こんにちは。金子吉友です。
アメリカ・オハイオ州にある、人口数千人の小さな町の話から始めます。そして最後は、千葉県印西市でいま実際に起きていることに着地します。
先日この番組で、AIが返してくる答えそのものに、あらかじめ物語が仕込まれているという話をしました。今日はその一段下の階層です。
そのAIを動かしている巨大な建物、データセンター。あれを、誰が、誰の金で建てているのか。
材料は、ピューリッツァー賞受賞ジャーナリストのクリス・ヘッジズ氏の番組「ザ・クリス・ヘッジズ・レポート」、2026年8月6日公開の回です。ゲストは調査ジャーナリストのホイットニー・ウェッブ氏。エプスタイン事件を扱った『ワン・ネーション・アンダー・ブラックメール』の著者です。
今日は、彼女の言葉をできるだけそのままお伝えします。
そして先に申し上げておきます。この話の結論は、「数千億円を差し出して、雇用は20人から30人」という、計算の合わない構図です。 計算が合わないのに実行されるとき、そこには必ず別の目的があります。今日は、その「別の目的」の話です。
エプスタインが「経営していた」町

オハイオ州ニューアルバニー。 もともとは農村でしたが、今ではアメリカ有数のデータセンター密集地です。
町を作り替えた富豪と、包括委任状
この町を作り替えたのが、レス・ウェクスナー。ヴィクトリアズ・シークレットなどを擁したアパレル大手リミテッドの創業者で、オハイオ州随一の大富豪です。彼は1986年に「ニューアルバニー・カンパニー」を設立しました。
そしてこの人物は、このチャンネルで繰り返し取り上げてきた「メガグループ」の代表格であり、ジェフリー・エプスタインの第一のスポンサーだった人物です。
ここを押さえておいてください。 今日の話は「エプスタインの知り合いがデータセンターを建てている」という話ではありません。エプスタインを世に送り出した資金の出どころそのものが、いまアメリカ有数のデータセンター密集地を作っている──そういう話です。
そして、ここからです。
- 1991年、ウェクスナーはジェフリー・エプスタインに包括委任状(パワー・オブ・アトーニー)を与えています
- 数千億円規模の資産、信託、不動産。そのすべてをエプスタインが自由に動かせる権限です
- 自分の子供の信託の受託者にも、エプスタインを指名しました
- エプスタインは1990年代初頭に関連会社の社長に就任
- 1998年の登記書類には、ウェクスナーと並ぶ「共同社長」としてはっきり記載されています
そして、エプスタインの愛人であったギレーヌ・マクスウェルです。
彼女は現在、実刑判決を受けて服役中です。その彼女が、最近になって司法省からの聴取を受け、さまざまな証言をしています。
そのマクスウェルが司法省に語ったところによれば、ジェフリー・エプスタインは事実上、この町ニューアルバニーを「経営していた」とされます。
つまり、この町は二人の経営者によって、思うように動かされていたということになります。
ここは「事実」です
一つはっきりさせておきます。
いま申し上げた役職と権限は、登記書類という書面で確認できる事実です。憶測ではありません。
エプスタインというと、どうしても事件そのものの猟奇性に目が行きます。ですが今日見ていただきたいのは、そこではありません。 前回の記事でお伝えした伊藤穰一氏の件もそうでしたが、エプスタインという人物は、常に「カネと権限が集まる結節点」に置かれていた──その一点です。
そして、今日の本題はこの先にあります。
※参照:The Chris Hedges Report(2026年8月6日公開)
州を買った民間企業と、20〜30人の雇用

町の次は、州です。
経済開発局を、まるごと民営化する
2011年、オハイオ州は「ジョブズ・オハイオ」という組織を作りました。 州の経済開発局を、まるごと民営化した組織です。
当時の知事は、ウェクスナーから多額の支援を受けてきたジョン・ケーシック氏でした。
この組織が何をしたか。
州の酒税を徴収する権利を、14億ドル、約2,100億円で購入したのです。
しかも当初2039年までだった権利が、その後無償で2053年まで延長されています。
ウェッブ氏はこう言います。
「彼らは民間企業であるため、酒税から得た資金をどう使ったかを開示する義務がない。ですから実質的に、ダークマネー組織と呼ばれています」
州の税金を集める権利を持ちながら、使い道は明かさなくていい。 その金で、データセンター企業に優遇を配る。
「優遇がなければ企業は逃げる」は本当か
言い分は「優遇がなければ企業は他州へ行く」です。 ところがウェッブ氏はこう述べます。
「研究によれば、優遇措置が企業の判断に影響したのは、せいぜい25パーセント程度のケースにすぎません」
4件のうち3件は、優遇がなくても来ていたということになります。
結果、何が起きたか。
- オハイオ州のデータセンターは193基で全米4位、うち121基がコロンバス周辺に集中
- 2025年1月の報告書では、アマゾン、グーグル、マイクロソフトの投資だけで、州と地方の税収喪失は最大16億ドル、約2,400億円に上る可能性が指摘された
- インテルには約20億ドル、およそ3,000億円の優遇と30年間の税優遇
そして、雇用は20人から30人
その見返りの雇用は、どれだけか。 ウェッブ氏の言葉です。
「データセンターが完成すると、その大半は20人から30人程度しか雇用しない。1施設あたり、です」
「20人から30人の雇用のために、それは本当に見合うのでしょうか。納税者の損失が数百万ドル単位に上るというのに」
なお、オハイオの官民癒着には前科があります。 2020年、電力会社ファーストエナジーから6,000万ドル、約90億円が流れた贈収賄事件で、州下院議長が有罪になっています。 判決の出た事実です。
数千億円を差し出して、20人から30人。
計算が合わないのに実行されるとき、そこには必ず別の目的があります。
ビッグテックと国家は「融合」した

ここからが、ウェッブ氏の分析の本番です。
「融合」という言葉
彼女はまず、データセンターを推し進める勢力についてこう述べます。
「データセンター建設を推進しているネットワークは極めて巨大で、影響力が強い。当然その先頭に立っているのはビッグテック企業ですが、これらの企業は現時点で、事実上すべての面において国家安全保障国家と融合しています」
融合、という言葉です。連携でも、協力でもありません。
証拠は、2018年の委員会の顔ぶれ
証拠として挙げるのが、2018年の「AIに関する国家安全保障委員会」。議長はグーグル元CEOのエリック・シュミット氏でした。
「この委員会の顔ぶれは、データセンター建設を推進している当のビッグテック企業の主要幹部か、以前に軍で働いていた人物か、そのどちらかで占められていた。彼らが、アメリカのAIロードマップと、いわゆる『国家安全保障』のために何が必要かを定めたわけです」
つまり、AI政策を決める会議に、AIで儲ける当事者と軍の関係者しかいなかった。
さらに彼女は続けます。
「情報機関、そして軍、その他の連邦政府の主要部門が、まさに同じビッグテック企業と大規模に契約を結んでおり、実質的に大きく依存していると言ってよい状態です。それと同時に、こうしたビッグテックのオリガルヒの多くが、政治家への大口献金者でもある」
オリガルヒ、つまり寡頭支配層のことです。
分かりやすい光景として、彼女はトランプ大統領の就任式を挙げます。
「彼の背後には、ジェフ・ベゾスをはじめとするビッグテックのCEOたちが並んでいた。彼が二期目に当選するうえで彼らが果たした役割を物語る光景です。そしてトランプは、その庇護に対して気前よく報いてきました」
ここに「両建て」が見える
ここに、私がいつも申し上げる「両建て」が見えます。
発注する側と受注する側、規制する側と規制される側が、同じ人脈の中で回っている。
これでは、誰も止められません。
止めるべき立場の人間が、止めたら自分の資金源が消える立場にいるのですから。
ここが今日の核心──「国家を丸ごと民営化する」

さて、ここが今日の核心です。じっくりやります。
村で試し、都市圏で広げ、州で完成させる
まず、ウェクスナーがやったことの本質を、ウェッブ氏はこう総括します。
「ウェクスナーがオハイオ州で行ってきたのは、地方政府と州政府の主要部分を民営化してきた、ということです。まずニューアルバニーで、次にそれを超えてコロンバス圏へ、そして本当に州全体へと拡大していった」
一つの村で試し、都市圏で広げ、州全体で完成させる。段階的な拡大です。
そこにピーター・ティールが交差する
そして、ここでピーター・ティールが登場します。 パランティアという、軍事産業を支えるAI企業の共同創業者です。CIAとも取引のある監視技術企業であり、もともとCIAが出資してできた会社です。この番組で何度も取り上げてきた人物ですね。
ウェッブ氏は、二人が交差する点をこう説明します。
「それがピーター・ティールのような人物と交差する点はどこか。それはティールが、カーティス・ヤービンやネオリアクショナリー運動の著作に公言してきた関心です」
カーティス・ヤービン。この名前は、ぜひ覚えて帰ってください。
プログラマー出身の政治思想家です。ペンネームを「メンシウス・モールドバッグ」といい、彼の思想は「暗黒啓蒙」とも呼ばれています。ネオリアクショナリー、日本語で言えば新反動主義です。
このチャンネルでも何度か登場している人物で、私はピーター・ティールの思想上のメンターだと見ています。
ここで、一つ留保をつけます
ヤービン本人の側は、ティールとの接点について「そこまでない」として、関係性を否定しています。
ここは、はっきり書いておかなければなりません。
私が申し上げているのは、「ティールがヤービンの本などから非常に強く影響を受けている」ということであって、「二人が結託している」という話ではありません。 ウェッブ氏の表現も、あくまで「ティールが公言してきた関心」です。
思想的な影響と、組織的な結託は、別のものです。 そこを混ぜてしまうと、途端に話が雑になります。
彼らが公然と主張していること
彼らが何を主張しているか。ウェッブ氏の言葉です。
「彼らが主張するのは、現在の政府が抱える問題への答えは、国家を丸ごと民営化し、その頂点に、実質的に独裁者として振る舞うCEOを据えることだ、というものです」
もう一度、繰り返します。
国家を、丸ごと、民営化する。そして頂点に、独裁者として振る舞うCEOを置く。
これは私の解釈ではありません。彼らが公然と主張していることです。民主主義は失敗した統治形態だ、国は株式会社のように経営されるべきだ、と。
彼らの「これはより民主的だ」という論理
そして、ここが不気味なところなのですが、彼らはこれを「独裁」だとは考えていません。
「CEOであれば、取締役会によって解任できる。だから、これはむしろより民主的なのだ」──そういう解釈をしているのです。
選挙で選ばれない人間が国家を統治する。それを「株主が交代させられるから民主的だ」と言い換える。
言葉の使い方が、根本からずれています。 ですが彼らは本気です。国を、企業のように経営する。それが彼らの主張なのです。
なお、日本語で読める本が一冊あります。 日本人の学者がヤービンの自宅を訪ねてインタビューし、分かりやすく日本語にまとめたものです。非常に読みやすい本ですが、その分、表現がやや丸みを帯びています。 実際の彼は、もっとストレートに「国家を民営化する」「CEOを設置する」と言っています。
そして、その思想に、世界最大級の監視インフラ企業を経営する人物が、はっきりと関心を示している。
「この二人の人物はどちらも、アメリカ政府の主要部分――あるいはそのすべて――を民営化することに、はっきりと関心を持っている」
では、どうやって実現するのか
ここが実務の話です。
「それを実務的に達成する方法は、官民パートナーシップの権限を拡大し成長させることでした。この官民パートナーシップにおいては、ほとんど常に、公的部門が民間のパートナーに従属する立場に置かれます」
「それは民間側のパートナーを富ませるために利用され、本来であれば民間の権力に対する番犬として機能するはずの公的部門は、結局そのようには機能しない」
官民連携。日本でも、実に耳に心地よく響く言葉です。 PPPとも呼ばれます。効率化、民間の活力、官民一体。どれも前向きな響きがあります。
ですがウェッブ氏が言っているのは、その仕組みの中では、公が私に従属するのが常だということです。
番犬が、飼い主から給料をもらっている。それでは吠えられません。
そして、いまホワイトハウスに届いている
この動きが今どこまで来ているか。
「ティールのようなオリガルヒと、彼に近い人々が政治権力の中枢に上りつめたことによって――もちろん最も分かりやすい例は現副大統領のJ.D.ヴァンスですが――この動きをさらに前へ進めようとしている」
「ここ数十年にわたって支配的だった官民パートナーシップのモデルを超えて、より極端な民営化へと移行するということです。それは彼らの利害に最も適う形で、段階的に進むかもしれないし、あるいは突然実行されるかもしれません」
ヴァンス副大統領の経歴を、線でつないでみてください。
- ティール系の投資会社ミスリル・キャピタル出身
- 次に、ジョブズ・オハイオを立ち上げた投資家マーク・クヴァミ氏と、ナーヤ・キャピタルという投資会社を共同創業
- そしてオハイオ州の政策機関の理事を務め、ウェクスナーからの献金も受け
- いま、アメリカの副大統領です
ヴァンス氏は、もともとティール氏の投資ファンドで働いていた人物です。 つまり上司と部下の関係であり、私は師弟関係にあると見ています。
そして、ウェクスナー氏からの献金。 ここには正直、驚きました。エプスタインの第一のスポンサーであるウェクスナーを介して、現職のアメリカ副大統領がエプスタインと線でつながるということですから。
一つの村から始まった手法が、州を飲み込み、いまホワイトハウスに届いている。私はそう見ています。
そして、視線の先にあるもの
ここで、もう一歩踏み込んでおきます。
ヴァンス氏は、いまはまだ副大統領です。 トランプ大統領の意向を聞き、それに従う立場にあります。
ですが、次の大統領選には、ヴァンス氏が出てきます。
ティール氏は、ヴァンス氏が大統領になることを見据えている。私はそう見ています。
そしてヴァンス氏が大統領になったとき、ティール氏の意向のもとで、この「国家の民営化」というスキームが着実に進んでいく可能性があります。
ウェッブ氏の言う「段階的に進むかもしれないし、突然実行されるかもしれない」という一文は、そこまで含んだ言葉だと私は受け取りました。
もう一つの動機──人類とAIの融合という「疑似宗教」

さて、ここでもう一つ、背筋が寒くなる話をします。
なぜ、そこまでしてデータセンターなのか。 ウェッブ氏の答えは、経済だけではありませんでした。
AGIへの、宗教的な熱情
「彼らの多くは特定のイデオロギーを信奉していて、AIとAIの計算能力への極端な投資こそが、彼らの言う『汎用人工知能』あるいは『AI超知能』の開発を前進させるために必要だと考えている」
汎用人工知能、英語ではAGIといいます。 人間並み、あるいはそれ以上の知能を持つAIのことです。
そして彼女はこう続けます。
「そして彼らの一部は、それが実現することに対して、ほとんど宗教的と言ってよい熱情を抱いています」
さらに、決定的な一節です。
「さらに彼らは公然たるトランスヒューマニストであり、人類の最終的な目標は、何らかの形で人類がAIと融合することだと考えている」
トランスヒューマニズムというのは、技術によって人間の肉体や知性の限界を超えていこう、という思想です。
そして彼女は、こう結論づけます。
「つまり彼らには、経済的な動機だけでなく、私が『疑似宗教的』と呼ぶような動機もあるわけです。この動機は、経済的な採算が必ずしも合わない場合でさえ、この動きを推し進める力になり得ます」
採算が合わなくても、進む
聞いてください。ここが一番大事なところです。
採算が合わなくても、進む。
普通、企業というのは儲からなければ止まります。 株主が止めます。銀行が止めます。
ところが、「人類をAIと融合させる」という信念が動機であるなら、赤字でも進むのです。
これは、私たちがよく知っている企業行動ではありません。信仰の行動です。
だから、20人から30人の雇用のために数千億円が動く。だから、地元住民が電気代と水を心配しても、話が通じない。
ウェッブ氏はこう言っています。
「これは私たちが『人間よりも計算能力が重んじられる時代』に生きていることの証だと思います」
「彼らによって不利益を被る人々がいても、その人たちの懸念は、どうやら重要視されない」
反対の声は、どう処理されるか
ここも重要です。
「あらゆる反対運動を、たとえば『中国が背後で煽っているものだ』として描き出そうとする、協調的な動きがあります」
反対する住民を、外国に操られていることにしてしまう。
どこかで聞いた話ではないでしょうか。日本でも、見覚えのある手口です。
ちなみに、ティールとつながりのあるメディア「パイレート・ワイヤーズ」などが、水の消費量への批判に反論しています。ですがウェッブ氏はこう指摘します。
「カリフォルニアのような州では、ほとんどのデータセンターに水使用量の報告義務がありません。だとすれば、そもそも私たちが手にしているデータは、どれほど正確なのでしょうか」
報告義務のない数字で「大丈夫だ」と言われても、確かめようがありません。
世界へ──そして「従業員のいない会社」

この動きは、アメリカ国内にとどまりません。
表に出てこない実働部隊
ウェッブ氏が名前を挙げるのが「クルーソーAI」という会社です。
「オープンAIとラリー・エリソンのオラクルのために、『スターゲイト』計画を建設しています」
「ビッグテック企業と、実際のインフラ構築との間の、いわば仲介役として機能しています」
表舞台にはほとんど出てこない実働部隊です。
南米の大統領を、次々と訪ねる
そして、ここからです。
「クルーソーAIの創業者の一人、カリー・カヴネス氏は、ピーター・ティールのアルゼンチン訪問に同行し、ハビエル・ミレイ大統領と会談しています。その後、チリの政治家とも会っており、公表はされていませんがチリ大統領も含まれていたようです。さらにパラグアイ大統領とも会談しています」
その直後に、何が起きたか。
「人間の従業員が一人もいない、AIによって運営される企業の国内での操業を認めるという提案。そして、『スターゲイト・アルゼンチン』の発表です」
人間の従業員がゼロの会社を、法律で認めさせる。
先ほどの話を思い出してください。国家を民営化し、CEOが統治する。
その思想が実際に法律の形を取り始めた瞬間が、これではないでしょうか。私はそう読みます。
なぜ、アルゼンチンだったのか
ここで、一つ補足しておきたいことがあります。
なぜティール氏は、南米の中でもアルゼンチンに向かったのか。
ハビエル・ミレイ大統領は、シオニスト大統領です。完全な親イスラエルです。
大統領職を辞めたらユダヤ教に改宗するとまで言っている人物であり、トランプ大統領とも非常に仲がいい。シオニズムでつながっているのです。
つまり、極めて動きやすい相手だった。 そして実際、ミレイ大統領の側も協力的でした。
新しい制度を実験的に導入させるとき、彼らは「話が通じる国」を選びます。 思想の実装先として、まずどこが選ばれるのか。ここを見ておくと、次にどこへ来るかも見えてきます。
そしてウェッブ氏は、こう締めくくります。
「つまり、この人たちは文字通り世界中にデータセンターを建設しようとしているわけです」
世界中、です。しかも、無人の、です。
AIによって運営される無人の企業が、これからどんどん増えていくのではないか。私はそう見ています。
当然、日本も入っています。
では、日本はどうか──千葉県印西市で起きていること

さて、日本です。ここを具体的にやって終わります。
まず、規模感を掴んでください
- 世界のデータセンターの消費電力は、2026年に1,000テラワット時に達すると見込まれている。日本経済新聞が報じたところによれば、これは日本の年間総消費電力に匹敵する量です
- 日本国内のデータセンターによる最大電力需要は、2025年度の47万キロワットから、2034年度には616万キロワットへ。約13倍になる見通し
- すでに電力系統への接続には5年から10年待ちという状態が生まれている
- ソフトバンクは北海道苫小牧市に、国内最大級となる300メガワット規模のデータセンターを建設中で、2026年度に第1期が稼働予定
金額も見ておきましょう。
- マイクロソフト、グーグル、メタ、アマゾンのアメリカ4大テック企業は、2026年の設備投資を合計7,250億ドル、日本円でおよそ116兆円、前年比76パーセント増に引き上げた
- グーグルは2024年からの10年間で、80億ドル、約1兆2,000億円以上を日本に投資するとしている
「データセンター銀座」印西市
では、その建設現場で何が起きているか。千葉県印西市です。
印西市は「データセンター銀座」と呼ばれる、日本有数の集積地です。NTTデータ、アマゾン、グーグルが施設を稼働させています。
そして注目していただきたいのが、この数字です。
印西市の固定資産税収の51パーセントを、データセンターが稼ぎ出しています。
建設中と計画中を合わせると28基、電力需要は合計1,190メガワットにのぼります。
市長も市議会も反対した。それでも止まらなかった
ところが、です。この町でいま何が起きているか。
2025年春、千葉ニュータウン中央駅前の一等地に、高さ52.7メートル・6階建てのデータセンター建設計画が浮上しました。 100人以上の住民が反発します。
- 市議会は「駅周辺地域へのデータセンター建設は不適切だ」とする決議を、全会一致で可決。東京新聞が報じたところによれば、自民党と共産党が一緒に反対したのです
- 市は地区計画の見直しに動いた(日本経済新聞)
- 藤代健吾市長もX上で明確に異論を唱えました。「市全体のまちづくりにとって極めて重要な場所。地域の状況にふさわしい施設が整備されるべきであり、それはデータセンターではないと考えています」
- 近隣住民は建築確認の取り消しを求めて提訴。住民側は「これは地区計画で禁じられている工場または倉庫にあたる」と主張しています
- さらに読売新聞によれば、データセンター向けの電力需要に応えるため変電所の新設計画が浮上し、住民が反対しています。その言葉が印象的です。「私企業のデータセンター向けの施設であって、公益とは言えない」
ここまでは、住民と市が一体で抵抗した、という話です。
ですが、その後どうなったか。ここが今回いちばんお伝えしたい部分です。
反対していた市長が、容認に転じました。
東京新聞の報道によれば、市が事業者と建設準備のための協議書を締結していたことが明らかになり、事態が一転します。 市長は12月21日の住民集会で、こう述べました。
「行政には中立性が求められる。異例とも言えるような審査の時間をかけてきたが、これ以上遅らせることには理由がない。白紙撤回させることはやはり難しい」
住民は「官民一体」で反対運動を展開していました。だからこそ、方針転換に怒りが爆発したと報じられています。
そして事業者は、建築確認申請が認められれば工事を開始できる状態です。
市長が反対した。市議会が全会一致で反対した。住民が提訴した。
それでも、止まらないのです。
想定されるリスクを、具体的に挙げます
一つ目、電気代です。
フォーチュン誌が2026年7月14日に報じたところによれば、アメリカではデータセンターがすでに一般市民の電気代を230億ドル、約3兆5,000億円押し上げました。S&Pグローバルの調査では、データセンター向けの送電量は昨年22パーセント増、2030年までに全米の消費電力の最大17パーセントを占める可能性があります。日本でも需要は13倍になる見通しです。送電網を増強する費用は、託送料金という形で、全世帯の電気代に乗ります。あなたの請求書に届くのです。
二つ目、水です。
冷却のために大量の水を使います。アメリカでは、報告義務すらない州がある。では日本に、その制度はあるのでしょうか。私は寡聞にして知りません。
そして、ここが重要です。
日本は水源が豊富です。だからこそ、狙われる理由があるのです。
東北、そして北海道。 これからどんどん、データセンター企業によって土地が買収され、そこに次々とデータセンターが立ち並んでいくでしょう。
すでにメガソーラーが大きな問題になっていますが、これからはそれを上回る勢いで、データセンター問題が広がってくると私は見ています。
三つ目、税収の罠です。
印西市は固定資産税収の51パーセントをデータセンターに依存しています。税収の半分を一つの産業に握られた自治体が、その産業に「ノー」と言えるでしょうか。依存とは、そういうことです。市長の方針転換は、まさにこの構造が働いた結果ではないかと私は見ています。
四つ目、雇用の実像です。
恒久雇用は1施設あたり20人から30人。一方で、総務省はデータセンターの地方分散に補助率2分の1で支援し、経済産業省も北海道と九州で半額補助を行ってきました。誰の税金が、誰の資産になるのか。
五つ目、決定の主体です。
市長も市議会も反対して、なお建つ。では、いったい誰が決めているのでしょうか。
メガソーラーとの決定的な違い
ここで、どうしてもお伝えしておきたいことがあります。
メガソーラー問題は、いま全国で大きく批判されています。 なぜ批判できるのか。 ソーラーパネルを作っているのが、だいたい中国だからです。だから、批判しやすいのです。
ところが、データセンターはどうでしょうか。
メディアがこぞって、彼らの傘下に入ってしまっています。
先ほどご紹介した通り、ビッグテックと国家は「融合」しています。 そして日本でも、大手メディアはこれらの企業の広告主であり、提携先であり、取引先です。
ですから私は、こう見ています。
データセンター問題は、メガソーラーのようには問題化していかないのではないか。千葉県印西市のような市民運動が起こったとしても、あまり取り上げられないのではないか。
批判の的にしやすい相手には声が集まり、批判しにくい相手には集まらない。
そして、より深刻な影響を及ぼすのは、批判しにくい側だったりするのです。
そして六つ目、これが一番大きい。主権の問題です。
日本のAI基盤の中核となる「スターゲイト計画」。4年間で5,000億ドル、約75兆円を投じる巨大構想です。その議長を務めているのは、孫正義氏です。
ですが出資者を見てください。 オープンAI、オラクル、そしてアブダビのMGX。そしてテキサスの拠点は、クルーソーAIからのリースです。
ウェッブ氏が今日名指しした、あの会社です。
日本が主導しているように見えて、実際にはどこに組み込まれているのか。ここを、冷静に見ておく必要があります。
まとめ──形は違う。しかし結果は同じ
オハイオでは、あからさまでした。
エプスタインが名を連ねた会社が村を作り替え、民営化された組織が州の酒税を握り、使途を明かさないまま優遇を配った。分かりやすい構図です。
日本はどうでしょうか。
印西市では、市長も市議会も、住民も反対している。それでも建つ。形はまったく違います。
しかし、結果は同じです。住民の意思が、どこにも届かない。
そして、ここに今日いちばんの怖さがあります。
オハイオのように「悪い誰か」がいて捻じ曲げているなら、その誰かを止めれば済みます。 ですが印西市には、賄賂を受け取った議長も、酒税を買った企業もいません。手続きは、おそらくどれも適法です。
それでも、誰の意思とも違う結論に着地する。
これが「官民パートナーシップ」の中身です。番犬が吠えないのではなく、吠える理由を失っていく仕組みなのです。
そして、なぜここまでするのか。
採算が合わないのに進むのは、そこに信仰があるからでした。 人類をAIと融合させるという、疑似宗教的な動機。 その信念の前では、20人から30人という雇用の数字も、住民の電気代も、議論の対象にすらならない。
「AI立国」「地方創生」「デジタル田園都市」。言葉は、いつも美しい。
ですが、問うべきことは一つです。
誰が電気代を払い、誰が税優遇を受けるのか。
そして私たち日本は、どこに立つのか。
真の独立とは、真の主権とは、何か。 自分たちの町に何が建つかを、自分たちで決められることではないでしょうか。 市長が反対し、市議会が全会一致で反対し、住民が訴訟まで起こして、それでも建つ。その状態を「主権がある」と呼べるのかどうか。
表層ではなく、構造を見てください。そして、誰が得をするのかで見てください。
ここまでお読みくださりありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. データセンターは地域経済に貢献しないのですか?
税収という面では、確実に貢献します。 印西市が固定資産税収の51パーセントをデータセンターから得ているのが、その証拠です。問題にしているのは「雇用」と「差し出したものとの釣り合い」です。 ウェッブ氏によれば、恒久雇用は1施設あたり20人から30人程度。一方でオハイオ州では、アマゾン・グーグル・マイクロソフトの投資だけで最大16億ドル(約2,400億円)の税収喪失が指摘されています。貢献がゼロなのではなく、差し出す額と戻ってくる雇用が釣り合っているのか、という問いです。
Q2. 「国家を丸ごと民営化する」というのは、本当に主張されているのですか?
はい。これは陰謀論ではなく、公然と主張されている思想です。 カーティス・ヤービン(ペンネーム「メンシウス・モールドバッグ」)を中心とするネオリアクショナリー(新反動主義)の主張で、「民主主義は失敗した統治形態であり、国は株式会社のように経営されるべきだ」というものです。注意していただきたいのは、「ティールがそう主張している」とまでは言っていないという点です。ウェッブ氏が述べているのは「ティールがヤービンらの著作に公言してきた関心を示している」ということ。ここは分けてお考えください。
Q3. 印西市の件は、なぜ市長も市議会も反対したのに止まらないのですか?
東京新聞の報道によれば、市が事業者と建設準備のための協議書を締結していたことが判明し、市長が容認に転じました。 市長は「行政には中立性が求められる」「白紙撤回させることはやはり難しい」と述べています。手続き上は適法に進んでいると見られます。 私が問題にしているのは違法性ではなく、固定資産税収の51パーセントを一つの産業に依存した自治体が、その産業に「ノー」と言い続けられるのかという構造です。
Q4. 私たちにできることは何かありますか?
まず、自分の住む自治体で何が計画されているかを知ることです。 データセンターの立地計画は、地区計画の見直しや変電所の新設といった形で、地味な行政手続きとして進みます。印西市で住民が動けたのは、駅前の一等地という「見える場所」だったからです。 そして電気代の託送料金という形で全世帯に転嫁される以上、これは立地自治体だけの問題ではありません。「AI立国」という言葉が出てきたときに、誰が電気代を払い誰が税優遇を受けるのかを問う。それが第一歩だと考えています。
金子吉友 / あつまれニュースの森 / 2026年8月17日配信「エプスタインとピーター・ティールの国家民営化とAI暗黒構想がヤバすぎる!!」より

