こんにちは。金子吉友です。
同じ7月に、二つの国で、対照的な光景が広がりました。かたや数百万人(イラン保健省は1500万人とも)が押し寄せた、歴史上最大級のイラン国葬。かたや猛暑と大雨で行事が次々と中止に追い込まれた、アメリカ建国250周年の記念イベント。トランプ大統領は会場到着が2時間遅れ、スピーチを短縮するはめになりました。この二つの光景の対比が、いまの世界の力学を、驚くほど雄弁に物語っています。
そして今、イスラエル本土では、ネタニヤフ政権への抗議デモが日ましに広がっています。「もはやネタニヤフの命運は尽きた」と言っても過言ではありません。今日は、2026年7月6日の配信でお伝えした内容をもとに、イラン国葬・米250周年・ネタニヤフおろしという三つの出来事から、これから何が起きるのかを読み解いていきます。
二つの7月──熱狂のイラン国葬と、雨に沈んだ米250周年
まず、イランの国葬です。2026年7月4日から9日まで、6日間かけて場所を変えながら執り行われています。ハメネイ師のご遺体は、テヘランから聖地マシュハドへと移送されていきます。数百万人規模の参列者が訪れ、ロシア・中国・パキスタンをはじめ100カ国以上の代表が参列しました。西側メディアは「200万人ほど」と控えめに伝えていますが、イランの保健省は、参加者が1500万人に上ると発表しています。Xでも、その圧倒的な規模の映像が拡散されています。参列者のなかには、「私たちの指導者を殺した男(トランプ、ネタニヤフ)を、なぜ殺さないのか」「彼らへの報復は我々の義務だ」と、復讐を求める声も少なくありませんでした。それほどまでに、この暗殺は国民の怒りに火をつけたのです。
対して、アメリカです。建国250周年を祝う壮大なイベントが予定されていましたが、猛暑と大雨が直撃し、行事は次々と延期・中止。トランプ大統領肝入りのイベントも中断に追い込まれ、本人の到着も2時間遅れました。それでもトランプは、ワシントンのナショナル・モールでの演説で、こう語りました。「これはアメリカの黄金時代の、まだ夜明けに過ぎない」「アメリカはもっと大きく、もっと強くなる」と。正直、皮肉なのかと疑うほどですが、本気で言っているようです。
一方は、指導者を暗殺されてなお、数百万人が自発的に集い、燃えるような結束を見せる国。もう一方は、世界最強を誇りながら、自国の記念すべき祝典を天候にすら祝福されず、指導者の空虚な言葉だけが宙に浮く国。この対比が、いまの「力」の実態を映し出していると、私には思えてなりません。派手さや軍事力ではなく、国民が何のために集うのかという一点にこそ、国家の本当の強さは現れるのです。
「黄金時代の、まだ夜明け」――トランプのこの言葉は、聞きようによっては痛々しくさえあります。沈みゆく夕日を、朝日だと言い張っているかのようだからです。もちろん、彼が本気でそう信じている可能性もあります。しかし、雨に打たれ、2時間遅れで登壇し、短縮したスピーチでそう語る姿は、アメリカの現実と、指導者の言葉との、埋めがたい乖離をかえって際立たせてしまいました。国家の勢いというものは、演説の言葉ではなく、その日の空気が語るのです。
そしてもう一つ、見逃せないのは、日本がイラン国葬に代表を派遣しなかったという事実です。100カ国以上が弔意を示すなか、日本は正式に参列を見送った。これは、アメリカからの通達があったことを、私は事実として確認しています。またしても、イランと日本の長年の関係を、自ら台無しにする振る舞いです。
※参照:Press TV / 各国報道 https://www.presstv.ir/
イラン国葬が「裏目」に出た理由──ブルメンタールの現地報告
このイラン国葬について、調査報道メディア「グレイゾーン」のマックス・ブルメンタール氏が現地取材を行い、貴重な報告を寄せています。彼の言葉を紹介しましょう。
「私は歴史上最大の葬儀を訪れたばかりだ」。何百万人もの人々が、米イスラエル連合によって暗殺された最高指導者アリー・ハメネイ師とその家族を悼んでいる。押し寄せる群衆は、夜になるにつれてますます大規模で激しくなる。テヘランからは復讐を求める叫び、悲しみと抵抗の表現が聞こえてくる、と。ブルメンタール氏はこう結論づけます。「ハメネイ氏の暗殺が政権交代を促すために設計されたものだったなら、この葬儀は、それがどれほどひどく裏目に出たかを示している」。
ブルメンタール氏はさらに、こう書いています。「これらの追悼の日々は、反帝国主義運動の歴史において、最も響き渡る瞬間の一つとなるだろう」「これは地域における転換点であり、一世代にわたって響き渡るだろう」。そして重要なのは、彼が話したイラン国民の多くが、「戦争は間もなくイランに戻ってくる」と信じ、誰も米国との覚書を信頼していない一方で、自国が次の攻撃を耐え抜けると確信していたという点です。国民の動員こそが、イランの生存に不可欠な要素だ、と。
これは決定的な指摘です。アメリカやイスラエルは、ハメネイを暗殺すればイランの体制が揺らぐと踏んでいた。ところが現実は逆でした。イランの国民は政権転覆など望んでおらず、むしろハメネイの死に心を痛め、イスラエルとアメリカへの怒りを増幅させたのです。トランプ大統領自身、悲しみにくれるイラン国民を見て「彼らはハメネイを恨んでいると思っていた」と驚いたと報じられています。敵を殺せば従うだろう、という発想そのものが、根本から外れていたわけです。
そして今、イランは大きく動いています。シーア派とスンニ派という宗教的な対立を超えて、サウジアラビア、パキスタン、エジプト、トルコといった国々と、「パン・イスラム連盟」を組み、イスラエルの脅威に立ち向かおうとしているのです。スンニ派とシーア派が連携してイスラエルと対峙する――この構図が、くっきりと浮かび上がってきました。ハメネイ暗殺は、イスラエルが最も望まなかったイスラム世界の結束を、皮肉にも生み出してしまったのです。
ブルメンタール氏が捉えた光景の一つに、ハメネイ師の執務室のすぐ外の扉が、参列者たちの手書きのメッセージで、びっしりと埋め尽くされているというものがありました。通りを挟んだ向こう側では、群衆が自発的に集まり、暗殺者たちへの抗議の叫びを上げていたといいます。これは、動員された「やらせ」の群衆ではありません。一人ひとりが、自らの意思で、悲しみと怒りを表しに来たのです。この熱量こそが、外部からの政権転覆がいかに非現実的かを物語っています。
なお、注目されていた新最高指導者モジタバ・ハメネイは、国葬に姿を現しませんでした。他の3人の息子(マスード、メイサム、モスタファ)は姿を見せましたが、モジタバだけは現れなかった。暗殺の絶好の機会である以上、姿を見せられないということでしょう。この点は、以前の記事「ハメネイ国葬でイスラエルは暗殺を仕掛けるのか」で論じた通りです。
※参照:The Grayzone(Max Blumenthal) https://thegrayzone.com/
私はトランプに、もう期待しない──1%の希望も潰えた
ここで、正直に申し上げておかなければなりません。私は、トランプ大統領にもう期待していません。
昨年、トランプとプーチンのアラスカ会談のあたりまでは、私は大きな期待を寄せていました。アメリカがロシアと組んで中国を封じ込める――そんな構図を見せてくれるのではないか、と。このチャンネルでも、熱く期待を語っていました。しかし、今年に入ってイラン紛争を起こしたあたりから、トランプはイスラエルの言いなりになり、完全に取り込まれてしまったと、認めざるを得なくなりました。
私は1%だけ、「このイラン紛争は、イスラエルの本質を炙り出すためにトランプがあえてやっているのではないか」という希望を残していました。しかし、その1%も、もうありません。決定的なのは、娘のイヴァンカがクシュナー家に嫁いだ=トランプ・ファミリーがイスラエルに嫁いだという構造です。トランプは、イスラエルの婿になってしまった。娘が人質に取られているようなもので、もはやイスラエルの圧力を跳ね返すことはできません。
視聴者の方からは「あんなにトランプを応援していたのに、なんだよ」という声もいただきます。正直に言えば、私自身が、誰よりもがっかりしているのです。ディープステートを撲滅すると息巻いていた頃の、あの余裕あるトランプは、もういません。結局のところ、彼もイスラエルの下僕になってしまった。この現実を、私は受け止めています。
そして、ここから先はあくまで憶測として聞いてください。もしトランプがイスラエルに逆らうようなことがあれば、暗殺される可能性すらある。そしてバンス副大統領が大統領に昇格するという筋書きが流れている、という話もあります。確たる証拠があるわけではありません。しかし、逆にイスラエルに従い続けても、それはそれでアメリカにとって最悪の結末へと向かう。トランプは、進むも地獄、退くも地獄という袋小路に、自ら足を踏み入れてしまった。娘を「嫁がせた」その一手が、彼の手足を縛っているのです。トランプに希望を託していた方には、酷な現実かもしれません。しかし、希望的観測で目を曇らせるより、直視するほうがいい。私はそう考えています。
「イスラエル・ファーストか、共産主義か」──アメリカ2択の正体
トランプは250周年の演説で、もう一つ重要なことを口にしました。「共産主義者が、この国で勢力を得ようとしている」という警告です。これは言うまでもなく、DSA(アメリカ民主社会主義者)を指しています。トランプがこれを名指しで警戒するのには、理由があります。DSAは、いまや民主党の予備選で現職のベテラン議員を次々に撃破しているからです。ニューヨーク州では、マムダニが支援した3人の候補が現職2人を含めて全員当選。コロラド州でも、DSA支持の29歳の候補が現職を破りました。民主党のかつての主流だったリベラル・進歩派が、内側から食い破られている。この勢いは、中間選挙、そして2028年の大統領選まで及ぶ――私はそう見ています。
マムダニを支える3つの勢力
DSAが象徴的に担いでいるのが、ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニです。私が彼を詳しく調べたところ、その背後には3つの勢力がありました。
- ① DSA:アメリカ最大の社会主義集団
- ② ジョージ・ソロス:トランプを嫌うソロスが、反トランプのマムダニに資金を出している
- ③ ムスリム勢力:ムスリム同胞団・ハマス系のCAIR(ケア)から、PACを経由して資金が流れている
なぜムスリム勢力がマムダニを支援するのか。マムダニが反イスラエル・反ネタニヤフ・親パレスチナだからです。DSAも基本的に反イスラエルで親パレスチナ。ここで面白いのは、ジョージ・ソロスとトランプの因縁です。ソロスはトランプを毛嫌いし、トランプはマムダニを毛嫌いしている。その「トランプが嫌うマムダニ」に、トランプ嫌いのソロスが資金を出す――敵の敵は味方、という構図が、ここでも働いているわけです。マムダニ一人の背後に、社会主義・国際金融・ムスリム勢力という、本来は交わらないはずの三者が結集している。この異様さこそ、いまのアメリカ政治の混沌を象徴しています。この構造は、「MAGAは死んだ──タッカー・カールソン『第三政党』宣言」でも詳しく論じました。
法案を書くのはイスラエル・ロビー
一方の共和党は、イスラエル・ファーストを打ち出すしかありません。支持基盤の一つである福音派が親イスラエルだからです。少しでもイスラエルに批判的な発言をすれば、福音派が離れ、票が流れてしまう。加えて、アメリカ最大のロビー団体AIPACの資金です。AIPACから見放されれば、選挙資金が絶たれ、戦えなくなる。
恐ろしいのは、イスラエル・ロビーが議員に代わって法案を書くという現実です。米軍事技術と諜報をイスラエルと統合するセクション224/622という動きがありますが、この法案を下書きしたのが、ネオコン系シンクタンクFDD(民主主義防衛財団)の傘下団体「FDDアクション」ではないかと、ジャーナリストの大高未貴さんがメールマガジンで分析しています。「政治家の代わりに法案を作成します」というサービスが、実際に存在するのです。
民主党こそAIPACの金を受け取ってきた
意外に思われるかもしれませんが、AIPACの金を多く受け取ってきたのは、実は民主党の議員のほうです。共和党は元々親イスラエルなので警戒する必要がない。逆に、民主党の進歩派はイスラエルに批判的な議員が多いからこそ、ロビーが警戒して金をばらまくのです。つまり両党にばらまいている。だから、どちらが政権を取っても、イスラエルの代理人が運営することは変わらない。民主党議員が見せる「イスラエル慎重論」は、多くが見せかけです。金を受け取っていない議員のほうが、少ないのですから。
その手口も苛烈です。イスラエルに少しでも否定的な態度を示した議員には、対立候補に巨額の資金が注ぎ込まれ、ネガティブキャンペーンで落選運動が展開されます。ケンタッキー州のトーマス・マッシー議員も、対立候補に48億円とも言われる資金を投じられ、落選しました。その資金源が、ユダヤ系のメガドナーたちです。彼らは、AIPAC傘下のPACや、献金額が無制限のスーパーPACに、湯水のように金を流し込みます。しかも、その多くはダークマネー――NPOを経由させて記録に残らない形で流されるため、外からは追跡できません。さらにAIPACは、議員のスタッフとして自分たちの人間を送り込み、議員が困ったときにすぐ相談できるホットラインまで用意している。金だけでなく、人と情報のパイプで、議員を丸ごと囲い込むのです。
そして、この構造の外にいるのが、AIPACの金を受け取らないDSAの候補者たちです。反イスラエルである以上、受け取るはずがない。だからこそ、彼らは急速に伸びている。結果として、アメリカの選挙は「イスラエル・ファーストを選ぶか、共産主義を選ぶか」の2択になりつつある。しかもDSAは、単なる社会主義ではありません。マルクス主義的な、共産主義の一歩手前です。「家族の破壊」すら理念に掲げる、極左の集団でもある。イスラエルに乗っ取られ、共産主義に蝕まれる――アメリカは、その両面から食い尽くされた空虚な器になってしまったのです。
象徴的なのは、その経済です。かつてアメリカの強さを支えたのは、自動車をはじめとする製造業という「実態」でした。ところが今、株価を支えているのは、AIやビッグテック、そして金融です。実体経済ではなく、期待とマネーゲームが膨らませる数字。中身が空洞化しているのに、株価という見せかけだけが輝いている。これはまさに、いまのアメリカという国そのものの縮図です。古き良きアメリカは、もうどこにもない。イスラエルの代理人と、共産主義者と、テック・金融の巨人たち――この三者に、国の実体が明け渡されてしまったのです。
※参照:大高未貴 メールマガジン https://www.kanekoyoshitomo.com/
ネタニヤフおろしが始まった──1000日の抗議デモ
そしてイスラエル本土では、ネタニヤフおろしが始まっています。イスラエルの大手紙ハアレツが、ネタニヤフ政権への抗議デモの広がりを報じ始めました。ハアレツの記事には、国民の痛切な叫びが記されています。「あなたは私たちを見捨てた」――ここで言う「あなた」とは、ネタニヤフ政権のことです。「お前たちが私たちを見捨てたのだろう。その報いを、代償を払え」。これは外国の批判ではなく、イスラエル国民自身が、自国の政権に向けた言葉である点が重要です。規模はまだ数百人程度かもしれません。しかし、内側から上がったこの声は、これからどんどん広がっていくでしょう。
「あなたが私たちを見捨てた」
デモの引き金は、10月7日のテロから1000日が経ったことでした。デモ参加者たちは、連立与党議員の自宅前や、主要な交差点、国会へのアクセス道路を封鎖し、政府の戦争指導と人質問題への対応の責任を追及しています。掲げられたのは、「喪失、見捨てられ、隠蔽、失敗の千日」と書かれた黄色い旗。国民は政権に、「あなたが私たちを見捨てたのだ。その代償を払え」と突きつけています。
象徴的なのは、ネタニヤフがチャンネル14のインタビューで、「10月7日以降で何が変わったか」と問われ、「(人質は)負傷者が少し体重が減った」と答えたことです。参加者たちはこれを、「管理能力ゼロ、責任感ゼロ、リーダーシップゼロの現れだ」と激しく批判しました。人質ダニー・エルガラト氏の兄弟は、こう語っています。「生きて戻ってきた者たちは帰ってきた。しかし、生きたまま拉致され、見捨てられ、棺で戻ってきた者たちは、帰ってきたとは言えない」。
デモは一箇所にとどまりません。参加者たちは、弱者機種教育大臣の自宅前や、アミル・オハナ国会議長の官邸前にも集結し、テルアビブのキルヤ軍本部前でも集会を開いています。国会付近では、抗議者がアクセス道路を封鎖しようとして小競り合いも報告されました。かつて「不死身」とまで呼ばれたネタニヤフに対し、選挙・世論・裁判・同盟国の離反に加えて、いま『遺族と国民の怒り』という五つ目の包囲網が加わったのです。
背景には、10月7日にイスラエル軍自身の攻撃(ハンニバル指令)で、少なからぬ自国民が命を落としたという事実に、国民が気づき始めたことがあります。ハマスの奇襲が来ると分かっていながら、イスラエル国防軍は数時間、待機を命じられていた。この点は「10月7日ハマス奇襲は『起こるに任せた』のか」で詳しく論じました。もし真相究明の調査委員会が立ち上がれば、総責任者であるネタニヤフは、確実に「黒」となります。すでに収賄・汚職などの裁判を抱える彼にとって、10月7日の責任追及が加われば、これは致命傷です。だからこそ彼は、戦争を続けることでしか、その日を先延ばしにできないのです。
後継ベネットはさらに強硬派
ただし、注意が必要です。ネタニヤフが去っても、イスラエルは変わりません。後継の最有力とされる野党候補ナフタリ・ベネット(元首相)は、ネタニヤフよりもさらに強硬派とされます。今は中立的な主張に調整しているようですが、本質は確実にイランと戦争を起こす首相です。ネタニヤフを下ろして、さらに強硬な候補を首相にする――この流れに入っているように、私には見えてなりません。
つまり、いま起きている「ネタニヤフおろし」は、一見すると平和への前進に見えて、実はもっと危険な指導者への交代劇かもしれないのです。60日間の停戦は続いていますが、イスラエルはすでに次の戦争準備に取りかかっている。イランがパン・イスラム連盟で結束を固めるなか、中東で、より大きな戦争が起きる可能性すらある。そしてイスラエルは、むしろそれを望んでいる節がある。この構造は「『見捨てられるイスラエル』報道の罠」で論じた通りです。
※参照:Haaretz https://www.haaretz.com/
まとめ──空虚な器になったアメリカと、日本の不在
最後に、公平に申し上げておきます。トランプ暗殺やバンス昇格といった話は、あくまで憶測の段階であり、確たる証拠があるわけではありません。抗議デモも、いまは数百人規模で、すぐに政権が倒れるわけでもない。イラン国葬の参加者数も、西側とイランで大きく食い違っています。どの数字を、どの視点で受け取るか――ここは慎重でなければなりません。断定は禁物です。
しかし、それでも残る、動かしがたい事実があります。熱狂のイラン国葬と、雨に沈んだ米250周年という、あまりに対照的な二つの光景。ハメネイ暗殺が裏目に出て、イランの結束を固め、パン・イスラム連盟という新たな枠組みまで生み出したこと。イスラエル国民自身が、「1000日」の失敗をネタニヤフに突きつけ始めたこと。そして、アメリカが「イスラエル・ファーストか、共産主義か」という2択の、空虚な器になってしまったこと。
かつて世界の覇権を握った国は、いまや製造業ではなく、AI・ビッグテック・金融が株価を支えるだけのバーチャルな国へと変質しています。イスラエルに軍事と諜報を握られ、内側からは共産主義に蝕まれる。アメリカは、もはやアメリカによって運営されていないのです。ネタニヤフが去っても、さらに強硬なベネットが控える。トランプが躊躇しても、その手足は縛られている。個人が代わっても、構造は変わらない――この視点だけは、決して手放してはいけません。
そして、私たち日本です。100カ国以上が弔意を示すイラン国葬に、日本だけが、アメリカの通達一つで、参列を見送った。かつて日本は、欧米がイランと敵対するなかでも独自の友好関係を保ち、中東外交の数少ない財産としてきました。その関係を、自らの判断ではなく、宗主国の一声で棒に振る。自らの意思で外交を選べない――この「不在」こそが、いまの日本の姿です。イラン国葬に押し寄せた数百万人の熱狂の裏で、日本の席だけが、ぽっかりと空いている。その空席は、主権を失った国の象徴にほかなりません。
アメリカがイスラエルに飲み込まれ、その日本はアメリカに飲み込まれている。この入れ子構造から目を背けている限り、日本もまた「空虚な器」への道を歩むことになります。イラン国民が指導者の死に数百万人で集ったあの熱量を、私たちは「遠い国の話」として眺めているだけでいいのでしょうか。国家とは何か、独立とは何かを、あれほど鮮烈に突きつけた光景はありません。表層ではなく、構造を見てください。真の独立とは、真の主権とは何か。私たちは何度でも、その問いに立ち返らなければなりません。
ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。
今回の内容をさらに詳しく解説した動画は、私のYouTubeチャンネルで公開しています。ぜひご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. なぜイラン国葬が「裏目に出た」と言えるのですか? A. 米イスラエルはハメネイ暗殺でイランの体制が揺らぐと見込んでいましたが、現実には数百万人が集まり、国民の怒りと結束を逆に強めました。現地取材したマックス・ブルメンタール氏は「暗殺が政権交代を促す設計だったなら、この葬儀はそれがどれほど裏目に出たかを示している」と報告しています。
Q2. なぜ金子氏はトランプへの期待を撤回したのですか? A. 昨年のアラスカ会談までは「米露で中国を封じ込める」構図に期待していましたが、今年のイラン紛争でトランプが完全にイスラエルに取り込まれたと判断したためです。娘イヴァンカがクシュナー家に嫁いだ=トランプ・ファミリーがイスラエルに嫁いだ構造で、もはや圧力を跳ね返せないと見ています。
Q3. 「イスラエル・ファーストか共産主義か」とはどういう意味ですか? A. 共和党は福音派とAIPACの支持基盤ゆえイスラエル・ファーストを貫くしかなく、民主党はDSA(社会主義・反イスラエル)の候補が急伸しています。AIPACは両党にばらまくため政権交代でも構造は変わらず、有権者はイスラエル・ファーストか共産主義かの2択を迫られている、というのが本記事の見立てです。
Q4. ネタニヤフの後継者は誰ですか?状況は変わりますか? A. 最有力は元首相ナフタリ・ベネットですが、ネタニヤフよりさらに強硬派とされます。ネタニヤフおろしが進んでも、イスラエルは次の戦争準備に入っており、中東が平和になるにはまだ時間がかかる、というのが金子氏の見方です。

