グラハム議員の追悼式に集ったネタニヤフとゼレンスキー──二人の焦燥と、カスピ海で始まった「次の陰謀」

こんにちは。金子吉友です。

普段は決して並ばない二人が、その日、同じ場所で向き合っていました。 ネタニヤフ首相と、ゼレンスキー大統領です。イスラエルはウクライナ紛争で、ロシアとの関係に配慮して支援を避けてきました。だから両者の関係は、決して良好ではありません。その二人が、リンジー・グラハム上院議員の追悼式に揃って参列し、そのついでのようにトランプ大統領と会談したのです。

二人は、それぞれの「焦り」と、それぞれの「次の陰謀」を携えてワシントンに来ていました。ゼレンスキー氏はパトリオットのライセンス生産という土産を持ち帰り、ネタニヤフ氏はイランの核施設「ピックアックス・マウンテン」への攻撃を迫った。そしてその背後では、カスピ海でイランの船が攻撃されるという、不気味な事件が起きていたのです。

今日は、まず熊本の地震についてお伝えしたうえで、この追悼式に集まった人々が何を企んでいたのか、そしてカスピ海の一撃が世界をどこへ動かそうとしているのかを読み解いていきます。

目次

熊本地震──イオンモール爆発と、的確だった避難行動

熊本地震で確認されている被害

本題に入る前に、熊本の地震について触れておかなければなりません。

マグニチュード7.1、震度7という大変大きな地震で、被害も甚大なものになっています。X上では当時の映像が拡散され、高速道路が分断された映像がNHKでも流れました。コストコの店内映像も衝撃的でした。ああいった場所で地震が起きると、逃げる場所がありません。 どこへ避難していいか分からず、しかも天井近くの高いところに積み上げられた商品が上から降ってくる。 大怪我、下手をすれば命に関わります。

イオンモールのガス爆発

とりわけ痛ましいのが、イオンモールで発生したガス爆発です。NHKが投稿映像を放送していましたが、相当大きな爆発だったことが分かります。近くにいた運送会社のトラックも爆風をまともに受け、ドライバーの方が重傷を負われたということです。

昨夜の時点では、20〜30名の方が中に閉じ込められている可能性があり、安否不明とされていました。今朝になって、女性の従業員2名の方が亡くなり、もう1名が安否不明と報じられています。現場ではトリアージが行われており、今後さらに犠牲者が増える可能性もあります。政府の発表では、この地震ですでに13名の方が亡くなり、負傷者は数百名とされています。

10年前の教訓が活きていた

ここで、私たちが知っておくべきことがあります。

この爆発が起きたイオンモールは、10年前の2016年、熊本を襲った大きな地震の際、地域の復興拠点として活動していた場所でした。駐車場を開放し、簡易トイレを設置し、おにぎりを10円、お弁当を100円で販売するなど、復興に協力してきたのです。

そして今回、買い物客は、従業員の誘導によってすでに外へ避難しており、助かっています。従業員の方々は避難が遅れて痛ましい結果になってしまいましたが、その判断は的確で、避難行動は迅速だった。 この事実は、私たちが知っておくべきことだと思います。心からお見舞いを申し上げるとともに、一刻も早い救援活動が行われることを願うばかりです。

災害のたびに、私たちは同じことを思い知らされます。日常は、驚くほど脆い。 昨日まで買い物をしていた場所が、一瞬で瓦礫と炎の現場になる。そして、そういうときに人の命を分けるのは、大がかりな制度よりも、現場にいる人間の判断と行動なのだということも。10年前の教訓を活かして地域の拠点であり続けたその場所で、従業員の方々が最後まで客を誘導していた──この事実を、どうか記憶にとどめておきたいと思います。

※参照:NHK報道/政府発表(2026年7月・熊本地震)

リンジー・グラハムとは何者だったのか──戦争の「最大の功労人」

リンジー・グラハム議員の人物像

さて、ここからが本題です。まず、リンジー・グラハム上院議員という人物を、正確に押さえておかなければなりません。

グラハム議員は、端的に言えば戦争を焚きつけてきた人物です。

  • アメリカとイランを戦わせようとしてきた議員
  • ウクライナとロシアの戦争を焚きつけてきた人物
  • そして、熱烈なシオニスト

つまり彼は、アメリカとウクライナ、アメリカとイスラエルを結ぶ「ハブ」だったのです。ロシア・トゥデイによれば、ゼレンスキー大統領は2022年の紛争以降、キーウでグラハム議員と10回以上も会談しています。「何をそんなに何度も会っているのか」という話です。完全なネオコンであり、ゼレンスキー氏は彼を「ウクライナの真の友人」と表現しました。

この人物こそ、二つの戦争の最大の功労人だったのです。だからこそ、彼の突然の死は不可解ですし、その死をきっかけに、トランプ大統領が二つの戦争にさらにのめり込んでいくという皮肉な結果が生まれつつあります。

レバノン人実業家が企画した「シオニスト議員の追悼式」

そして、この追悼式そのものにも、奇妙な点があります。

この式を企画したのは、レバノンの実業家セフ・ナッピー氏と、そのパートナーである元米国大使のモーガン・オルタガス氏でした。

考えてみてください。レバノンでは今、イスラエル軍によってレバノン人が虐殺され、5000人ほどが亡くなっています。 そのレバノンの実業家が、熱烈なシオニスト議員の追悼式を企画している。

信じがたい話です。彼らは、自国民がどうなろうと構わない──そういう感覚なのです。これは、国籍や出自ではなく、「どの側に金と利権があるか」で人が動くという、生々しい現実を示しています。

私たちはつい、「レバノン人ならイスラエルに反発するはずだ」「ユダヤ系ならイスラエルを支持するはずだ」と、民族や国籍で人の立場を推し量ってしまいます。ですが、この世界を実際に動かしている軸は、そこではありません。グローバルな利権のネットワークに属しているかどうか──それが、その人がどちら側に立つかを決めるのです。だからこそ、自国民が殺されている国の実業家が、その虐殺を後押ししてきた議員を追悼する会を企画するという、常識では理解しがたい光景が生まれる。民族で世界を読むと、必ず読み違えます。見るべきは、カネと利権の線なのです。

※参照:ロシア・トゥデイ(グラハム議員とゼレンスキー大統領の会談回数に関する報道)

アデルソン家とAIPAC──共和党議員はこうして「イスラエルの代理人」になる

議員がイスラエルの代理人になる仕組み

グラハム議員がなぜあれほど熱烈なシオニストだったのか。その答えは、アデルソン家との関係にあります。

アデルソン家は、共和党のメガドナー(巨額献金者)です。イーロン・マスク氏に次ぐ規模と言っていい。夫のシェルドン・アデルソン氏はすでに亡くなっていますが、妻のミリアム・アデルソン氏が、いまも現役の巨額献金者として君臨しています。故シェルドン氏は、強烈なシオニスト・親イスラエル支持者でした。

そのミリアム氏が、グラハム議員について語った映像があります。彼女はこう述べています。

「亡くなった夫とともに、私はリンジー・グラハムに恋に落ちた」

そして、「夫のシェルドンとリンジーの毎日のやり取りは、何年も続いた」とも。二人の出会いは1990年で、その場は──ここが重要なのですが──「AIPACのミッションがあった」と、彼女自身が語っているのです。

「洗脳旅行」の仕組み

その「ミッション」とは何か。新人の共和党下院議員たちを、イスラエルへの無償旅行に連れて行くというものです。

これは、はっきり言えば洗脳旅行です。新人議員たちを「イスラエルの代理議員」に変えていくための旅行なのです。毎年のように、議員たちがイスラエルを訪れています。

では、その費用は誰が負担するのか。AIPACの系列組織です。AIPAC本体は直接カネを出せませんが、傘下の組織が費用を出す仕組みになっています。議員1人を連れて行くだけでも100万円以上、200万円ほどかかる旅行の全額を、系列組織が負担する。 そして議員たちをイスラエル詣でに引っ張っていく。その旅行のすべてをアレンジするのが、イスラエル・ロビーであるAIPACなのです。

そこにカネを出していたのが、シェルドン・アデルソン氏でした。ミリアム氏は、「毎日、シェルドンがリンジーと話さない日はなかった。彼らはイスラエルについて話し、シェルドンは助言を与えた」と、ペラペラと語っています。

こうしてカネが動き、ロビーが動き、共和党の人間たちは「イスラエルの代理人」になっていくのです。

両建て構造という核心

そして忘れてはならないのが、この構造は共和党だけの話ではないということです。

民主党にも、ユダヤ系のメガドナーが大勢います。 つまり両建てなのです。共和党にも民主党にも、巨額の献金を出すドナーがいる。AIPACも両建てで、両党の議員を支配下に置いている。

だからこそ、7月28日の記事で書いたように、アメリカの選挙は「どちらを選んでもロビーの掌の上」という状態が続いてきたのです。いま民主党内でDSA(社会主義勢力)が台頭しているのは、まさにこの両建て構造への反乱にほかなりません。

ここで、「たかが旅行くらいで議員が変わるものか」と思われるかもしれません。ですが、考えてみてください。当選したばかりの新人議員が、まだ何の実績も人脈もない時期に、全額負担で厚遇の視察に招かれる。 現地では要人と面会し、「安全保障の現実」を丁寧にレクチャーされる。帰国後も、巨額献金者から毎日のように連絡が来て、助言を受ける。若い議員にとって、これは「自分を認めてくれた人々」との出会いとして刻まれるのです。そこに献金という現実的な生命線が加われば、立場が固まるのに時間はかかりません。これが、20年、30年と積み重なった結果が、いまのワシントンなのです。 逆らえば対抗馬に巨額の資金を投じられ落選させられる──マッシー議員に約20億円が投じられた例が、その「ムチ」の側を示しています。

トランプ会談で二人が持ち帰ったもの──パトリオットと「ピックアックス攻撃」の要求

二人がトランプに求めたもの

さて、追悼式に集まった二人は、それぞれ何を狙っていたのか。

トランプ大統領は当初、「ネタニヤフとは会いたくない」と言っていたそうです。ですが結局、両首脳と会談し、SNSには「良好だった」と書いている。

ゼレンスキーの土産──パトリオットのライセンス生産

まずゼレンスキー大統領。会談で明らかになったのは、アメリカがウクライナでパトリオットをライセンス製造することに同意したという点です。

これは、ゼレンスキー氏が何が何でも欲しかった成果でした。自国でパトリオット・ミサイルを生産できるようになる。彼はこれをトランプ大統領に約束させることに成功したのです。ゼレンスキー氏はX(旧Twitter)への投稿で、「会談を利用してウクライナ国内でのパトリオット生産を推進し、その他役立つ可能性のあるいくつかのアイデアを提案した」と述べています。

ネタニヤフの要求──ピックアックス・マウンテンを叩け

一方のネタニヤフ首相。彼が携えてきたのは、情報でした。

側近が米メディアに漏らした情報によれば、ネタニヤフ首相は、ナタンズ核施設近くの岩を掘って作られた地下施設「ピックアックス・マウンテン」で、イランが核濃縮計画を再開しようとしているとトランプ大統領に説明する予定だった、というのです。この山については、7月24日の記事で詳しく書きました。地下90〜137メートル、通常兵器では破壊が極めて困難な「最後の山」です。

トランプの苛立ちは本物か

ところが、トランプ大統領はFOXニュースの電話インタビューで、こう述べました。

「ネタニヤフにそんなことを言われる必要はない。彼が私にそういった情報を提供するのは、アメリカがイラン攻撃に関わり続けてほしいからだ」「なぜ直接私に言わないんだ? なぜ世界中に発表する必要があるんだ?」

産経新聞はこれを受けて、「両者に隙間風」「トランプはネタニヤフに苛立っている」という見出しをつけました。

ですが──これは茶番です。

トランプ大統領がそう「見せている」だけであって、両者は裏側でガッチリと握り合っている。 誰が見てもそうでしょう。アメリカとイスラエルの関係が断ち切れることも、両者が本気で対立することも、絶対にありません。 パフォーマンスで対立して見せ、関係が悪化しているように演出しながら、実際にやることは完全に一致している。

そして、こうしたトランプ発言をそのまま直接的に引用してしまうのが、日本のメディアです。自分たちで独自の調査報道をしないという体質が、よく表れていると言わざるを得ません。

なぜ、こうした「対立の演出」が必要なのか。理由は単純です。トランプ大統領は、「アメリカ・ファースト」「もう他国の戦争に金を出さない」と訴えて支持を集めた大統領だからです。そのトランプが、イスラエルの要求どおりにイランを攻撃し、ウクライナに兵器を出し続けているという姿は、支持基盤にとって受け入れがたい。だからこそ、「私はネタニヤフに苛立っている」「言われなくても自分で決めている」というポーズが要るのです。問われるべきは言葉ではなく、結果として何が起きたかです。実際に起きたのは、イラン攻撃の続行であり、パトリオットのライセンス生産許可であり、対ロシア制裁の前進でした。言葉は分裂を演じ、行動は一致している。 ここを見誤ってはいけません。

※参照:FOXニュース(トランプ大統領の電話インタビュー)/産経新聞

カスピ海のイラン船攻撃──ウクライナが開いた「新たな戦線」

カスピ海で開かれた新たな戦線

そして、この会談の背景で起きていたのが、カスピ海の事件です。

先週、ウクライナ軍がカスピ海でイランの民間船を攻撃しました。 ウクライナ側の言い分は、「その船にはイランからロシアへの軍事物資が積み込まれていた。だから民間船ではなく、軍事物資を運ぶ船だから攻撃した」というもの。イラン側はこれを「事実無根だ」と否定しています。ウクライナ保安庁(SBU)は、ロシアへドローン部品を輸送していたとされるコンテナ船を攻撃したことを確認しました。船員1人が死亡しています。

狙いは「二つの戦争を結びつけること」

なぜウクライナ軍がイランの船を攻撃したのか。ここに、ウクライナ側の明確な構想が見えます。

「ほら、イランはロシアに軍事物資を提供している。ロシアもイランに軍事支援をしている」──そういう構図を作り上げることで、アメリカをロシアと戦わざるを得ない状況へ追い込むという狙いです。

ロシア側はこれまで、「イランで起きている戦争にはあまり介入していない」というスタンスを取ってきました。ですがウクライナ側は、「ロシアは積極的にイランを軍事支援しているのだ」ということにしたい。カスピ海でのイラン船攻撃は、その「証拠」を揃えるための一手だったわけです。

ロシア・トゥデイは、さらに踏み込んで書いています。FOXニュースによれば、ゼレンスキー大統領は火曜日にワシントンに到着した際、トランプ大統領に「ロシアがイランによる中東の米軍基地への攻撃を支援している証拠」という贈り物を携えていたというのです。

適切な証拠を提示することで、米国によるロシアへの「代理戦争」と、イランに対する「実際の戦争」を結びつけ、アメリカをロシアとの公然たる衝突に引き込む。ゼレンスキー大統領は一挙に、アメリカをロシアとの戦争に、欧州の支援国をイランとの戦争に引き込むことができる──ロシア・トゥデイはそう分析しています。ウクライナの駐イスラエル大使も、イスラエルのチャンネル12とのインタビューで、「我々は同じ敵、同じ悪の枢軸と戦っている」と、この目標をほのめかしました。

背後にイスラエルの指示があった?

さらに不気味な情報があります。

イランのアラグチ外相が、「この件の裏側には、イスラエルの指示があった」とX上で投稿したのです。ただしこれはイランの公式声明ではなく、外相の一言であり、根拠は示されていません。 ですから、事実として断定はできません。

しかし、もしこれが本当だとすれば、話は非常に複雑になります。 イスラエルの指示で、ウクライナがイランの民間船を攻撃した──イスラエルが狙っていたのは、イランの戦争とウクライナの戦争を結びつけることだった、と考えていいでしょう。

なお、この一件についてウクライナ側は最終的に「間違いだった」「意図的なものではなかった」「エスカレーションを望んでいない」と釈明し、イランのアラグチ外相もその旨を認めました。ウクライナ側が引いた形になっています。

カスピ海が持つ意味──要衝の軍事化が世界を二極化させる

一撃がもたらす二極化

この事件をより深く分析しているのが、レバノン在住の地政学アナリスト、イブラヒム・マジェッド氏です。私も参考にしている方で、長文の分析を発表しています。その要点を整理します。

① ウクライナの役割が拡大した

ウクライナは自国領土内の戦争にとどまらず、西側の利益に沿った「広域地政学戦」に積極的に関与し始めた。その象徴が、今回のカスピ海におけるイラン船攻撃です。戦場を、ウクライナ国土からカスピ海まで広げたわけです。さらに、イラク国内にウクライナ軍関係者がいるとの報道も指摘されています。目的は、イランからロシアへ向かうドローン技術などの供給線を妨害するための拠点作りです。

② カスピ海の戦略的重要性

カスピ海は、国際南北輸送回廊(INSTC)の要衝です。ロシア・イラン・中央アジア・インドを結び、西側の制裁やスエズ運河などの海上ルートを回避する重要な経路なのです。

ここが軍事化すれば、影響はイランだけにとどまりません。中国の一帯一路や、ヨーロッパのエネルギー貿易にまで深刻な影響が及ぶことになります。

補足すると、カスピ海は内海であり、沿岸国はロシア・イラン・アゼルバイジャン・カザフスタン・トルクメニスタンの5か国だけです。つまり本来、外部勢力が軍事行動を起こす場所ではない。 そこに攻撃が持ち込まれたということは、「西側の手が届かない裏庭」とされてきた回廊にまで、戦線が拡大したことを意味します。フーシ派による紅海・バブエルマンデブ海峡の封鎖と合わせて考えれば、世界の物流の要衝が、次々と「戦場」に変えられているという流れが見えてくるはずです。

③ イランの計算が変わる

イランはこれまで、欧州との緊張を避けるため、ロシアへの高度な弾道ミサイル技術の供与を自制してきました。 ですが、この攻撃を受けてその計算が変わりつつあるとマジェッド氏は見ます。

結果として、イランはロシアとの軍事技術統合を大幅に深めていくだろう。 ロシアから先進的な防空システムや電子戦装備を受け取る可能性も高まる。これまで距離を保っていた両者が、その距離を取り払っていくというわけです。

④ ロシアと中国の強い反発

ロシアと中国は、この商業船への攻撃を強く非難しています。 そして「カスピ海を軍事劇場に変えるな」と警告し、航行の自由と国際貿易の安定を強調しました。

⑤ 逆効果──ユーラシア枢軸が固まる

そしてマジェッド氏の結論です。アメリカ・イスラエル・ウクライナの連携強化は、逆に「ロシア・イラン・中国」というユーラシア側の対抗軸を固める結果になっている。

局地的なカスピ海の攻撃が、二極化する国際秩序全体に波及している。カスピ海に手を出したことで、中国はよりイランに接近し、ロシアも接近する。 皮肉にも、西側の一手が、対抗軸をより強固にしてしまったというわけです。

※参照:イブラヒム・マジェッド氏(レバノン在住・地政学アナリスト)の分析投稿

まとめ──二つの戦争にのめり込むトランプと、「構想」からの逸脱

ここまでを整理します。

公平を期して申し上げれば、アラグチ外相の「イスラエルの指示」発言には根拠が示されておらず、断定はできません。 ウクライナ側は「間違いだった」と釈明し、事態はいったん収まっています。マジェッド氏の分析も、あくまで一人のアナリストの見立てです。分からないことを、分かったことにして語るべきではありません。

しかし、それでも残る、動かしがたい事実があります。

  • 戦争を焚きつけてきたグラハム議員の追悼式に、ネタニヤフとゼレンスキーが揃って参列した
  • ゼレンスキーはパトリオットのライセンス生産という成果を持ち帰った
  • ネタニヤフはピックアックス・マウンテンへの攻撃を迫った
  • その追悼式の日、米上院ではグラハム議員が発案した対ロシア制裁法案が、86対12の賛成多数で前進した
  • そしてカスピ海では、ウクライナがイランの船を攻撃していた

すべてが、「二つの戦争を一つに結びつける」方向を向いています。

表層ではなく、構造を見てください。

メディアは「トランプとネタニヤフに隙間風」「ゼレンスキーとの関係が回復」と報じるでしょう。ですがその奥では、まったく逆のことが起きています。

思い出してください。トランプ大統領は本来、ロシアとの関係を改善する構想を持っていたはずです。 国家安全保障戦略(NSS)を見る限り、プーチン大統領と仲直りをして、中国を封じ込めるという方向で動くはずでした。

ところが実際はどうか。ウクライナにパトリオットのライセンス生産を許可し、イスラエルの口車に乗せられてイラン戦争を始めてしまった。 トランプ自身の構想とは、まったく違う方向へ行ってしまっているのです。この構図は、イラン戦争の記事で書いた「ネタニヤフの7枚のスライド」の話と、まったく同じ形です。

そして、これは私たち日本にとっても他人事ではありません。

一人の議員の死が、二つの戦争をさらに深く結びつけていく。カスピ海という遠い海の一撃が、ロシア・イラン・中国の結束を固め、世界を二極化させていく。 その先にあるのは、エネルギー価格の高騰であり、海上輸送路の不安定化であり、資源のほとんどを海外に依存する日本の生活そのものへの打撃です。

そして今日、私たちは熊本の地震という、もう一つの現実も突きつけられました。災害で日常が一瞬にして崩れる国でありながら、エネルギーも食料も、その大半を海の向こうから運んでくる。 海上輸送路が不安定になれば、復旧に必要な燃料も物資も滞る。遠い国の葬儀で交わされた密談と、熊本の瓦礫は、決して無関係ではないのです。国の安全とは、軍事だけの話ではありません。エネルギー、食料、そして輸送路。それらを他国の戦争の都合に握られたままでよいのかという問いなのです。日本版CIAの記事で書いたように、その戦争を主導する国に、日本は安全保障も情報も委ねたままでいる。

真の独立とは何か。真の主権とは何か。 遠い国の葬儀に集まった人々の思惑を、私たちは「遠い話」として眺めるのではなく、そこから伸びてくる線が、自分たちの足元にまで届いていることを、静かに見つめ続けなければなりません。

最後になりましたが、熊本の地震で被害に遭われたすべての方に、心よりお見舞い申し上げます。一刻も早い救援と復旧を願っております。

ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。

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今回の内容をさらに詳しく解説した動画は、私のYouTubeチャンネルで公開しています。ぜひご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. リンジー・グラハム議員とはどんな人物でしたか? アメリカとイランを戦わせようとし、ウクライナとロシアの戦争を焚きつけてきた熱烈なシオニストの上院議員です。ゼレンスキー大統領とはキーウで10回以上会談し、「ウクライナの真の友人」と呼ばれました。アメリカとウクライナ、アメリカとイスラエルを結ぶハブであり、金子は「二つの戦争の最大の功労人」と評しています。

Q2. なぜ議員はイスラエルの代理人になるのですか? AIPACの系列組織が費用を全額負担する「イスラエル無償旅行」に新人議員を連れて行く仕組みがあるためです。1人あたり100万〜200万円かかる旅行をロビーがアレンジし、議員を親イスラエルに変えていきます。グラハム議員も1990年のAIPACミッションでアデルソン夫妻と出会い、以後毎日のようにやり取りを続けていたとミリアム・アデルソン氏自身が語っています。

Q3. カスピ海でのイラン船攻撃は何を狙ったものですか? ウクライナは「ロシアへドローン部品を輸送していた船だ」と主張し攻撃しましたが、金子は「イランがロシアを支援している証拠」を作り、米国をロシアとの戦争に引き込む狙いがあったと見ています。イランのアラグチ外相は背後にイスラエルの指示があったとX上で述べましたが、根拠は示されておらず断定はできません。

Q4. トランプとネタニヤフの「隙間風」は本物ですか? 金子は茶番だと見ています。トランプ大統領はFOXニュースで「ネタニヤフに言われる必要はない」と苛立ちを示しましたが、これは演出であり、両者は裏側で握り合っているという分析です。米・イスラエル関係が断ち切れることはなく、こうした発言をそのまま報じる日本メディアの調査報道の欠如も問題だと指摘しています。

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この記事を書いた人

反DS歴史研究者、調査ジャーナリスト。YouTube『あつまれニュースの森』(登録者10万人)にて反グローバリズムの視点で世界情勢・国内政治を解説。

本業だったコンサルタントから徐々に歴史研究にシフトしていく。日々リサーチする中、メディアや歴史が嘘だらけであり、この世界が一部の権力機構によって支配されてきたことに強烈な違和感と憤りを覚えるようになる。

グローバリズムの根源と実態を徹底的に研究。その歴史を旧約聖書まで遡り、現在のいわゆるディープステートのルーツがハザール系とアングロサクソン系の2系統にあることを突き止める。

2021年、YouTubeを開始し、グローバリストのルーツを徹底解剖するオンラインサービス『金子ゼミ』を立ち上げる。

グローバリストにより”修正”された歴史を”修復”する「歴史復元主義」を根本理念とする。

情報発信者としての信条は「左も右もない反グローバリズム・国益第一主義」「不偏不党」。

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