フランス暴動と日本政府の大量移民政策の闇

フランス暴動と、日本の大量移民政策の闇

こんにちは。金子吉友です。

2026年9月16日、東京。そして2026年10月17日、ダッカ。 この2つの日付と場所を並べて書いた1枚の文書が、厚生労働省のサイトに静かに掲載されています。日本国法務省・外務省・厚生労働省・警察庁と、バングラデシュ人民共和国海外移住者福利厚生・海外雇用省との間の、育成就労制度に関する協力覚書です。

10月26日からバングラデシュのタリク・ラーマン首相が来日します。報道では「訪日中に労働者の受け入れが焦点になる」と書かれています。しかし覚書はもう署名が終わっています。 首脳会談で交換されるのは、署名済み文書の写しです。つまり、首脳が会う前に、決定は終わっている。

しかもこれはバングラデシュだけの話ではありません。日本政府は2026年5月20日から10月17日までの4か月半ほどの間に、6か国と同じ覚書を結んでいます。 タイ、ウズベキスタン、スリランカ、ラオス、東ティモール、バングラデシュ。すべて一次資料で確認できます。

前半では、昨日の配信の続きとしてパリの学生デモを暴動に変えた団体の顔ぶれを、Fox Newsの調査報道と米国の税務申告書から追います。後半で、この育成就労の覚書を一次資料で読み解きます。この2つは、まったく別の話に見えて、地続きです。

パリの抗議と日本の覚書、同じ2026年10月に並んだ
パリの抗議と日本の覚書、同じ2026年10月に並んだ

目次

フランスの学生デモを乗っ取った50団体──Fox Newsが名指しした顔ぶれ

前回の記事でお伝えしたとおり、10月6日にピークを迎えたパリの学生デモは、高校生の教育環境への不満から始まったものでした。冷房もない、教員が足りない、という生活実感の訴えです。ところがそれが、わずか数日で暴動に変わった。

Fox News Digitalの調査報道担当シニア・エディター、アスラ・Q・ノマニ(Asra Q. Nomani)氏が2026年10月9日に公開した調査記事は、この変質の中身を団体名のレベルで洗い出しています。

50団体のうち、学生・青年団体はわずか15

ノマニ氏が特定したのは、このデモのエコシステムに関わった50団体です。そのうち学生・青年団体は15。残る35は成人の団体でした。

内訳はこうです。

  • 労働組合:12団体
  • 共産主義・社会主義組織:8団体
  • 市民権・人権団体:5団体
  • 政党:4団体
  • パレスチナ支持団体:1団体
  • その他(税制・保護者・環境・経済的正義・国際メディア・ディアスポラ組織など):5団体

つまり、「学生の自発的なデモ」という説明は、参加団体の構成からすでに崩れているということです。3分の2は学生でも何でもない、大人の政治団体です。

パリのデモに関わった50団体のうち、学生団体は15
パリのデモに関わった50団体のうち、学生団体は15

なお、ノマニ氏本人はX(旧Twitter)で「54団体のうち16」という数字も出しています。記事本文は50団体・15団体ですので、本記事では記事本文の数字を採ります。(前回の記事ではノマニ氏の投稿にもとづき54団体としていました。出どころが違うだけで、構成比の話は変わりません。) 配信で「50団体のうち3分の1が学生」と申し上げた点は、記事の数字(15/50)と合っています。

「階級闘争」の横断幕を掲げたのは誰か

デモの映像に映っていた赤い旗。あれは学生労働組合連盟(Fédération Syndicale Étudiante)のものです。そして「階級闘争」と書かれた横断幕を掲げていたのが、フランス青年共産主義運動(Mouvement Jeunes Communistes de France)。フランス共産党と緊密に連携している青年組織です。

参加者の多くが顔を覆っていた白と黒の格子柄のスカーフは、ケフィエと呼ばれるアラブの伝統的な布で、パレスチナ連帯の象徴として使われます。

この青年共産主義運動は、Instagramで「民主主義・反ファシズム監視委員会」の発足を宣言しました。その文面がこうです。「高校生は放置され、親パレスチナ活動家は迫害され、労働組合員は解雇された」。

高校生の教育環境の話と、パレスチナ活動家の話と、労働組合の話を、1つの文章で無理やり結んでいる。 これが乗っ取りの手口です。

パリのデモに翻る共産主義の旗と「階級闘争」の横断幕
パリのデモに翻る共産主義の旗と「階級闘争」の横断幕

フランス共産党の全国書記が、高校生のデモに立った

そして決定的なのがこれです。フランス共産党の全国書記ファビアン・ルーセル(Fabien Roussel)氏が、10月6日のデモに参加し、参加者と撮った写真をXに投稿しました。

投稿で訴えていたのは何か。「パレスチナでの虐殺への武器供与をやめろ」です。

もう一度確認します。高校生が訴えていたのは、自分たちの学校の環境です。 そこに一国の共産党のトップが現れて、中東の武器供与の話をする。関係があるんですか。

ほかにも革命左派の組織が複数、名前を連ねています。

  • 新反資本主義党(Nouveau Parti anticapitaliste)
  • Le Poing Levé(拳を突き上げる者たち)
  • Révolution Permanente(永続革命)

Le Poing Levé と Révolution Permanente は、記事によれば高校生と大学生の連帯を後押しする役割を担っていました。「連帯を後押しする」というのは、つまり組織化するということです。

フランス共産党のトップもデモに加わった
フランス共産党のトップもデモに加わった

ルイ・ボヤール議員と、キャンパスに翻ったパレスチナの旗

50団体のネットワークには、フランスのムスリム学生(Étudiants Musulmans de France)、Urgence Palestine(パレスチナ緊急行動)といった団体も入っています。

そして、不服従のフランス(La France Insoumise/LFI)の下院議員ルイ・ボヤール(Louis Boyard)氏は、パリ・エスト・クレテイユ大学で学生がキャンパスを封鎖するなか、パレスチナの旗を振っていたと記事は伝えています。

ここで、ヘリテージ財団の上級研究員マイク・ゴンザレス(Mike Gonzalez)氏が、この状況を「レッドグリーン・エコシステム(red-green ecosystem)」と呼んでいます。

私がこのチャンネルで何度も申し上げてきたレッドグリーン同盟──マルクス主義(赤)とイスラム主義(緑)の連携という言葉は、私が勝手に名付けたものではありません。イスラエルのメディアでも使われ、今回はFox Newsの記事とヘリテージ財団の研究員の口からも出てきた、通用している言葉です。

赤と緑が握るのは、反シオニズムなど4点だけ
赤と緑が握るのは、反シオニズムなど4点だけ

思想も価値観もまるで違う両者が、なぜ手を結ぶのか。反シオニズム、反イスラエル、反西洋文明、反資本主義。 この4点で握るからです。

※参照:Fox News

学生デモに掲げられたパレスチナの旗
学生デモに掲げられたパレスチナの旗

パリとニューヨークを結ぶ線──ネビル・ロイ・シンガムの資金網

ここからが、昨日の話とつながるところです。パリの学生デモの現場に、ニューヨークの資金網の線が伸びている。

パリの団体が、マンハッタンでNATO反対集会を共催した
パリの団体が、マンハッタンでNATO反対集会を共催した

2023年1月、マンハッタンで開かれた「NATO反対」の集会

フランスを拠点とするIndian Alliance Parisという小さな団体があります。フランス在住の学生・研究者・専門家による組織で、「民主的で平等なインドを目指す」と掲げています。

この団体が2023年1月、ニューヨーク・マンハッタンの The People’s Forum(ピープルズ・フォーラム)でNATO拡大に反対する集会を共催していました。そしてこの団体は、10月7日にX上でフランスの学生運動への支持を表明しています。

共催した団体の顔ぶれがこうです。

  • DSA(アメリカ民主社会主義者/Democratic Socialists of America)
  • CodePink(コードピンク)
  • PSL(社会主義解放党/Party for Socialism and Liberation)

ピープルズ・フォーラム、コードピンク、PSL。この3つは常にセットで動きます。シンガム・ネットワークそのものです。

ピープルズ・フォーラムは、上海を拠点とする米国生まれのIT長者ネビル・ロイ・シンガム(Neville Roy Singham)氏が2017年に設立した団体です。Fox Newsの記事は、設立資金を2,224万ドルと書いています。そしてコードピンクは、シンガム氏から133万ドルを受け取っているとされます。コードピンクを率いているのは、シンガム氏の妻ジョディ・エバンス氏です。

DSAとマムダニ市長──レッドグリーン同盟のアメリカ版

共催団体にDSAが入っていたことに、私は引っかかりました。

DSAはアメリカ最大の社会主義組織で、会員は10万人を超えると言われます。そしてニューヨーク市長のゾーラン・マムダニ氏はDSA所属です。一般会員まで過激というわけではありませんが、幹部層は紛れもなくマルクス主義を掲げています。ネビル・ロイ・シンガム氏自身も、自らをマルクス主義者と認めている人物です。

マムダニ氏を支える資金の流れをたどると、CAIR(米国イスラム関係評議会)というアメリカ最大級のイスラム系ロビー団体が出てきます。そしてCAIRと関わりが深いのがムスリム同胞団です。

ニューヨーク市長を支えるのは、赤と緑の二つの勢力
ニューヨーク市長を支えるのは、赤と緑の二つの勢力

DSAという赤い勢力と、CAIRに連なる緑の勢力。 マムダニ氏という1人の市長の背後で、この2つが同じ方向を向いている。これがアメリカにおけるレッドグリーン同盟の現在地です。

ここは線を引いておきます。CAIRからマムダニ氏の陣営に直接資金が渡ったという証拠が公表されているわけではありません。 複数の組織をまたいだ資金の流れとして指摘されているもので、団体同士のつながりと、資金が「組織された」ことは、別の話です。つながりの指摘が、そのまま「誰かが暴動を指示した」証明にはなりません。

※参照:Fox News

パリの学生デモとニューヨークのシンガム・ネットワークをつなぐ線
パリの学生デモとニューヨークのシンガム・ネットワークをつなぐ線

デモは誰が組織しているのか──ネイト・フリードマン氏が税務申告書で追ったもの

ここで、シンガム・ネットワークを独自に追い続けている人物を紹介します。

税務申告書を開けば、誰が給料をもらっているか分かる
税務申告書を開けば、誰が給料をもらっているか分かる

ストリート取材と Form 990

ネイト・フリードマン(Nate Friedman)氏。ニューヨークを拠点とする独立系の調査ジャーナリストで、YouTubeの「Nate Friedman Show」は登録者約49万人を数えます。

彼の手法は2つです。

  • ストリート・ジャーナリズム──デモの現場に行き、当事者に直接マイクを向ける
  • IRS Form 990 の分析──アメリカの非営利団体が内国歳入庁(IRS)に提出する税務申告書を突き合わせる

Form 990には、役員の氏名と報酬が記載されます。 誰がいくらもらっているかが公開情報として残る。ここを追えば、「草の根」という看板の裏側が見えるわけです。

なぜ彼はピープルズ・フォーラムを追い始めたのか

フリードマン氏が挙げている、2023年以降のニューヨークの大規模デモの共通点がこうです。

  • 同じ顔が何度も出てくる
  • プラカードの準備が異常に早い(まるで事前に用意されていたかのように)
  • 抗議を阻止しようとする動きがある

反イスラエルのデモ、ICE(移民・関税執行局)に反対するデモ、親パレスチナのデモ。別々のテーマのはずなのに、現場に出てくる人間と段取りが共通している。

彼はピープルズ・フォーラムを「デモのインキュベーター(孵化器)」と呼んでいます。そして結論はこうです。これらのデモは自然発生ではなく、フルタイムで給料をもらっているプロのオーガナイザーが動かしている。

独立系記者ネイト・フリードマンが追う「デモの資金源」
独立系記者ネイト・フリードマンが追う「デモの資金源」

名指しされた3人の幹部と、その報酬

フリードマン氏がForm 990から拾い上げたピープルズ・フォーラムの幹部が3人います。

  • ① デビッド・チョン(David Chung)──組織化担当ディレクター。韓国系。ニューヨーク市立大学ハンター校出身。フリードマン氏が路上で直接「給料はいくらですか」と問うと、「ノーコメント」を繰り返した
  • ② ラヤン・フレイハン(Layan Fuleihan)──教育ディレクター。パレスチナ系でコロンビア大学出身。2023年10月に「Long live Palestinian resistance!!(パレスチナの抵抗万歳)」と投稿している
  • ③ マノロ・デ・ロス・サントス(Manolo De Los Santos)──事務局長。実質的なトップ。キューバ訪問歴などからフリードマン氏は共産主義者と位置づけている

報酬については、公開されている申告書と照らし合わせると、チョン氏・フレイハン氏はいずれも7万ドル台です。日本円でおよそ1,100万〜1,200万円という水準になります。

ここが重要なのですが、デ・ロス・サントス氏はピープルズ・フォーラムの申告書上、報酬が0ドルと記載されています。 フリードマン氏の主張は、彼は同じシンガム系の Justice and Education Fund という別団体から報酬を受け取っている、というものです。

つまり団体をまたいで報酬を分けることで、1つの申告書だけを見ても実態が見えない構造になっている。 これが、彼が「複数の990を突き合わせる」と言っている意味です。

ここも線を引いておきます。フリードマン氏が示している「3人で合計25万ドル超」という数字は、彼自身の集計であって、1枚の公開申告書でそのまま確認できる数字ではありません。 年度の異なる数字や、別団体からの支払いを合算した推定が含まれます。「報酬を得ている専従者がいる」という事実と、合計額の正確さは、分けて扱うべきです。

「草の根」ではなく「給料をもらうプロ」が組織している
「草の根」ではなく「給料をもらうプロ」が組織している
フリードマンが名指しした3人の幹部
フリードマンが名指しした3人の幹部

ゴールドマン・サックスの寄付ファンドを経由した2,224万ドル

では、その人件費はどこから出ているのか。

ネビル・ロイ・シンガム氏は、団体に直接カネを渡しません。 間にドナー・アドバイズド・ファンド(Donor-Advised Fund=寄付者助言基金)を挟みます。そのファンドが、ゴールドマン・サックスの慈善基金でした。

Fox Newsの記事によれば、ピープルズ・フォーラムはこのルートで2,224万ドルの資金を得ています。日本円で約33億円(1ドル150円換算)という規模です。

基金を一つ挟むと、資金の出し手が見えなくなる
基金を一つ挟むと、資金の出し手が見えなくなる

この件については、すでに公の動きが始まっています。

  • 米下院歳入委員会(House Ways and Means Committee)が、この資金網の調査を財務省とIRSに要請
  • 関連して、ニューヨーク南部地区で大陪審による捜査が行われていると報じられている
  • ゴールドマン・サックス側は「分配先はすべてIRSが認定した合法的な非営利団体である」「2023年8月以降この口座からの分配はなく、2024年初めに口座は閉鎖された」と説明している

寄付者助言基金というのは、「誰が出したか」を見えにくくする仕組みです。寄付者は基金に入れる。基金が団体に配る。書類上は「ゴールドマン・サックスの基金からの寄付」になる。合法です。合法だからこそ、使われる。

ロサンゼルスの暴動でも、PSL、ピープルズ・フォーラム、そしてANSWER連合という3つの組織が中心にいて、そのすべてにシンガム氏の資金が流れていることが明らかになっています。資金の出どころはシンガム氏だけではありません。オープン・ソサエティ財団(ソロス系)の資金を受けたIndivisibleが反トランプ集会を主催していたことも判明しています。

カラクリは、驚くほどシンプルです。

※参照:Fox News ProPublica Nonprofit Explorer(Peoples Forum Inc の Form 990)

資金の出どころは上海在住の富豪シンガム
資金の出どころは上海在住の富豪シンガム

日本とバングラデシュが交わした「育成就労」の協力覚書──一次資料で読む

ここからが本題です。育成就労という制度そのものの成り立ちについては、こちらの記事で、スペインのセウタからIOM、そして日本の育成就労まで一本でつながる構造として扱いました。

東京とダッカ、2つの都市で署名された協力覚書
東京とダッカ、2つの都市で署名された協力覚書

2026年9月16日 東京、10月17日 ダッカ

厚生労働省が公開している和文仮訳の末尾に、こう書かれています。

> この覚書は、英語によって2通作成され、2026年9月16日に東京において、2026年10月17日にダッカにおいて署名された。

署名したのは、日本側が法務省・外務省・厚生労働省・警察庁の4省庁。バングラデシュ側が海外移住者福利厚生・海外雇用省(MoEWOE)です。

有効期間についても、同じ文書にこう書かれています。

> この覚書に基づく協力は、後記の署名の日から5年続くものとし、日本の省庁又はMoEWOEのいずれかから、終了する日の60日前までに延長しないことを希望する旨の書面による通告がない限り、自動的に5年間延長される。

「5年」と書いてありますが、実質は10年です。 終了60日前までにどちらかが「やめます」と書面で通告しない限り、自動的に5年延長される。何もしなければ10年続く、という設計です。

育成就労制度そのものは、2027年4月1日にスタートします。

日本とバングラデシュ、「育成就労」の協力覚書に署名済み
日本とバングラデシュ、「育成就労」の協力覚書に署名済み

覚書は何を決めたのか──送り出しと受け入れのルール

内容は、ひとことで言えば送り出しと受け入れのルール作りです。

  • バングラデシュ側の送出機関を両国政府が認定し、リストを公表する
  • 日本の受け入れ企業で働きながら育成し(原則3年)、その後は特定技能へ移行する
  • 不適切な機関の排除、情報の共有、問題があれば二国間で協議する

そして日本側の省庁に警察庁が入っていることに注目してください。技能実習時代の覚書(2018年1月29日署名)には、警察庁は入っていませんでした。悪質なブローカーの排除を前面に出した体制になっているということです。

制度の建て付けとしては、よく考えられています。「育成就労」という名前自体がよくできている。 日本語も技術もまだ無い人を、まず受け入れて育てましょう、という話ですから。インターンのようなものだと説明すれば、角が立ちません。

覚書は何を決めたのか ― 送り出しと受け入れのルール
覚書は何を決めたのか ― 送り出しと受け入れのルール
日本とバングラデシュ、「育成就労」の協力覚書に署名済み
日本とバングラデシュ、「育成就労」の協力覚書に署名済み

4か月半で6か国──タイ、ウズベキスタン、スリランカ、ラオス、東ティモール、バングラデシュ

ここが、私が今回いちばん驚いたところです。

厚生労働省と出入国在留管理庁が公開している育成就労の二国間協力覚書を、6か国分すべて開いて署名日を確認しました。

  • ① タイ──2026年5月20日 東京/6月2日 バンコク
  • ② ウズベキスタン──2026年5月20日 東京/6月29日 タシケント
  • ③ スリランカ──2026年5月20日 東京/7月23日 コロンボ
  • ④ ラオス──2026年8月5日 東京/8月31日 ビエンチャン
  • ⑤ 東ティモール──2026年7月21日 東京/10月13日 ディリ
  • ⑥ バングラデシュ──2026年9月16日 東京/10月17日 ダッカ

タイを皮切りに、4か月半ほどで6か国。 そのすべてが同じ4省庁(法務省・外務省・厚生労働省・警察庁)の署名です。

4か月半で6か国、育成就労の覚書に署名した
4か月半で6か国、育成就労の覚書に署名した

しかもこれは「新しく覚書を結んだ国」の数にすぎません。技能実習の時代から送出機関リストに載っている国は、ほかにいくらでもあります。 特定技能の二国間協力覚書だけでも十数か国にのぼります。それらの国も、順次この育成就労の枠組みに移行してくる。

来年4月の制度開始に向けて、日本政府は猛烈なスピードで受け入れの配管工事をしている。 これは、覚書の日付を並べれば誰にでも見える事実です。

※参照:厚生労働省「外国人育成就労制度について」 出入国在留管理庁「育成就労に関する二国間の協力覚書」

育成就労の協力覚書を結んだ国は6か国
育成就労の協力覚書を結んだ国は6か国

覚書に数値目標はない。では「年間10万人」はどこから来たのか

ここは丁寧に線を引きます。

今回のバングラデシュとの政府間覚書に、受け入れ人数の数値目標は書かれていません。 私が全文を確認しましたが、人数の記載はありません。日本政府は「10万人」を約束していない、というのは事実です。

では、なぜ「5年で10万人」「年間10万人」という数字が飛び交っているのか。

出どころは、民間の覚書です。

2025年5月29日、日本の民間団体とバングラデシュ側の政府機関との間で、今後5年間で10万人のバングラデシュ人労働者を受け入れるための協力覚書(MOU)が署名されています。 政府間の文書ではなく、民間レベルの文書です。

民間レベルで、国家の受け入れ人数を約束できるんですか。 しかもその数字が独り歩きして、バングラデシュ側はすでに「5年で10万人」を前提に動いている。紛らわしいにもほどがあります。

実際、バングラデシュ側は「年間10万人」と言い、日本側は「数値目標はない」と言う。 10月26日からのラーマン首相訪日で、この落差がどう処理されるのかが焦点です。日本経済新聞は、両首脳が今後5年間で1兆円規模の民間投資を確認し共同声明に明記する見通しだと報じています。

※参照:日本経済新聞 時事通信

タリク・ラーマン首相の訪日と「年間10万人」
タリク・ラーマン首相の訪日と「年間10万人」

ユヌス氏が日本に持ち込んだ「10万人プロジェクト」

この流れの出発点は、2025年にさかのぼります。

2025年5月30日、当時のバングラデシュ暫定政権首席顧問ムハマド・ユヌス氏が首相官邸を訪れ、石破茂首相(当時)と会談しました。

ユヌス氏が持ち込んだ構想が、「10万人プロジェクト」です。中身は明快です。日本の人手不足と、バングラデシュの若者の失業を、同時に解決する。

年間10万人という数字は、民間の覚書から出ている
年間10万人という数字は、民間の覚書から出ている

ここで一点、はっきりさせておきます。石破氏がこの会談で「10万人」という数字を約束した事実は確認できません。 大枠で人材受け入れの協力に合意した、というところまでです。数字はバングラデシュ側の目標です。

なお、ユヌス氏は2026年2月の総選挙を経て退任しました。2026年2月12日の総選挙でBNP(バングラデシュ民族主義党)が地滑り的勝利を収め、2月17日に党首タリク・ラーマン氏が首相に就任しています。ラーマン氏は17年間の英国亡命生活を経て2025年12月に帰国した人物で、故ジアウル・ラーマン元大統領とハレダ・ジア元首相の息子です。今回の訪日は、2月の就任後初めての来日になります。

ユヌス氏が日本に持ち込んだ「10万人プロジェクト」
ユヌス氏が日本に持ち込んだ「10万人プロジェクト」

お手本は、ユヌス氏が開いた自動車整備の学校

この構想には、すでに実物のモデルがあります。

ユヌス氏が開いたジャパン・オートメカニック・スクールという学校です。貧困家庭に生まれ、学力と人格に優れていながら高等教育に進めない若者を集め、日本語・自動車整備技術・日本の礼節を教える。卒業生を日本で就職させる。

その卒業生を積極的に採用してきたのが、ジーライオングループ創業者の田畑利彦氏です。

そして、この仕組みを国家規模に広げる担い手として名乗りを上げたのが、一般社団法人 Japan Action Tank(JAT)です。役員の顔ぶれがこうです。

  • 代表理事:平尾恒明氏(ジャパン・オートメカニック・スクール代表)
  • 理事:東信吾氏(ソーシャルビジネスバンク代表)
  • 理事:出雲充氏(ユーグレナ代表取締役社長)

ユヌス氏が提唱してきたのはソーシャル・ビジネス──利益の最大化ではなく社会問題の解決を目的とする事業、という考え方です。その文脈で、「若者に海外で働く機会をつくる」という形がとられている。

送り出し側から見れば、日本で働いた若者が本国に送金する外貨が国にとっての価値です。日本側から見れば労働力。バングラデシュ側から見れば外貨。 これがバーターの中身です。

お手本は、ユヌス氏が開いた自動車整備の学校
お手本は、ユヌス氏が開いた自動車整備の学校

介護人材を国立看護学校で育てる──すでに104名が学んでいる

そして、実際にもう動き始めています。

2025年12月から、バングラデシュの国立看護学校2校で介護人材の育成が始まっています。現在104名が学んでいます。

1年の育成で、介護人材が日本へ送り出される
1年の育成で、介護人材が日本へ送り出される

カリキュラムは1年間です。

  • 前半6か月──日本語能力試験N4と、特定技能(介護)試験の合格を目指す
  • 合格後──日本の介護事業者と面接し、就職先を決める
  • 後半6か月──日本語能力試験N3を目指す
  • 1年後──来日し、特定技能人材として5年間働く

日本側の需要はどうか。厚生労働省の推計では、介護職員の必要数は2026年度に約240万人で約25万人の不足、2040年度には約272万人で約57万人の不足とされています。一方、バングラデシュの若年層・大卒者の失業率は10%を超えています。

104名なら大したことはない、と思われるかもしれません。でもこの人たちは第一期生です。 この教育事業は一大ビジネスになります。現地に日本資本が入り、学校を作り、卒業生を送り出す。すでにベトナムには日本式の自動車教習所が作られ、卒業後に日本へ送り出すスキームが動いています。

若者に借金を背負わせない──費用は雇う側が負担する

これまでの海外就労では、若者が現地ブローカーに高額な手数料を払い、借金を背負って日本に来る構造が問題でした。失踪や不法就労の温床にもなってきた部分です。

JATが掲げているのは、現地での教育費などを雇用する側の企業が負担する仕組みです。若者は借金なしで働き始められる。

この部分だけを取り出せば、改善です。 技能実習制度が抱えてきた最悪の問題への対処にはなっている。私はここを否定しません。問題は、制度の善し悪しではなく、規模とスピードです。

※参照:PAVONE「日本とバングラデシュの架け橋『10万人プロジェクト』」 首相官邸「ユヌス・バングラデシュ暫定政権首席顧問との会談」

介護の人材を、バングラデシュの看護学校で1年かけて育てる
介護の人材を、バングラデシュの看護学校で1年かけて育てる
若者に借金を背負わせない ― 費用は雇う側の企業が負担
若者に借金を背負わせない ― 費用は雇う側の企業が負担

なぜ自民党は移民政策を止められないのか

在留外国人は、2026年6月末時点で428万1,026人。過去最多です。 2025年末から約15万5,000人増。総人口に占める割合は3.4%になりました。出入国在留管理庁が10月16日に公表した数字です。

半年で15万人です。このペースなら、500万人はすぐです。

ここで数字を訂正します。配信では「436万人」と申し上げましたが、正確には428万1,026人です。増加数の「半年で十数万人」は、約15万5,000人で、おおむね合っていました。

在留外国人は428万人、半年で15万5千人増えた
在留外国人は428万人、半年で15万5千人増えた

満州に遡るルーツ

このチャンネルで繰り返しお話ししてきたことですが、自民党という政党の起源をたどると、満州に行き着きます。

日清戦争のころから始まったアヘン政策。1933年、満州でアヘンの専売制が始まります。 その中心にいたのが岸信介であり、実務を動かしたのがその周辺の人脈でした。この満州人脈から、歴代の首相が生まれている。 二世三世の議員たちが首相になり、自民党から分派した日本維新の会もまた、この流れの中にあります。

そして日本財団。笹川良一が立ち上げた日本船舶振興会が日本財団になりました。名誉会長は笹川陽平氏。その傘下の東京財団の理事長を務めたのが竹中平蔵氏で、そこで研究員をしていたのが玉木雄一郎氏です。玉木氏はハーバードのジョセフ・ナイ氏から修了証を受け取っている。ダボス会議につながる系譜です。

自民党は満州にルーツを持ち、統一教会と共生関係にあり、CIAの資金が流れ込んで肥大化した政党です。だから、アメリカに逆らえない成り立ちになっている。

対米自立に動こうとした政治家は、排除されてきました。 田中角栄、大平正芳、小渕恵三、橋本龍太郎。ロッキード事件、リクルート事件。少しでも動こうとすると、スキャンダルが起こる。

NAGOMiと議員連盟──政権中枢に張り巡らされた回路

では、移民政策のほうはどうか。人脈の回路が、同じように政権中枢に張り巡らされています。

移民推進の団体と閣僚ポストが、同じ名字でつながる
移民推進の団体と閣僚ポストが、同じ名字でつながる

一般財団法人 外国人材共生支援全国協会(NAGOMi)。2020年10月、コロナ禍で行き場を失った外国人材の保護支援を掲げて設立された団体です。役員構成がこうです。

  • 会長:武部勤氏(元自民党幹事長・元農林水産大臣)
  • 最高顧問:二階俊博氏(元自民党幹事長)
  • 副会長:塩崎恭久氏(元厚生労働大臣)

ここで1点訂正します。配信では二階氏を「名誉会長」と申し上げましたが、正しくは最高顧問です。

そして武部勤氏の息子が、武部新氏。2026年10月15日、簗和生前大臣の辞任にともなって農林水産大臣に就任しました。初入閣です。配信では前任者を「矢野氏」と申し上げましたが、正しくは簗和生氏です。

塩崎恭久氏の息子が塩崎彰久氏で、自民党のグローバル人材共生推進議員連盟の総会にも名を連ねています。この議員連盟は、会長が平沢勝栄氏、幹事長が長島昭久氏です。

さらに、笹川博義氏。笹川良一氏の孫で、笹川陽平氏の甥にあたります。自民党外国人労働者等特別委員会の事務局長を長く務め、外国人政策の実務を仕切ってきた人物です。2026年9月17日の第2次高市改造内閣で、環境大臣として初入閣しました(原子力防災担当・クマ被害対策担当を兼務)。配信では10月の初入閣と申し上げましたが、正しくは9月17日です。

財団と、議員連盟と、閣僚ポストが、同じ名字でつながっている。 これは陰謀論ではなく、公開されている役員名簿と閣僚名簿を並べれば分かることです。

国連からの外圧と、JICAという回路

そして外側からの圧力です。

アフリカ・ホームタウン構想という話がありました。なぜアフリカから人を入れる必要があるのか、と多くの人が疑問を持った件です。あのタイミングで、国連のIOM(国際移住機関)事務局長が来日し、外務大臣と面会していました。 横浜で開かれたTICAD 9にも参加しています。「日本は移民を受け入れるポテンシャルが高い」という趣旨の発言が出ていました。

IOMという組織そのものについては別の記事で詳しく扱いました。移民と脱炭素が同じ形で国連から降りてくる構造も、こちらの記事にまとめてあります。

そしてJICA。理事長の田中明彦氏は、三極委員会(Trilateral Commission)アジア太平洋委員会の前議長であり、現在は名誉会長です。2020年に議長に就任した人物が、日本の国際協力の実行機関のトップに座っている。

外圧があり、それを受ける官庁があり、受け皿の団体があり、その団体の関係者が閣僚になる。 回路が閉じているんです。

人手不足なら、なぜ賃金を上げないのか

いちばん素朴な疑問に戻ります。

本当に人手不足なんですか。

分野によってはそうでしょう。しかし、その分野の賃金は上がっていません。 国が助成金を出して賃上げすれば、人は集まります。それをせずに、なぜ外国人で埋めようとするのか。

答えははっきりしています。経済界の要望だからです。 経団連、日本商工会議所。そこからの資金と票が自民党に流れる。断れるはずがない。 消費税の引き上げも、輸出企業からの強い要望が背景にありました。構図は同じです。

ヨーロッパでいま何が起きているか。フランスでは、移民の背景を持つ人々がデモに加わり、それをプロのオーガナイザーが暴動へと転がしている。 それを知りながら、日本は育成就労を見直す議論すら起こしていない。 見直すどころか、4か月半で6か国と署名しているんです。

※参照:出入国在留管理庁(在留外国人統計) NAGOMi(外国人材共生支援全国協会)

まとめ──決まってから知らされる国で、私たちは何を見ておくべきか

署名は終わっている、首脳会談はその後に来る
署名は終わっている、首脳会談はその後に来る

今回、私が一次資料にあたって確認したことを、もう一度並べます。

覚書の署名は、終わっています。 バングラデシュとは2026年9月16日に東京で、10月17日にダッカで。効力は5年、通告がなければ自動で5年延びて10年。10月26日の首脳会談で交換されるのは、署名済み文書の写しです。

6か国との署名も、終わっています。 タイ、ウズベキスタン、スリランカ、ラオス、東ティモール、バングラデシュ。4か月半です。

現地での育成も、始まっています。 バングラデシュの国立看護学校2校で104名。この人たちは確実に日本に来ます。

私が申し上げたいのは、「移民を入れるな」という話ではありません。 入れるにしても入れないにしても、国の形を変える決定は、国民が知って、議論して、選挙で意思を示してから行われるべきだ、ということです。

ところが今回、私たちは何一つ知らされていなかった。

9月16日に東京で署名された文書を、私たちは10月になって厚生労働省のサイトで見つけるしかなかった。報道は「首相が来日する、労働者受け入れが焦点だ」と書いた。焦点も何も、もう署名してあるんです。

これは手続きの問題ではありません。順番の問題です。

決めてから知らせる。知らせるときには、もう動かせない。その繰り返しで、気づいたときには元に戻せないところまで来ている。 これが、戦後の日本でずっと起きてきたことです。

だから、私はこうして一次資料を開けて、日付を1つずつ確認してお伝えしています。 覚書のPDFは誰でも開けます。署名日も、有効期間も、そこに書いてあります。見に行けば、分かるんです。

見に行く人が増えること。 それだけが、「決まってから知らされる」という順番を変える、たった1つの力だと私は思っています。

ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 日本政府は「バングラデシュから10万人受け入れる」と約束したのですか。

A. 政府間の協力覚書には、受け入れ人数の数値目標は書かれていません。 厚生労働省が公開している和文仮訳を通して確認しましたが、人数の記載はありません。「5年で10万人」という数字の出どころは、2025年5月29日に日本の民間団体とバングラデシュ側の政府機関との間で署名された民間レベルの覚書です。政府の約束と民間の目標が混同されて報じられている状態です。

Q2. 育成就労は技能実習とどう違うのですか。

A. 育成就労は2027年4月1日に始まる新制度で、技能実習に代わるものです。原則3年の育成期間を経て特定技能へ移行することを想定しています。技能実習が「国際貢献・技能移転」を建前にしていたのに対し、育成就労は人材の育成と確保を目的として明記しました。二国間協力覚書の日本側署名省庁に警察庁が加わったことも違いで、悪質な仲介業者の排除を前面に出しています。

Q3. 特定技能2号まで行くと、どうなるのですか。

A. 特定技能2号は在留期間の更新に上限がなく、家族の帯同が認められます。 一定以上の所得があり、10年以上の在留実績があれば、帰化の要件を満たす人も出てきます。政府は「移民政策ではない」という立場ですが、制度の設計上、長期定住と帰化への道は開かれています。 2026年6月末時点の特定技能在留者は44万4,256人、うち2号は1万8,295人です。特定技能2号の永住化への道筋については、この記事で詳しく書いています。

Q4. フランスのデモが「組織されていた」という話は、どこまで確認されていますか。

A. 確認できているのは、参加団体の顔ぶれと、資金の流れの一部です。 Fox Newsが特定した50団体のうち35が学生以外の成人団体であること、フランス共産党の全国書記がデモに参加したこと、ピープルズ・フォーラムがシンガム氏の資金で設立され、寄付者助言基金を経由して多額の資金を得てきたこと。ここまでは公開資料で裏が取れます。一方で、「誰かが暴動を指示した」という指揮命令の証拠は、公開されていません。 団体同士のつながりと、暴動の指示は別の話です。ここは分けて見るべきところです。

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この記事を書いた人

反DS歴史研究者、調査ジャーナリスト。YouTube『あつまれニュースの森』(登録者10万人)にて反グローバリズムの視点で世界情勢・国内政治を解説。

本業だったコンサルタントから徐々に歴史研究にシフトしていく。日々リサーチする中、メディアや歴史が嘘だらけであり、この世界が一部の権力機構によって支配されてきたことに強烈な違和感と憤りを覚えるようになる。

グローバリズムの根源と実態を徹底的に研究。その歴史を旧約聖書まで遡り、現在のいわゆるディープステートのルーツがユダヤ系とアングロサクソン系の2系統にあることを突き止める。

2021年、YouTubeを開始し、グローバリストのルーツを徹底解剖するオンラインサービス『金子ゼミ』を立ち上げる。

グローバリストにより”修正”された歴史を”修復”する「歴史復元主義」を根本理念とする。

情報発信者としての信条は「左も右もない反グローバリズム・国益第一主義」「不偏不党」。

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