なぜイスラエルは欧州右派と接近するのか──ネタニヤフ・チクリ・サアールと「Patriots for Europe」15年の接近史

こんにちは。金子吉友です。

昨日は、イスラエルが欧州の反グローバリズム政党を取り込んでいるという話をいたしました。現職の大臣が、自分の口で「深い保守右派と、これまでにない同盟システムを築いた」と認めた、という内容ですね。

今日はその続編です。では、その接近はいつから始まったのか。どうやってここまで来たのか。

正直に申し上げます。調べてみて、私自身が事の重大さに愕然としました。 これは10年、15年というスパンで積み上げられてきたものだったんです。

そして今日お話しする内容は、日本人にとってはあまり馴染みのないテーマかもしれません。 ですが、「イスラエルという国が、いま世界で何をやっているのか」を考えるうえで、これ以上ないケーススタディになります。 私自身、今回はとても学びがありました。

先に、今日の結論の一部を申し上げておきます。 私はこれまで、「反グローバリズムそのものが、イスラエルのマーケティングなのではないか」という仮説を持ってきました。ところが今日の内容を追っていくと、話はもう少し複雑でした。 そこは最後に、正直に申し上げます。

目次

15年かけて進んだ接近──まず年表で全体像をつかんでください

イスラエルと欧州右派の接近を示す2009年からの年表

登場人物が多いので、最初に時間軸だけお見せします。 これを頭の片隅に置いて読み進めていただくと、格段に分かりやすくなります。

  • 2009年前後 ── ネタニヤフ時代の始まり
  • 2010年代 ── オルバン、サルヴィーニ、ウィルダースらとの接近が始まる
  • 2015年 ── 欧州の移民危機。ここが最大の転換点
  • 2018〜19年 ── イスラエルと欧州右派の関係が、目に見えて拡大する
  • 2022年 ── イスラエル国内の右傾化と、欧州右派の台頭が重なる
  • 2023年10月7日 ── ハマスの攻撃が、巨大な加速要因になる
  • 2024〜25年 ── チクリ大臣とサアール外相によって、政府レベルのネットワークへ
  • 2025年2月 ── リクードが「Patriots for Europe」にオブザーバー参加

つまり、昨日お話しした「同盟」は、突然できたものではありません。2010年代から始まっている話なんです。

そして今日、ぜひ覚えて帰っていただきたい名前があります。

イスラエル側は、ベンヤミン・ネタニヤフ、ギデオン・サアール、アミハイ・チクリヨーロッパ側は、ジョルダン・バルデラ、ヘルト・ウィルダース、サンティアゴ・アバスカル、ヴィクトル・オルバン

そして、「Patriots for Europe」という会派の名前です。

そもそも「欧州議会の会派」とは何か──Patriots for Europeという舞台

欧州議会の会派とPatriots for Europeのしくみ

ヨーロッパ政治をあまりご存じない方のために、本当に基本的なところから説明します。

ヨーロッパでは、当然ながらそれぞれの国に、それぞれの政党があります。 フランスにはフランスの政党、スペインにはスペインの政党、オランダにはオランダの政党があります。

ただ、それとは別に「欧州議会」というEU全体の議会があるんです。 そして欧州議会では、各国の似た思想を持つ政党が集まって「会派」を作ります。

今日、覚えていただきたい会派がこれです。

「Patriots for Europe(欧州の愛国者たち)」

  • 2024年6月30日、ウィーンで結成されました(オルバン氏、チェコのバビシュ氏、オーストリアのキックル氏が主導)
  • 同年7月8日に欧州議会で正式に発足
  • 85議席を持ち、欧州議会で第3会派。13か国・15政党が参加しています
  • そして議長を務めているのが、フランスのジョルダン・バルデラ氏です

参加しているのは、フランスの国民連合(RN)、オランダの自由党(PVV)、スペインのVox、ハンガリーのフィデスなど。バラバラだった各国の右派政党が、欧州議会という場で一つにまとまっているわけですね。

そして2025年2月、ここにイスラエルのリクードがオブザーバーとして入りました。 これが今日の話の到達点です。

主役は4人──ウィルダース、アバスカル、オルバン、バルデラ

その前に、昨日の内容を一行で確認しておきます。 いまイスラエル政府が関係を強化している欧州の政党は、イギリスのリフォームUK、フランスの国民連合、スペインのVox、スウェーデン民主党、オランダのPVV、ハンガリーのフィデスイタリアのメローニ首相は、世論を見ながらイスラエルを批判するときは批判するという柔軟な立ち位置を取っており、ドイツについてはイスラエル政府がいまも公式接触を避けています。

なぜこのテーマを、これほど詳しく見る必要があるのか。理由をはっきり申し上げます。

イスラエル政治については「ネタニヤフ政権は右派政権だ」という説明をよく聞きます。 ですがイスラエル国内だけを見ていると、いま起きている政治変化の一部分しか見えません。 ヨーロッパでも、移民問題・イスラム主義・国家主権・EUへの反発・文化的アイデンティティを掲げる右派政党が急速に伸びている。そしてイスラエル側も、その政党との関係を積極的に作っている。

つまり、イスラエルの右派政治と、ヨーロッパの右派政治が、国境を越えて接続され始めているんです。 この関係を知っていると、「なぜヨーロッパのこの政治家が、ここまでイスラエルを支持するのか」というニュースが、一気に理解できるようになります。

では、Patriots for Europeの中心にいる4人を、一人ずつ見ていきます。

① オランダ ヘルト・ウィルダース──思想的な先駆者

オランダのヘルト・ウィルダースとイスラエルの関係

オランダの自由党(PVV)の党首です。

今日登場する欧州右派の政治家の中でも、この人物はとりわけ重要です。なぜなら彼は、かなり早い時期から「反イスラム」と「親イスラエル」をセットで主張してきた人物だからです。

政治的な特徴は、移民の制限、イスラム主義への強い警戒、そして非常に強いイスラエル支持

彼にとってイスラエルは、単なる遠い外国ではありません。

「イスラエルは、西洋文明がイスラム過激主義と戦っている最前線である」

これが彼の世界観です。しかもこの考え方は、2000年代からまったく一貫しています。 若い頃にエルサレムに住んでいた経験があり、2009年のエルサレムでの演説では「我々はローマ、アテネ、エルサレムから来た」と述べ、2010年12月5日のテルアビブでの演説では「イスラエルは西洋の戦いの最前線だ」と語っています。

これは、アメリカのネオコンの主張と非常によく似ています。 ネオコンは「イスラエルは中東における唯一の民主主義国家であり、民主主義の砦だ」と言ってきました。ウィルダース氏はそれをさらに広げて、「民主主義」ではなく「西洋文明」というレベルで語っているわけです。

そして2024年12月、彼はイスラエル国会のアミール・オハナ議長から、イスラエルへの長年の支持を理由に「ジャボチンスキー自由賞」を授与されました。 受賞スピーチでの言葉が、「イスラエルが倒れれば、次は西側だ」

そしてその授賞式の場にいたのが、アミハイ・チクリ大臣です。 ウィルダース → チクリ → イスラエル政府。この線が、ここで見えてきます。

② スペイン サンティアゴ・アバスカル──Voxとチクリの人的ネットワーク

スペインのサンティアゴ・アバスカルとチクリ大臣の関係

政党はVox(ボックス)です。掲げているのは、スペイン国家の統一、移民規制、イスラム主義への警戒、保守的な価値観、そしてEUの中央集権への反発。 昨日ご紹介したとおり、チクリ大臣が「スペインでもっともシオニスト的な声」と評した人物ですね。

  • 2023年10月7日のハマスの攻撃後、アバスカル氏はイスラエル支持を強く表明
  • 2023年12月にはイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相とチクリ大臣と会談
  • 2024年5月、Voxの党大会「VIVA24」にチクリ大臣が登壇
  • 同年5月29日には、チクリ大臣とともにエルサレムの「ダビデの町」を視察

アバスカル ↔ チクリ。ここにも、はっきりとした人的ネットワークがあります。

③ ハンガリー ヴィクトル・オルバン──国家レベルの関係を築いた先駆者

ハンガリーのヴィクトル・オルバンとイスラエルの関係

政党はフィデス。 特徴はキリスト教保守、ハンガリーの国家主権、移民への強硬姿勢、EU中央集権への反発です。

オルバン氏は、ネタニヤフ首相との関係をかなり以前から築いてきました。

ウィルダース氏が「思想的な先駆者」だとするなら、オルバン氏は「国家レベルの関係を築いた先駆者」です。 日本の保守界隈でも人気の高い政治家ですが、イスラエルとこれほど古くから緊密だったことは、あまり知られていません。

なお、オルバン氏は2026年4月の総選挙で敗れ、現在は野党の側にいます。16年ぶりの政権交代でした。

④ フランス ジョルダン・バルデラ──ルペン三代と「脱悪魔化」

ジョルダン・バルデラとルペン三代の脱悪魔化

そして現在、このネットワークの中心にいる人物が、フランスにいます。

ジョルダン・バルデラ氏。フランスの国民連合(RN)の党首です。 マリーヌ・ルペン氏ではありません。党首は彼なんです。

そしてもう一つ、重要な肩書きがあります。 Patriots for Europeの議長です。

まだ30代前半という若さで、欧州議会の一会派を任せられるだけの実力を持っている。 そしてマリーヌ・ルペン氏と並ぶ、いやそれ以上に有力な次期大統領候補とも言われています。

ここで、この政党の歴史を押さえてください。

  • 国民連合(RN)の前身は「国民戦線(フロン・ナシオナル)」。創設者は、マリーヌ・ルペン氏の父であるジャン=マリー・ルペン氏
  • この政党は長年、反ユダヤ主義や歴史修正主義との関係を強く批判されてきました
  • ところが娘のマリーヌ・ルペン氏の時代から、党のイメージを大きく作り変えていきます

これが「脱悪魔化」と呼ばれる戦略です。「我々は、昔の極右政党ではない」というリブランディングですね。

そしてその戦略の中で、もっとも重要な柱の一つが「反ユダヤ主義と距離を置くこと」、そして「イスラエルとの関係改善」でした。

マリーヌ・ルペン氏の親イスラエル的な発言が目立つのは、この脱悪魔化戦略の一手段でもあるということです。

そしてその流れを引き継いでいるのが、バルデラ氏です。 彼自身もチクリ大臣と何度も会談しています。2025年2月21日には、ワシントンで開かれたCPAC(保守政治行動会議)で会談し、議題には「Patriots for Europeとの今後の共同プロジェクト」が入っていました。

欧州右派会派のトップと、イスラエル政府の担当大臣が、直接関係を作っている。ここは非常に重要な結びつきです。 一政治家、一政党の話ではありません。欧州全体の右派会派を率いるトップと、イスラエル政府の大臣なんです。

転換点は2015年──欧州移民危機が、二つの政治言語を近づけた

2015年の欧州移民危機が転換点になった構図

では、いつから本格的に接近したのか。

2009年前後、ネタニヤフ氏が再び首相となり、長期のネタニヤフ時代が始まります。2010年代には、オルバン氏、イタリアのマッテオ・サルヴィーニ氏、ウィルダース氏など、ヨーロッパのナショナリスト右派との関係を徐々に広げていきました。

ただしこの時点では、まだ組織的なネットワークではありません。個々の政治家同士の関係が中心でした。

そして、大きな転換点が訪れます。2015年です。

シリア内戦などを背景に、ヨーロッパへ大量の難民・移民が流入しました。いわゆる欧州難民危機、移民危機です。

この出来事によって、「移民」がヨーロッパ政治の中心テーマの一つになりました。 そしてオルバン、ウィルダース、サルヴィーニ、ルペン、のちのアバスカルといった右派政治家が、一気に存在感を強めていきます。

彼らが訴えたのは、国境管理、移民制限、イスラム主義への警戒、そして国家の文化的アイデンティティです。

一方でイスラエルは、以前から「イスラム過激主義やテロとの戦い」を国家安全保障の中心課題としてきました。

ここで、ヨーロッパ右派とイスラエル右派の「政治言語」が、近づき始めるわけです。

なぜ「反イスラム」と「親イスラエル」が結びつくのか

反イスラムと親イスラエルが結びつく共通言語の図解

ここが今日、いちばん理解していただきたい部分です。

まず、大事な前提を置きます。

イスラム教そのものと、イスラム主義は、同じではありません。これは必ず分けて考えなければなりません。

今回問題になっているのは、主に「政治的イスラム」「急進的イスラム主義」「イスラム過激派」「テロ組織」に限定される話です。宗教そのものではありません。

そのうえで、両者の認識を並べてみてください。

  • ヨーロッパ右派は、イスラム過激主義をヨーロッパの社会秩序や文化への脅威として語る
  • イスラエルは、ハマス、ヒズボラ、イランなどをイスラム主義的な脅威として捉える

すると、両者の間に「我々は共通の脅威と戦っている」という認識が生まれるわけです。

さらにここに「西洋文明」という言葉が登場します。

ウィルダース氏はイスラエルを「西洋文明の最前線」として捉えてきました。そしてイスラエル側の一部の政治家も、イスラエルとヨーロッパを「ユダヤ・キリスト教文明」という文脈で結びつけます。

イスラエルがよく強調するのが、この「ユダヤ・キリスト教文明」という括り方です。 「キリスト教はユダヤ教から生まれた。だから我々は運命共同体である」——こうやって括ってくるんですね。

つまり「イスラム主義への警戒」と「西洋文明の防衛」という二つの言葉が、イスラエル右派と欧州右派を強く結びつける共通言語になったということです。

そして2010年代後半、この関係はより目に見える形になっていきます。 ネタニヤフとオルバン。ネタニヤフとサルヴィーニ。イスラエルとVox。イスラエルとウィルダース。こうした関係が、どんどん増えていきました。

ここには、双方に政治的なメリットがあります。

  • イスラエル側のメリット:欧州右派がイスラエル支持を打ち出せば、ヨーロッパ各国や欧州議会で、イスラエルを支持する政治勢力が増える
  • 欧州右派側のメリット:とくに歴史的に反ユダヤ主義との関係を批判されてきた政党にとって、イスラエル支持は「我々は反ユダヤ主義者ではない」という政治的メッセージになる

反ユダヤ主義をめぐる、大きな逆転──二つの見方があります

反ユダヤ主義をめぐる欧州右派の逆転を示す図解

ここが、今日いちばん興味深いところです。

かつて、ヨーロッパの極右勢力の一部は、反ユダヤ主義と強く結びついていました。 とくにジャン=マリー・ルペン時代のフランス国民戦線は、その代表例です。

ところが現在、その後継政党であるRNは、反ユダヤ主義を強く批判し、イスラエルとの関係を改善しています。

完全な逆転です。なぜこんなことが起きたのか。見方は二つあります。

① 本当に政治思想が変化した

旧来の反ユダヤ主義を捨て、現在はイスラム主義や移民問題を主要な政治課題としている——という見方ですね。

② イスラエル支持を、政治的な「正常化戦略」として使っている

イスラエルを支持することで「我々はもう昔の極右ではない」と示す。つまりイスラエルを利用する形で、リブランディングを図っている——という見方です。

「極右」というレッテルを貼られてきた理由の一つが、反ユダヤ主義的な過去でした。 それを洗い流し、「我々はもう反ユダヤ主義ではない」と示す。 これが脱悪魔化の中身です。

そして、イスラエル側にも批判があるんです。

「過去に反ユダヤ主義との関係を持っていた政党を、反ユダヤ主義対策のパートナーとして受け入れていいのか」

イスラエル国内にも、この疑念はあります。「彼らを本当に信用していいのか。昔の発言を、我々は覚えている」と。

つまりこの連携は、イスラエル国内でも無批判に受け入れられているわけではありません。それでもイスラエル政府は、それを分かったうえで、この関係を強固にしてきているということです。

個人から政府へ──チクリとサアール、そしてリクードのPfE参加

橋渡し役となったアミハイ・チクリ大臣の相関図

2022年、双方の変化が重なります。

イスラエルではネタニヤフ氏が首相に復帰しました。しかも、これまで以上に右派・宗教右派を含む政権です。 一方ヨーロッパでも、右派・ナショナリスト政党が各国で支持を拡大していました。

イスラエル政治の右傾化と、ヨーロッパ右派の台頭が、同じ時期にシンクロしたわけです。

そしてこの政権で、非常に重要な人物が登場します。アミハイ・チクリ氏です。

  • 1981年エルサレム生まれ。ゴラニ旅団の少佐
  • 2010年に青年教育機関を設立し、ヤミナから初当選。ベネット連立に反対して離れ、2022年にリクードへ。同年12月に入閣
  • 現在の職は、ディアスポラ問題・反ユダヤ主義対策担当大臣

彼が積極的に進めているのが、ヨーロッパ右派との人的ネットワーク作りです。 アバスカル、バルデラ、ウィルダース、オルバン。欧州右派のイベントに自ら参加し、逆に欧州右派の政治家をイスラエルの会議に招く。

チクリ氏は、イスラエルと欧州右派をつなぐ「橋渡し役」なんです。

そして2023年10月7日。ハマスによる大規模攻撃が起こります。

イスラエル側では「イスラム主義テロとの戦い」という認識がさらに強くなり、ヨーロッパ右派の政治的世界観と、より強く重なるようになりました。

ただし、10月7日はゼロから関係を作った出来事ではありません。すでに存在していた流れを、一気に加速させた出来事だと見るべきです。これは私の見立てです。

そしてもう一人、決定的な人物がいます。ギデオン・サアール外相です。

この人の経歴も、押さえておく価値があります。 1966年生まれ。リクードで教育相・内相を歴任した大物ですが、2020年12月にリクードを離党しています。 その理由が印象的です。「党が、首相個人の道具になった」つまり一度はネタニヤフ氏に反旗を翻した人物なんです。 その後2021年に法相、2024年11月に外相となり、2025年3月にはリクードへ復帰しました。 かつて「首相の私物化」を批判して党を出た人物が、いま外務省を動かして欧州右派との公式チャンネルを作っている。ここに、この政策がネタニヤフ氏個人の趣味ではなく、イスラエルという国家の方針であることが表れていると私は見ています。

ここで、チクリ氏とサアール氏の役割を分けて見ると、構造がはっきりします。

  • チクリ大臣 ── 人的・政治的なネットワーク作り
  • サアール外相 ── 外交政策

2025年2月24日、サアール外相はイスラエル外務省に対し、ヨーロッパの右派政党との「正式なコミュニケーション・チャンネル」を構築するよう指示しました(ハアレツ報道)。対象は、フランスの国民連合、スペインのVox、スウェーデン民主党の3党です。

ここが非常に大きい。

それまで「チクリという政治家が、欧州右派と交流している」という話だったものが、「イスラエル外務省の外交政策」へと一段階進んだわけです。 外務大臣が外務省に指示したということは、ネタニヤフ政権としてそう決めたということです。

そして2025年2月、象徴的な出来事が起きます。

ネタニヤフ首相率いるリクードが、Patriots for Europeにオブザーバーとして正式に参加しました。非欧州の政党としては、初めてです。

これまで個別にイスラエルと関係を作ってきた政治勢力が、欧州議会の一つの会派としてまとまり、そこにイスラエルの与党が接点を持つようになった。

個人的な関係から、政党・政府レベルのネットワークへ。ここで完全に一段階上がったんです。

※参照:Haaretz/Times of Israel(サアール外相の指示とリクードのPfE参加) https://www.timesofisrael.com/hosting-europes-far-right-again-minister-says-diaspora-criticism-just-a-disagreement/

まとめ──「操っている」のではありません。共依存です

イスラエルと欧州右派のネットワーク全体像

ここで、非常に大事な注意点を申し上げます。単純化してはいけません。

これは「イスラエルが欧州右派を操っている」という話ではありません。 一方的にイスラエルが欧州右派を支配下に置こうとしている、という話ではないんです。

そして「欧州右派は全部同じ思想だ」という話でもありません。 オルバンとウィルダースは違います。アバスカルとバルデラも違います。各国の歴史も、国内事情も、国益も、まったく違うメンバーです。

さらに、Patriots for Europeそのものがイスラエル支持のための団体というわけでもありません。 会派の主軸は、EU、移民、国家主権です。

彼らを結びつけているのは、一致する政治テーマが存在するということです。 移民、イスラム主義、国家主権、文化的アイデンティティ、反ユダヤ主義、西洋文明、イスラエル支持。こうした論点の一部が重なることで、国境を越えた政治的な関係が形成されている。そう見るのが、いちばん正確です。

そして、ここからが今日の私の結論です。

私はこれまで、「反グローバリズムというもの自体が、イスラエルのマーケティングなのではないか」という疑いを持って見てきました。グローバリズム対反グローバリズムという二極のナラティブを作り出し、反グローバリズムを盛り上げているのではないか、と。

ところが、今日の歴史を追ってみて分かりました。

何のことはない、両者が共通の政治課題を持っていて、お互いを利用する形で、それぞれの思惑を持ってくっついていた——という話なんです。

イスラエルは、欧州議会での支持勢力が欲しい。欧州右派は、「極右」というレッテルを洗い流す通行証が欲しい。

つまり両者は、共依存の関係にあるということです。ある種、いやらしい構造ですよ。

そしてもう一つ、はっきり申し上げておきたいことがあります。

反グローバリズム政党が政権を取ること自体は、私は好ましいと思っています。 反移民であること、行き過ぎたリベラルへの反発、そして何より国益を重視すること。 これはまったく好ましい。

ですが、その政党とイスラエルとの関係が、政権を取った後にさらに深まっていく。この危険性については、警戒しておかなければなりません。

フランスのマクロン大統領はもう支持率がガタガタで、次の大統領選ではマリーヌ・ルペン氏、あるいはバルデラ氏が勝つ可能性があります。 イギリスでもリフォームUKが圧倒的な強さを見せている。ここ数年のうちに、反グローバリズム政党が実際に政権を取る。そこまで来ているんです。

そして、最後に申し上げたいのはこれです。

イスラエルという国は、自国の国益と安全保障のためなら、どのような勢力とも手を組みます。 かつて反ユダヤ主義で批判された政党とさえ組む。そしてそれを、10年、15年というスパンで、淡々とやってきた。

大局を見て、10年先、20年先、いや100年先まで考えて動いている。だから「グレーター・イスラエル構想」というのは、寝言ではないんです。現実に、それを目指して動いているということなんですよ。

その意味では、20年先30年先を見据えて国家計画を立てる中国と、構造がよく似ています。

では、日本はどうか。

日本はこの西側のグループにどっぷりと浸かっていますそしてイスラム側には、中国とロシア、そして宗派の異なるイランまでもが団結しつつある。 この構図に片足どころか全身を突っ込んだままでいるのは、極めて危険です。

速やかに中立の立場へ移行し、ロシアとの関係を回復し、中国とは——嘘でもいい、仲良くするふりをする。 意図的に戦争へ近づいていくようなことだけは、絶対にやってはいけません。

表層ではなく、構造を見てください。そして、誰が得をするのかで見てください。

真の独立とは、真の主権とは、何か。 イスラエルという国の10年15年の動き方は、皮肉なことに、その問いへの答えを実演してみせてくれています。

ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。

今回の内容をさらに詳しく解説した動画は、私のYouTubeチャンネルで公開しています。ぜひご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. Patriots for Europeとは何ですか?

欧州議会の会派の一つです。2024年6月30日にウィーンで結成され、7月8日に正式発足しました。 85議席を持つ第3会派で、13か国15政党が参加。議長はフランス国民連合のジョルダン・バルデラ氏です。 2025年2月、イスラエルのリクードが非欧州政党として初めてオブザーバー参加しました。

Q2. イスラエルと欧州右派の接近は、いつから始まったのですか?

2009年前後のネタニヤフ時代の開始が起点で、2010年代に個々の政治家同士の関係として広がりました。 決定的な転換点は2015年の欧州移民危機です。 2023年10月7日のハマスの攻撃は、ゼロから関係を作ったのではなく、すでにあった流れを一気に加速させた出来事だと私は見ています。

Q3. 「脱悪魔化」とは何ですか?

フランス国民連合(旧・国民戦線)が進めてきた、党のイメージを作り変える戦略です。 創設者ジャン=マリー・ルペン氏の時代に反ユダヤ主義や歴史修正主義との関係を批判されてきたため、娘のマリーヌ・ルペン氏の代から反ユダヤ主義と距離を置き、イスラエルとの関係改善に力を入れました。 その流れをバルデラ氏が引き継いでいます。

Q4. 結局、イスラエルが欧州の右派政党を操っているということですか?

いいえ、そう単純化すべきではありません。 欧州右派の側も、「極右ではない」というリブランディングのためにイスラエルとの関係を利用しています。つまり双方に利益がある共依存の関係です。 Patriots for Europe自体も親イスラエル団体ではなく、会派の主軸はEU・移民・国家主権です。

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この記事を書いた人

反DS歴史研究者、調査ジャーナリスト。YouTube『あつまれニュースの森』(登録者10万人)にて反グローバリズムの視点で世界情勢・国内政治を解説。

本業だったコンサルタントから徐々に歴史研究にシフトしていく。日々リサーチする中、メディアや歴史が嘘だらけであり、この世界が一部の権力機構によって支配されてきたことに強烈な違和感と憤りを覚えるようになる。

グローバリズムの根源と実態を徹底的に研究。その歴史を旧約聖書まで遡り、現在のいわゆるディープステートのルーツがユダヤ系とアングロサクソン系の2系統にあることを突き止める。

2021年、YouTubeを開始し、グローバリストのルーツを徹底解剖するオンラインサービス『金子ゼミ』を立ち上げる。

グローバリストにより”修正”された歴史を”修復”する「歴史復元主義」を根本理念とする。

情報発信者としての信条は「左も右もない反グローバリズム・国益第一主義」「不偏不党」。

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