニア領内にある飛び地ナヒチェヴァンを結ぶ回廊です。
距離はわずか40数キロ。ですが、この40数キロが持つ意味は途方もなく大きい。
トランプ大統領がアゼルバイジャンとアルメニアを仲直りさせ、この回廊を通す外交をやってのけた。だから自ら「トランプ・ルート」と名付けたのでしょう。
この回廊が開通すると、どうなるか。
- 西へ行けば──アゼルバイジャン、ナヒチェヴァン、トルコ、そして欧州へ抜ける道ができます
- 東へ行けば──カスピ海を渡って、カザフスタン、中央アジア、そして中国方面へ抜けていきます
そして決定的なのがここです。
このルートは、ロシアを通らない。イランも通らない。
ユーラシアの新しい東西回廊。しかも鉄道だけでなく、道路、送電線、石油・ガスパイプライン、光ファイバーまで束ねる構想です。
アメリカにとっては対ロシア戦略、イスラエルにとっては対イラン戦略。これが本格的に動き出せば、カザフスタンとアゼルバイジャンの意味が一気に変わってきます。
地中海ではギリシャ・キプロス。紅海ではソマリランド。インド洋側ではインドとUAE。そしてカスピ海・中央アジアではアゼルバイジャンとカザフスタン。
こういうネットワークを、ネタニヤフは作ろうとしているのではないか。私はこの地図を、非常に注目して見ています。
反対側でも、巨大な同盟が生まれていた──メッカ共同防衛協定

そして、ここから話がさらに面白くなります。
ネタニヤフ首相がヘキサゴンを打ち出した2026年。反対側でも、非常に大きな動きが起きていました。
2026年8月7日、メッカ。 サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、トルコのエルドアン大統領、パキスタンのシャバーズ・シャリフ首相。この3か国が「メッカ共同防衛協定」に署名しました。
内容は非常に重い。
3か国のうち一国に対する武力攻撃は、三国すべてに対する攻撃とみなす。
これは単なる友好協定ではありません。集団防衛条項です。
もちろん3か国は、この協定は特定の国を敵視するものではなく防御的なものだと公式に説明しています。 それでも、サウジアラビア、トルコ、パキスタン。この三国が一つの防衛枠組みを作った意味は、非常に大きい。
そしてネタニヤフが「急進的スンニ派枢軸」と呼んでいるものが、まさにこれに当たるわけです。
ここで、時系列を並べてみてください。 2月にネタニヤフが六角形を語り、8月7日にメッカで集団防衛協定が結ばれ、8月31日にイスラエルとギリシャが5,500億円の防衛契約に署名した。 同じ年の、わずか半年ほどの出来事です。
片方が構想を語れば、もう片方が協定を結ぶ。片方が協定を結べば、もう片方が兵器体系を実装する。 偶然の順番かもしれません。ですがこの速度そのものが、いまの中東の緊張度を示しているとは言えるでしょう。
「ヘキサゴン vs メッカ同盟」なのか──そう単純ではありません

ここで、一枚の地図にしてみましょう。
一方には──イスラエル、インド、UAE、ギリシャ、キプロス、ソマリランド、そしてカザフスタン、アゼルバイジャンへ伸びるネットワーク。
もう一方には──サウジアラビア、トルコ、パキスタン。そこにエジプトが加わり、さらにイランまで加わるという話も出てきている。
こう見ると「二つの巨大陣営が誕生している」ように見えます。
しかし、実はそんなに単純な話ではありません。なぜなら、国が重なっているからです。
SCOを重ねると、本当の姿が見えてくる

ここで、先日取り上げた上海協力機構(SCO)を重ねてみます。
現在のSCOには、中国、ロシア、インド、パキスタン、イラン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、ベラルーシなどが参加しています。
そして2026年8月31日から9月1日にかけて、キルギスの首都ビシュケクでSCO首脳会議が開かれました。 SCO創設25周年にあたる節目の会議で、議長はキルギスのジャパロフ大統領。 そこにはモディ首相、プーチン大統領、イランのペゼシュキアン大統領、カザフスタンのトカエフ大統領、パキスタンのシャリフ首相などが参加しています。
さて、ここで考えてみてください。
- インドは、ネタニヤフのヘキサゴン構想の重要国です。しかし同時に、SCOの正式加盟国でもある
- カザフスタンは、イスラエルと関係を深めアブラハム合意に参加した。しかしSCO加盟国でもある
- パキスタンは、サウジ・トルコとのメッカ共同防衛協定に入った。しかしインドと同じSCOにもいる
つまり、世界はきれいに二つに割れているわけではありません。どちらの枠組みにも両足を突っ込んでいる国が、かなりあるということです。
※参照:SCOビシュケク首脳会議(2026年8月31日〜9月1日・創設25周年) https://timesca.com/kyrgyzstan-hosts-sco-summit-as-bloc-marks-25-years/
世界は「二極化」しつつ、同時に「多重同盟化」している

私はこれまで、西洋を中心とする世界秩序と、中国・ロシアを中心とする非西洋世界の台頭という大きな構造を追ってきました。この流れ自体は、今後も非常に重要だと思っています。
ただ、今回調べていて改めて感じたのは——2026年の世界は、単純な「西側 vs 非西側」だけでは説明できなくなっているということです。
むしろ多重同盟化している。一つの国が、複数の陣営に片足ずつ置いている。
- インドが典型です。アメリカと協力する。イスラエルとも協力する。しかしロシアとも関係を維持し、SCOにも入っている
- カザフスタンもそう。イスラエルと接近し、アブラハム合意にも参加する。しかし中国・ロシアとも深くつながっている
- アゼルバイジャンもそう。イスラエルとは準同盟級。しかしトルコとは兄弟国家級の関係です
こうなると、地図を赤と青に塗って「こっち側」「あっち側」と分けるだけでは、世界を読み間違えます。
ただし、俯瞰した視点で見れば——西洋と非西洋という二つの陣営に括られようとしている。この二極対立の構造そのものは、確実に進んでいます。
「第三次世界大戦はすでに始まっている」と語る識者も、世界で出始めました。 もし仮にそれが起こるとすれば、この二極の対立の中から起こってくることは、ほぼ間違いないでしょう。
まとめ──ヘキサゴンの本当の意味、そして日本はどこに立つのか

最後に、公平な事実認識から始めます。
ヘキサゴンは、まだ構想の段階です。 加盟した国もなければ、署名した国もありません。 UAEもバーレーンも、公式に加盟国として確認されたわけではない。インドに至っては「加盟します」と宣言すらしていません。
そしてソマリランドについても、イスラエル軍基地の存在は確認されていません。
しかし、残る動かしがたい事実があります。
2026年2月、ネタニヤフ首相は閣議で「六角形の同盟システムを作る」と自ら語った。 そして8月31日、その六角形の地中海側が、5,500億円規模の兵器体系として実際に形になった。
表層ではなく、構造を見てください。そして、誰が得をするのかで見てください。
私は、ヘキサゴンを「新しいNATOを作る構想」だとは思っていません。 むしろイスラエルをハブとして、地域ごとに異なる利害を持つ国々をつなぐネットワーク戦略です。
地中海ではギリシャ・キプロス。インド洋側ではインドとUAE。紅海南側ではソマリランド。ユーラシア側ではカザフスタンとアゼルバイジャン。
それぞれの国が同じ思想を持っているわけではありません。同じ敵を持っているわけでもない。 しかしエネルギー、物流、防衛、AI、サイバー、重要鉱物、海上交通路。こうした利益を一つずつ重ねていく。その中心にイスラエルを置く。
これが、ネタニヤフの描いている新しい外交戦略なのではないでしょうか。
そして最後の謎です。
ネタニヤフが名前を伏せた「アジアの国々」とは、どこなのか。カザフスタンなのか。アゼルバイジャンなのか。それとも、まだ表に出ていない別の国なのか。
私は一つ、日本がここに名乗りを上げているのではないかと見ています。
すでにイスラエルのドローン企業が、日本のある自治体と交渉していたりする。イスラエルがどんどん日本に接近してきているんです。
考えてみてください。 イスラエルという国は、アメリカを飲み込んでいる。そしてそのアメリカの直轄国になっているのが日本です。
だとすれば、日本がこのヘキサゴン構想の中に取り込まれていると考えても、おかしくはありません。
この世界再編の中で、日本はいったいどこに立つのか。
アメリカだけを見るのか。中国・ロシアとの関係をどうするのか。インドや中東、イスラム世界とどう向き合うのか。 これは最終的に、日本自身の国家戦略の問題につながってきます。
真の独立とは、真の主権とは、何か。 六角形の一辺に、知らないうちに組み込まれていた——そんなことにならないために、この構想は追い続ける必要があります。
ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。
今回の内容をさらに詳しく解説した動画は、私のYouTubeチャンネルで公開しています。ぜひご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. ヘキサゴン同盟とは何ですか?
2026年2月22日、ネタニヤフ首相が閣議の冒頭で示した外交・安全保障構想です。 イスラエルを中心に、インド/アラブ諸国/アフリカ諸国/地中海諸国(ギリシャ・キプロス)/名前を伏せたアジア諸国を結ぶ「六角形」を作るというもの。 NATOのような条約機構ではなく、イスラエルをハブとするネットワーク構想であり、現時点で加盟・署名した国はありません。
Q2. 「アキレスの盾」とはどんな契約ですか?
2026年8月31日にイスラエルとギリシャが署名した、約30億ユーロ(約5,500億円)規模の防衛契約です。 ダビデ・スリング、SPYDER、BARAK MX、MMRレーダーに加え、国家レベルの指揮統制システムまで含み、ギリシャの防空アーキテクチャを丸ごとイスラエル製で統合します。 イスラエル国防省は「完全な防衛アレイを外国に提供するのは初めて」と説明しています。
Q3. イスラエルはソマリランドに軍事基地を作ったのですか?
そうは断定できません。 イスラエルは2025年12月26日にソマリランドを国連加盟国として初めて承認し、警察や軍への訓練は提供しています。 ですが2026年6月の時点で、ソマリランドの国防大臣が「イスラエル軍基地について交渉も計画もない」とロイターに明言しています。
Q4. 世界は「ヘキサゴン vs メッカ同盟」の二つに割れているのですか?
そう単純ではありません。 インドはヘキサゴンの重要国でありながらSCO加盟国、カザフスタンはアブラハム合意に参加しながらSCO加盟国、パキスタンはメッカ協定に入りながらインドと同じSCOにいます。 どちらの枠組みにも両足を突っ込んでいる国が多く、いまの世界は「二極化」と同時に「多重同盟化」が進んでいる、というのが私の見立てです。

