ネタニヤフが開いた「最後の扉」──2026年、欧州右派とイスラエルの同盟はどこまで完成したのか

こんにちは。金子吉友です。

イスラエルが長年、絶対に近づかなかった政党があります。オーストリア自由党です。 初代党首はナチス政権下で閣僚を務め、SS(親衛隊)に所属していた人物でした。

その政党の有力政治家が、2026年1月25日、イスラエル首相官邸に入りました。迎えたのは、ネタニヤフ首相本人です。

ネタニヤフは、最後の扉を開けた。 今日はその話をします。

ここ数回、イスラエルとヨーロッパの右派勢力の急接近というテーマを追いかけてきました。昨日までに、その15年の接近史と、EUの内部に味方を作ってきた手法を整理しています。今日はその続き——2026年に入ってからの動きを、時系列で追いかけます。

先に、これまでの結論を短く確認しておきます。

  • 反グローバリズムを掲げる政党がこぞってイスラエル支持なのは、決して偶然ではありません
  • ただしこれは、イスラエルが一方的に巻き取っているという構造でもない。 欧州右派の側にも思惑があってイスラエルに接近している。ある種の共依存関係です
  • 橋渡し役は、ディアスポラ問題・反ユダヤ主義対策担当大臣のアミハイ・チクリ氏
  • 舞台は、欧州議会の右派会派「Patriots for Europe(欧州の愛国者たち)」。議長はフランス国民連合のジョルダン・バルデラ氏

改めてこうして調べていくと、驚くばかりです。 イスラエルが、ヨーロッパでいま勢いのある右派政党とここまでの関係を築いてきていた。 遡れば2000年代の終わり、第二次ネタニヤフ政権が始まったあたりから、この動きは急速に強まっています。 とりわけシリア内戦以降、欧州にシリア難民が押し寄せてからの急接近は目に見えて明らかです。 そして2023年10月7日のハマスによる奇襲攻撃によって、同盟関係はさらに強くなった。

では、今年に入って何が起きたのか。

目次

2026年1月25日、イスラエル首相官邸

2026年1月25日イスラエル首相官邸でのPfE代表団の訪問

この日、Patriots for Europeの代表団が、イスラエル首相官邸を訪問しました。

迎えたのは、ネタニヤフ首相本人。そしてミリ・レゲブ交通大臣です。

党本部ではなく、首相官邸に迎えた。ここが画期的なんです。

イスラエル首相府の発表によれば、ネタニヤフ首相とレゲブ交通大臣は、彼らのイスラエルに対する一貫した支持に感謝しました。 そして——ここが重要です——各国で彼らが掲げている国家主権、国境の防衛、国家的アイデンティティ。こうした姿勢を「評価している」というんですね。

単に「応援してくれてありがとう」という話ではありません。

ヨーロッパ右派が掲げている政治的な価値観そのものを、イスラエル政府が高く評価している。つまり両者の関係は、単なる親イスラエル外交から「政治理念を共有するパートナー」というところまで昇格したということです。

Patriots for Europeとは何か──改めて確認します

Patriots for Europeの構成政党と会派の説明

日本語にすれば「欧州のための愛国者たち」。2024年の欧州議会選挙後にできた、欧州議会の右派・ナショナリスト系の政治会派です。

参加している主な政党は、これだけあります。

  • フランス:国民連合(RN)
  • スペイン:Vox
  • オランダ:自由党(PVV)
  • ハンガリー:フィデス
  • オーストリア:自由党(FPÖ)
  • イタリア:同盟(レガ)
  • ベルギー:フラームス・ベランフ
  • ポルトガル:シェーガ

それぞれ主張に違いはありますが、大きな共通項は、国家主権、EUへの権限集中への反発、移民規制と国境管理、そして国家的・文化的アイデンティティです。 会派の代表は、フランス国民連合のジョルダン・バルデラ氏。

つまり今回イスラエルを訪問したのは、どこか一つの国の右派政党ではありません。欧州各国の右派勢力を束ねる政治ネットワークの、代表たちが一団となって訪れたということです。

「エルサレムの愛国者たち」という、新しい言葉

エルサレムの愛国者たちという新しい呼称の意味

そしてこの会談で、非常に興味深いものが出てきます。

「Patriots of Jerusalem(エルサレムの愛国者たち)」

イスラエル首相府の公式発表によれば、レゲブ交通大臣がこの言葉を使ってネタニヤフ首相に彼らを紹介し、「欧州の愛国者たちのグループに加わる、最初のイスラエル側の組織である」と説明しています。

ここは慎重に申し上げます。 公表された資料の中に、この組織を誰が最初に設立したのかという記載はありません。そもそも正式な組織なのか、緩やかなグループなのかも分かりません。

確かなのは、イスラエルの現職大臣が、公式の場でこの名称を使って彼らを紹介したという事実です。

そしてこの言い方が意味するところを考えてみてください。 彼らはもう「欧州の右派代表団」というだけではなく、イスラエル側の政治ネットワークの一部としても位置づけられている。その窓口を通じて関わっていく、と大っぴらに言ったということです。

国家外交からさらに発展して、政党同士が密に結びつく「政党外交」へ。ネットワークが、一段深くなっているわけです。

名称というのは、それ自体が政治的なメッセージです。 「Patriots of Jerusalem」と名乗った瞬間に、イスラエルは欧州の右派ネットワークの「一員」という位置に自らを置いたことになります。支援する側でも、支援される側でもない。同じ枠組みの中にいる仲間だ、という宣言です。

ネタニヤフが繰り返した「西洋のユダヤ・キリスト教文明」

西洋のユダヤ・キリスト教文明という共通言語

この会談で、ネタニヤフ首相が何度も使った言葉があります。

「西洋のユダヤ・キリスト教文明(Western Judeo-Christian civilization)」

そしてその文明が、イスラム勢力によって攻撃を受けている——という認識を示しました。

このシリーズをお読みいただいた方は、もうお分かりだと思います。これこそが、イスラエルと欧州右派をつないでいる共通の政治言語です。

国家主権、国境、移民問題、イスラム主義への警戒、そして西洋文明。そしてイスラエルを、その西洋文明を守る「最前線」として位置づける。

これまでは、チクリ大臣やオランダのウィルダース氏の発言としてご紹介してきた考え方です。 ところが2026年1月、イスラエル首相官邸で、ネタニヤフ本人と欧州の愛国者たちの議員が、この世界観を直接共有した。ここは非常に大きな変化です。

ヨーロッパのキリスト教国とイスラエルは、パートナーであり、同志である。共にイスラム勢力と戦う仲間である——そういう物語が、ここで形成されているわけですね。

最後の扉が開いた──オーストリア自由党とヴィリムスキー

オーストリア自由党とヴィリムスキー氏をめぐる最後の扉

そして今回の代表団の中に、決定的に重要な人物がいました。

ハラルト・ヴィリムスキー氏です。欧州議会議員であり、Patriots for Europeの副議長。そして、オーストリア自由党(FPÖ)の政治家です。

このオーストリア自由党という政党が、決定的に重要なんです。

FPÖの初代党首アントン・ラインターラーは、ナチス政権下で閣僚を務めた人物でした。そしてSS(親衛隊)にも所属していました。

そのためイスラエルは長い間、FPÖとの正式な接触を避けてきました。

つまりイスラエルは「欧州右派なら誰とでも付き合ってきた」わけではないんです。イスラエル側にも、超えてはならない一線があった。 過去にナチスと絡んでいる政党——オーストリア自由党、そしてドイツのAfD(ドイツのための選択肢)とは、接触を避けてきたわけですね。

ところが2026年1月25日、そのFPÖのヴィリムスキー氏が、Patriots代表団の一員としてイスラエル首相官邸に入り、ネタニヤフ首相と会った。

自由党側はこれを、「自分たちに対する長年の政治的孤立が終わったことを示す、歴史的な出来事だ」とアピールしました。 彼らはずっと「ファシスト政党だ」「ナチだ」と言われ続けてきたわけです。そのイスラエル側が、今回首相官邸に招き入れてくれた。それをもって「政治的な孤立は終わった」と、全面的に外へ発信したということですね。

ただし、ここは慎重に見なければなりません。

これをもって「イスラエルがオーストリア自由党との外交関係を全面的に解禁した」とまでは、まだ断定できません。 確認できるのは、FPÖの有力政治家がPatriots代表団の一員としてネタニヤフ首相に受け入れられた、というところまでです。

イスラエル側としては「今回は代表団の一員として受け入れたが、今後のあなたたちの言動は見ていきますよ」ということなのだと思います。

それでも、です。 イスラエルがもっとも警戒していた「ナチをルーツとする政党」を受け入れた。だからこそこれは「ネタニヤフが最後の扉を開けた」と評されているわけです。

翌日、代表団はイスラエル国会クネセトへ

翌日イスラエル国会クネセトで開かれた反ユダヤ主義対策会議

そして翌1月26日。今度は代表団が、イスラエル国会クネセトに登場します。

ここで開催されたのが、第2回国際反ユダヤ主義対策会議「真実の世代(Generation of Truth)」です。

この会議の中心人物が、これまで何度もご紹介してきたディアスポラ問題・反ユダヤ主義対策担当大臣のアミハイ・チクリ氏 参加者には、フランスの国民連合やオランダの自由党をはじめ、欧州各国の政治家が大勢名を連ねました。

ここで注目すべきは、議論の中身です。

「反ユダヤ主義対策会議」という位置づけなのに、実際の議論を見ていくと、反ユダヤ主義だけではありません。 移民問題、国境問題、イスラム主義、左派政治、そして西洋文明。こうしたテーマが続々と登場してきます。

つまり「反ユダヤ主義への抵抗」というテーマと、欧州右派の政治課題が、ぴたりと一つにつながり始めているということです。

会議の名前自体は反ユダヤ主義に限定されている。ところが扱っている議論は、まさに欧州右派政党の主要な政治課題がずらりと並んでいる。だからこそ、Patriots for Europeの代表団が招かれているわけです。

チクリ大臣が作っているもの

チクリ大臣が作っているネットワークの相関図

改めて、チクリ大臣の役割を見ておきます。

彼がやっているのは、単なる反ユダヤ主義対策ではありません。 ヨーロッパの右派政治家と関係を作り、イスラエルへ招き、会議を開催し、政治家同士をつなげていく。まさにネットワークの橋渡し役です。

そして彼が強く問題視しているのが、過激なイスラム主義です。

ここは繰り返し申し上げます。 イスラム教そのものと、イスラム主義、さらに暴力的なイスラム過激主義は、分けて考える必要があります。イスラム教徒全体を一括りにして敵視する、という話ではまったくありません。

そのうえで、チクリ氏とネタニヤフ政権は、ヨーロッパにおける過激なイスラム主義の拡大を「イスラエルだけの問題ではなく、西洋文明全体の問題である」と位置づけている。 だからこそ、欧州右派との間に非常に強い共通言語と連帯感が生まれているわけです。

当然、反発もあります

ユダヤ人コミュニティからの反発とねじれ

この動きには、ユダヤ人コミュニティの側から反発が出ています。

なぜか。 欧州右派の政党の中には、過去に反ユダヤ主義やホロコーストをめぐる問題発言、ネオナチとの関係を批判されてきた勢力が存在するからです。

ヨーロッパの一部のユダヤ団体からすれば、「反ユダヤ主義と戦う会議に、なぜそうした歴史を持つ政党の政治家を招くのか」ということになる。

これはオーストリア自由党だけの話ではありません。 フランスの国民連合も、国民戦線と呼ばれていた頃の党首はマリーヌ・ルペン氏の父ジャン=マリー・ルペン氏であり、反ユダヤ主義的な発言をしていました。

ですから国民連合にしてもオーストリア自由党にしても、ここまで来るのに相当な努力を重ねてきた経緯があるわけです。 彼らからすれば、ようやくイスラエル側に「我々はもう反ユダヤ主義ではない」と認めてもらえた。一定ラインの目標をクリアしたということですね。

一方、ユダヤ・コミュニティからすれば「まだ疑わしい。ルーツは結局、反ユダヤなのではないか」という疑念が拭えない。ここにイスラエル政府とヨーロッパのユダヤ社会との間の「ねじれ」があります。

それでもイスラエル政府は、欧州右派を取り込む方向へ動いている。ここは押さえておくべき点です。

欧州右派の狙い──「政治的正統性」という通行証

欧州右派が得る政治的正統性というメリット

では、欧州右派の側の狙いは何なのか。

もちろん、イスラム主義への警戒、移民、国境、国家主権。こうした点で本当に考え方が近いという面はあります。ですがもう一つ、政治的に大きな目的があります。

政党としての「政治的正統性」です。

考えてみてください。かつて反ユダヤ主義だ、極右だ、ネオナチと関係があると批判されてきた政党が——

  • イスラエルの首相官邸に入る
  • ネタニヤフ首相と握手する
  • イスラエル国会クネセトに入る
  • 反ユダヤ主義対策会議に参加する

そうすることで、彼らはこう言えるようになります。

「我々は昔の党とは違う」「我々はユダヤ人の敵ではない」「むしろ反ユダヤ主義と戦う側にいる」

この点を分析しているのが、ポーランドの研究機関OSW(ポーランド東方研究センター)です。 ポーランド政府の支援を受け、東欧・ロシア・ドイツ・EUなどの国際情勢を分析している研究機関ですね。 OSWも、欧州右派にとってイスラエルとの関係強化には「政治的正統性を得る」意味があると分析しています。

つまり、イスラエルだけが欧州右派を利用しているわけではありません。 イスラエルはヨーロッパ内部に味方を増やせる。欧州右派はイスラエルから政治的な承認を得て、「極右」というレッテルを返上できる。共通の利害もありながら、それぞれ違うメリットもある。

1月で終わらなかった──3月のルペン、6月のリスボン

3月のルペン会談と6月のリスボン会議

そしてこれは、1月だけの出来事ではありませんでした。3月、そして6月と続いていきます。

まず2026年3月25日。フランス国民連合の中心人物、マリーヌ・ルペン氏が、駐フランス・イスラエル大使と会談しています。

思い出してください。2025年、イスラエルのギデオン・サアール外相が、国民連合・Vox・スウェーデン民主党などとの公式な外交チャンネルを作るよう外交官に指示していました 前年に作られた外交のチャンネルが、実際に動き始めたということです。

しかも、これまでイスラエルとの接点で前面に出ていたフランスの政治家は、党首のジョルダン・バルデラ氏でした。今回はマリーヌ・ルペン氏です。 国民連合でもっとも影響力を持つ人物に、イスラエル政府が直接動き始めた。

イスラエルと国民連合の関係が、特定の政治家同士の交流から、政党全体の関係へと広がったと位置づけられます。

そして6月、ポルトガルの首都リスボン。

イスラエル・アライズ財団が主催する「欧州議員連盟代表者会議」が開かれました。 この財団は簡単に言えば、世界各国の議会にある親イスラエル議員グループをつないでいる国際的なネットワークです。 会議には、ヨーロッパ15か国からイスラエル支持の議員グループ代表などが参加しました。

そしてここに登壇したのが、またもチクリ大臣です。

彼はこの会議で、「西ヨーロッパの指導者たちは、反ユダヤ主義の拡大に対して弱すぎる」という趣旨の批判までしています。 そして——「ヨーロッパはユダヤ人だけでなく、自分たち自身の民主主義と自由社会を、過激なイスラム主義から守らなければならない」と訴えました。

1月にエルサレムで語られていた政治的な言語が、6月にはヨーロッパ各国の議員ネットワークの中で、もう一度繰り返されている。これは一回限りのイベントではなく、連続した動きだということです。

2026年に何が変わったのか──「選別」が要らなくなった

2026年に何が変わったのかを示す図解

では、今年に入って何が大きく変わったのでしょうか。

これまで、イスラエルと欧州右派の関係には、かなりの「選別」がありました。

オルバンとは付き合う。ウィルダースとは付き合う。Voxとは付き合う。 しかし、この政党とは会わない。この政治家とは接触しない。そういう線引きが、常にあったわけです。

ところが、Patriots for Europeという国境を越えた大きな右派ネットワークが誕生したことで、状況が変わりました。

イスラエル側からすると、一つ一つの政党とゼロから関係を構築する必要がなくなったんです。Patriotsという政治ネットワークそのものと関係を作ればいい。

その結果、以前ならイスラエルが直接接触を避けていた政治家まで、同じ代表団の一員として首相官邸に入ってくる。

私は、ここが2026年に起きている非常に大きな変化だと思っています。

国家外交から、政党外交へ。そしてネットワーク外交へ

国家外交から政党外交そしてネットワーク外交への移行

前回からの流れを、一本につなげてみます。

  • 2010年代 ── ネタニヤフはオルバンをはじめ、EU内部の「国家」に味方を作った
  • 2020年代 ── 欧州右派が勢力を拡大すると、イスラエルは各国の「右派政党」そのものと関係を作り始める
  • 現在 ── Patriots for Europeのような、国境を越えた「政治ネットワーク」そのものと関係を作っている

国家外交から、政党外交へ。そして政党外交から、ネットワーク外交へ。私は、ここがこのシリーズで一番重要なポイントだと思っています。

ただし、断っておきます。

2017年の時点から、全部が一つの長期計画として設計されていたという証拠があるわけではありません。 時代が変わり、移民危機が起き、欧州右派が成長し、2023年10月7日のハマスによる攻撃があり、ガザ戦争が起きた。 そのたびにイスラエル側が、ヨーロッパ内部にすでに存在している政治的な亀裂を見つけ、自国と利害が一致する勢力との関係を拡大していった。そう見るのが一番自然だと思います。

「敵」だった右派が、「味方」になった

敵だった右派が味方になった逆転の構図

そしてもう一つ、非常に大きな変化があります。

かつてイスラエルが警戒していた欧州右派の一部が、いまでは「反ユダヤ主義と戦う仲間」になり始めている。かなり大きな逆転です。

戦後のヨーロッパで、反ユダヤ主義の脅威として真っ先に警戒されてきたのは、ナチズムやネオナチ、ホロコースト否定論など、主に極右側の勢力でした。 だからイスラエルも、そうした歴史を持つ政党とは長く距離を置いてきた。

ところが現在、イスラエル政府、特にチクリ大臣は、反ユダヤ主義の脅威が右派だけから来るとは考えていません。 過激なイスラム主義。急進左派。そして反シオニズム運動の一部。こうしたところから生まれる反ユダヤ主義を、強く警戒しています。

すると、何が起きるか。 移民やイスラム主義に厳しい欧州右派と、イスラエル政府の利害が、ここで一致してくるわけです。

「なぜイスラエルは、自分たちをホロコーストで迫害したナチスをルーツとする政党と手を組むのか」——その答えが、ここにあります。

ヨーロッパだけの話ではない──ただし、世界が二つに割れているわけでもない

ヨーロッパだけではない世界全体の政治構造

私は、この現象をヨーロッパだけの話として見るべきではないと思っています。

アメリカでも、イスラエル・パレスチナ問題をめぐって政治的な分極が進んでいます ヨーロッパでも、移民、イスラム主義、イスラエル、ガザ戦争、国家主権——一見別々に見える問題が、少しずつ一つの政治的対立軸に収束してきている。

私はこれまで、世界全体で見ると西洋文明圏とイスラム文明圏の間に、一つの文明的な緊張が生まれているという話をしてきました。

ただし、ここは正直に申し上げます。現実は、そんなに単純ではありません。

  • イスラム諸国の中にも、UAEのようにイスラエルと関係を深める国があります
  • 逆に西洋諸国の中にも、イスラエル政府を強く批判する勢力があります
  • ロシア、中国、イラン。それぞれが自国の国益で動いています

ですから「世界が完全に二つの陣営にきれいに分かれている」という話ではありません。そこは誤解しないでください。

ただし、です。 政治的な言語として、「西洋文明を守る側」と「それに対抗する勢力」という構図が、欧米の政治家たちによってかなり強く使われ始めている。そしてその中心に、イスラエルが位置し始めている。

ここは、私たち日本人もかなり注意して見ておく必要があると思います。

まとめ──では、日本はどうするのか

日本が取るべき中道的なポジションの図解

最後に、公平な事実認識から始めます。

Patriots for Europeの代表団がイスラエルを訪問したこと自体は、正当な外交活動です。 オーストリア自由党の政治家が首相官邸に入ったのも、招いた側と招かれた側の判断です。違法性はどこにもありません。 そして欧州右派の各政党は、「我々はもう反ユダヤ主義ではない」と長い時間をかけて示してきた、と主張しています。

しかし、残る動かしがたい事実があります。

初代党首がナチス政権下の閣僚でSS所属だった政党の有力政治家が、2026年1月25日、イスラエル首相官邸に入った。 そしてその翌日、代表団はイスラエル国会クネセトの「反ユダヤ主義対策会議」に座っていた。

表層ではなく、構造を見てください。そして、誰が得をするのかで見てください。

メディアはこれを「イスラエルと欧州右派が接近している」という一行で片付けます。ですがその奥にあるのは、国家と国家の関係から、政党と政党へ。そして国境を越えた政治ネットワークへと、一段階ずつ進んできた構造です。

私はこれを、単なるイスラエル外交の話ではなく、ヨーロッパ政治そのものの再編として見ていく必要があると考えています。

そして私たち日本は、どうすべきか。

日本はアメリカとの同盟関係を持っています。ですから現在の国際政治の構造では、基本的に西側陣営に属している。 しかし日本は同時に、中東から大量のエネルギーを輸入している国でもあります。イスラエルとも関係があり、サウジアラビアとも、UAEとも、カタールとも、イランとも、長い外交関係がある。

だとすれば、世界が宗教、文明、イデオロギー、政治ネットワークによって再び大きく分断されていくとき、日本がどこか一つの陣営の論理に完全に飲み込まれてしまっていいのか。

そんなわけがありません。

西洋の言い分を全部そのまま受け入れるのでもない。イスラム側、あるいはロシアや中国の言い分を全部受け入れるのでもない。 日本自身の国益と、日本自身の歴史観を持って、中道的なポジションをどう作るのか。これがこれからの日本外交にとって、決定的に重要なテーマです。

真の独立とは、真の主権とは、何か。 イスラエルは10年、15年をかけて、自国の国益のために「敵だった相手」とすら手を組んでみせました。 日本は、自国の国益のために、それだけの計算をしているでしょうか。

ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。

今回の内容をさらに詳しく解説した動画は、私のYouTubeチャンネルで公開しています。ぜひご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. なぜオーストリア自由党の件が「最後の扉」なのですか?

FPÖの初代党首アントン・ラインターラーが、ナチス政権下で閣僚を務め、SS(親衛隊)に所属していた人物だからです。 そのためイスラエルは長年、FPÖとの正式な接触を避けてきました。 2026年1月25日、副議長のヴィリムスキー氏がPatriots代表団の一員として首相官邸に入り、ネタニヤフ首相と会いました。 ただしこれをもって「外交関係を全面解禁した」とまでは断定できません。

Q2. 「Patriots of Jerusalem」とは何ですか?

2026年1月25日の会談で、ミリ・レゲブ交通大臣がネタニヤフ首相に代表団を紹介する際に用いた名称で、「欧州Patriotsグループに加わる最初のイスラエル側の組織」と説明されました。 ただし公表された資料には創設者の記載がなく、正式な組織なのかどうかも明らかではありません。

Q3. イスラエルが欧州右派を利用しているということですか?

一方通行ではありません。 イスラエルはヨーロッパ内部に味方を増やせる。欧州右派はイスラエルから政治的な承認を得て「極右」のレッテルを返上できる。 ポーランドの研究機関OSWも、欧州右派にとってイスラエルとの関係強化には「政治的正統性を得る」意味があると分析しています。双方にメリットがある関係です。

Q4. 世界は西洋文明とイスラム文明の二つに分かれているのですか?

そこまで単純ではありません。 イスラム諸国の中にもUAEのようにイスラエルと関係を深める国があり、西洋諸国の中にもイスラエル政府を強く批判する勢力があります。ロシア・中国・イランもそれぞれ自国の国益で動いています。 ただし「西洋文明を守る側」と「それに対抗する勢力」という政治的な言語が、欧米の政治家によって強く使われ始めているのは事実です。

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この記事を書いた人

反DS歴史研究者、調査ジャーナリスト。YouTube『あつまれニュースの森』(登録者10万人)にて反グローバリズムの視点で世界情勢・国内政治を解説。

本業だったコンサルタントから徐々に歴史研究にシフトしていく。日々リサーチする中、メディアや歴史が嘘だらけであり、この世界が一部の権力機構によって支配されてきたことに強烈な違和感と憤りを覚えるようになる。

グローバリズムの根源と実態を徹底的に研究。その歴史を旧約聖書まで遡り、現在のいわゆるディープステートのルーツがユダヤ系とアングロサクソン系の2系統にあることを突き止める。

2021年、YouTubeを開始し、グローバリストのルーツを徹底解剖するオンラインサービス『金子ゼミ』を立ち上げる。

グローバリストにより”修正”された歴史を”修復”する「歴史復元主義」を根本理念とする。

情報発信者としての信条は「左も右もない反グローバリズム・国益第一主義」「不偏不党」。

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